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【受験生応援2018】しっかり学べる外国語 TLPで世界に通用する力を

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 3月10日(土)の東大の合格発表後、11日(日)から15日(木)の間に新入生は入学手続きを行います。その際に書類へ記入した第二外国語で、所属するクラスが決まります。第二外国語の選択が学生生活を大きく左右する要因になるといっても過言ではありません。東大新聞オンラインでは第二外国語決定に役立つ情報をお伝えします。今回は、選抜された少人数制の授業で高度な第二外国語の能力を身に付けることを目指すTLP(トライリンガル・プログラム)について紹介します。

 2013年度から始まり今年で5年目を迎えるTLP。高度な英語力に加え、もう一つの外国語の運用能力を集中的に鍛えていくために設けられた制度です。

 

 TLPを入学時から履修できる条件は東大の2次試験外国語科目の全ての設問で「英語」を選択し、なおかつその成績が上位10%程度であること。参加するには相応の狭き門をくぐり抜ける必要があります。当初は中国語のみでの開講でしたが、16年度からはドイツ語、フランス語、ロシア語でも開講されており、また18年度から韓国朝鮮語でも開講される予定です。長期休暇中に実施される各国への短期研修制度なども整備されつつあり、TLPはますます充実してきているといえるでしょう。

 

1年間履修して

 

 入試で英語の成績の基準を突破し、1年の前期に当たるSセメスターからTLPに参加したロシア語選択のAさん(文Ⅱ・1年=当時)は、通常は1年生の間に終わる第二外国語の必修授業が、2年生まで続くことを魅力の一つだと話してくれました。意識の上でプラスの面が大きかったというAさん。「TLPを受ける周りの優秀な人たちから刺激を受けていました。また、TLPではないクラスの人に負けたくないという気持ちから、勉強のモチベーションが生まれました」

 

 中国語TLPを受講しているBさんは、TLP受講生のみで構成されるクラスに所属し、1年の春学期は週5回、秋学期には週4回と多くの授業をこなしました。月に1~2回、昼食時に集まって中国語で会話する機会がある他、選考を通過しなければならないものの、1年の春休みと2年の夏休みに海外研修に行けることなどが魅力だとか。「中国語が少しずつ身に付いてきているのを実感できるのは楽しいですし、クラスの皆から向上心を分けてもらうこともできます」。他にも、先生が留学生との交流の機会を作ってくれるなど、その魅力は尽きないようです。

 

 ドイツ語TLP受講生のCさんは、15人程度の少人数できめ細かい指導を受けられるのがTLPの魅力だと語ります。「一方通行的な講義が多い東大で、自発的に授業に参加する姿勢を身につけられたのはTLPのおかげです」。ドイツ語TLPでは、長期休暇ごとに任意参加の、2週間にわたるボン大学での語学研修がある他、ドイツ語部会主催のクリスマスパーティに参加するなど、イベントも多いそう。TLPを受講すれば授業数や宿題は増えますが、その分確実に語学力が向上すると言います。

 

途中参加も可能

 

 参加者が限られているために一見閉鎖的に思われるTLPは、実は履修者が固定されているわけではありません。授業意欲や毎学期の期末試験の成績に応じて、メンバーの入れ替えが行われるのです。1年の後期に当たるAセメスターからTLPに途中参加したDさん(文Ⅰ・1年=当時)は「TLPに参加したいという意欲をSセメスターの勉強のモチベーションにしていました」。ロシア語選択のDさんは、非TLPとTLPのそれぞれの授業について「やることが大きく変わるわけではありません」と話してくれた一方、ロシア語TLPクラスは約15人という少人数のため、授業内外で先生とコミュニケーションを取りやすく「先生と個人的な関係を築けるのが大きいです」。

 

 第二外国語の勉強に意欲がある学生には、TLPは大きなプラスになるでしょう。第二外国語を真剣に勉強したいという場合にはぜひ履修することをお勧めします。仮に入試での英語の成績が芳しくなく、Sセメスターから参加できなかったとしても、Aセメスター以降からの編入を見越して勉強するのもいいでしょう。

 

 第二外国語は、数年来の勉強の蓄積で実力に差が出てしまう英語とは違い、スタート地点は誰もが同じ。入学後の頑張り次第で、どんどん自分の世界を広げて行けるでしょう。第二外国語の勉強を通じて見ることができる、大学での知の世界を楽しんでください。

 

※この記事は、2017年公開の東大新聞オンライン記事に、加筆・修正を施したものです。

 

 

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【受験生応援2018】しっかり学べる外国語 TLPで世界に通用する力を東大新聞オンラインで公開された投稿です。


【受験生応援2018】東大に実家から通えるのはどこまで?

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 東大に合格したらキャンパスの近くに下宿しようと考えている人は多い。その一方で1時間以上かけて通学することになる人も一定数いるだろう。今回は、東大に遠くから通っている、もしくは通っていた経験のある東大生に通学時間の使い方や長距離通学の利点・欠点を聞き、下宿する場合と比較しつつ東大に通える範囲がどこまでなのか掘り下げる。特に実家から通学するか下宿するか迷っている人はぜひこの記事を参考にしてほしい。

 

Aさん(工・3年)の場合 実家から長距離通学

自宅:神奈川県鎌倉市

大学までの所要時間:駒場まで約90分、本郷まで約100分

 

 実家通いよりお金がかかる上、炊事洗濯が面倒だったので下宿は選びませんでした。都会が好きでないという理由もあります。

 通学時間は、電車で座れた場合には本を読む、レポートを書くといったことができますが、座れない場合には音楽を聴くかスマホを見ることしかできません。時間帯によっては1時間電車の中でずっと立っていることになり、体力的につらいです。長距離通学で不便に思うのは、移動時間をなかなか有効活用できないことです。サークルの集まりなどに気軽に行こうと思えなくなるという短所もあります。

 正直自分も1人暮らしにすれば良かったと思うことはありますが、定期券の区間が長いためいろいろと寄り道ができたり、通学時間自体を気分転換の時間にできたりと、案外良い点もあります。実家からの通学か1人暮らしかで迷う人は、まず実家から通ってみて、自身のライフスタイルを踏まえて1人暮らしにするかどうか考えることにしても良いと思います。

 

Bさん(工学系・修士1年)の場合 3年次まで高尾の実家から通学

自宅:東京都八王子市(学部3年次まで)

大学までの所要時間:駒場まで約90分、本郷まで約100分

 

 学部3年まで高尾の実家から通っていました。4年に進級し研究室に配属されたのを機に下宿を始めました。最初から下宿を選ばなかったのは、やはり下宿するとより多くの費用がかかるからです。

 高尾駅は電車の始発駅なので行きの電車は座って本を読んでいました。もちろん必要な時期は勉強もしました。帰りは混んでいて座れないので音楽を聴いていたように思います。

 サークル活動などで帰宅が遅くなる日が多かったので、翌日に1限がある日はつらかったですね。3年の時に1限の開始が午前9時から午前8時半に変更され、毎日1限が入っていた時期は特に大変でした。この時は午前6時すぎに家を出ていたと思います。

 また、遠方から通うと電車の遅延の影響を受けやすいのも事実です。台風や大雪などの荒天の場合には、授業を行うかどうかを大学が判断しますが、その際、遠方から通っている学生がいることが考慮されていないように感じられ残念でした。

 

Cさん(理Ⅱ・1年)の場合 茨城から通学するも下宿へ切り替え

自宅:茨城県守谷市(1年Sセメスター終了まで)

大学までの所要時間:駒場まで約120分

 

 1年のSセメスター(前期)は茨城県の南部から駒場まで通っていました。電車内で過ごす時間が長かったため、混み合った車内で頑張って単語帳や参考書を開いていましたね。ところが、通学時間が長いことが苦痛になってしまった上、電車内での時間を有効に使おうにも混雑が激しくうまくいかなかったので、Aセメスター(後期)から駒場キャンパスの近くで下宿することにしました。

 長距離通学と下宿を両方とも経験してみて、それぞれ短所があると分かりました。長距離通学は何と言っても朝早く起きるのが大変です。1限に出席する時は6時半に出発していました。さらに、都内住みの人より終電が早いため2次会などに参加できず疎外感を覚えたこともあります。アルバイトも時間的な制約から、やってみたかったもののできませんでした。

 下宿の短所としては掃除や洗濯、皿洗いなどが面倒だという点があります。お風呂も浴槽にゆっくりつかりたいと思うことがありました。

 東京の通勤ラッシュは人によっては非常に苦痛です。都内での1人暮らしをお勧めしますが、実家からも通えなくはない人は3月中に急いで家を探すということをせず、入学後に1人暮らしを検討してみるのも良いと思います。

 

Dさん(工学系・修士1年)の場合 日野で下宿、後に都内へ引っ越し       

自宅:東京都日野市(学部4年次まで)

大学までの所要時間:駒場まで約65分、本郷まで約80分

 

 親戚が日野市で築50年のアパートを貸していて、家賃が実質無料で済むのでそこから通うことにしました。キャンパスの近くで下宿しなかったのは、都会に住むのが嫌いだからです。もちろん家賃が高いというのもありますね。ただ、自宅が遠いことで、友達を家に呼びにくい、交通費が高くなるといった不便もありました。

 通学時間は主にツイッター、インターネットニュース、株価の確認をしていました。以前は1限の開始が9時でしたが、そのときでも午前7時半には家を出ていたと思います。

 

Eさん(工・3年)の場合 実家から通えなくはないが一人暮らし

自宅:栃木県小山市

大学までの所要時間:駒場・本郷ともに約90分

 

 栃木県の実家から通えなくはないですが、1人暮らしが社会勉強になるはずだという親の勧めもあり、前期教養課程の頃は三鷹寮から通学していました。

 1人暮らしをすると、朝とても早く家を出る、あるいは帰りが深夜になるといったことがあっても誰からもとがめられないので、生活の自由度は高いと思います。

 不便なところは部屋が狭い点です。これは三鷹寮に限らず1人暮らし用の部屋一般に言えます。家事についても段取りが分かるまではかなり苦労しました。また、試験の時や風邪をひいたときなどは家事まで手が回りません。それから、隣人とのトラブルが多いことも短所です。

 1人暮らしは自由度が高くいろいろなことができます。その一方で大学に行かなくなった、留年したといった話も聞くので、誰も注意してくれないという点である程度の危険は伴います。リスク管理さえしっかりできればとても楽しいので、勇気を持って1人暮らしを選ぶのも良いと思います。

 このように東大まで1時間半〜2時間かけて通学する人がいる一方、キャンパスの近くに下宿する人もいる。長距離通学は時間的制約が大きい、電車の混雑・遅延の影響を受けやすいといった声が聞かれるが、下宿にも金銭的負担が大きい、家事を自分でしなければならないなどという短所がある。各自のライフスタイルに合わせて実家通い、下宿を選択できるのが理想的だろう。

 

 

【受験生応援2018】

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【受験生応援2018】東大に実家から通えるのはどこまで?東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【2018年2月アクセスランキング】入試関連記事に関心

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スローガン株式会社の伊藤さん(上)、クロスカントリーの選手(右下)、受験生応援連載のロゴ

 

 東大新聞オンラインで2月に公開した記事の2月中のアクセスランキングを調べたところ、1位は18年度東大推薦入試の結果を伝える記事だった(表)。18年度は、全学部・全学科合計で100人程度の募集に対し69人が合格。全体の合格者数は2年続けて減少したが、教養学部では初めて募集人員の目安である5人に達した。

 

 2位と3位は学生とベンチャー企業をつなぐスローガン社を創業した伊藤豊代表取締役社長に日本の就職活動について聞いた記事だ。伊藤さんは、優秀な人が大企業に入社後、やりたい仕事をできず志を失うことが多いと指摘。ベンチャー企業への就職をためらう学生に対しては、イメージを持つために小さい企業での長期インターンシップを勧める。就職活動を控えた学生から注目を集めたようだ。

 

 4位から6位には受験生応援の記事がランクイン。4位と6位は東大生が入試当日の過ごし方やハプニングなどを振り返るもの、5位は17年度ミス東大の松本有紗さん(農・3年)とミスター東大の小林亮太さん(文・3年)に受験生へのメッセージを聞いたものだった。9位にも東大生による理科の勉強法アドバイスを転載した記事が入り、入試直前期に多くの受験生に読まれたと考えられる。

 

 7位は18年度東大入試において全科類で第1段階選抜が行われたことを伝える記事だ。最高点は理Ⅰの900点で、満点は東大が第1段階選抜の結果発表を始めて以来初となる。

 

 8位は平昌五輪に合わせた、「雪上のマラソン」とも言われるクロスカントリーの魅力についての寄稿記事。10位は睡眠の専門医に試験前日に熟睡する方法などを聞いた記事だった。

 

【2018年2月アクセスランキング】

1   18年度東大推薦入試 合格者69人に微減 教養学部で初めて定員満たす

2   東大卒起業家から就活生へ 後編 「新卒はゴールデンチケット」の嘘

3   東大卒起業家から就活生へ 前編 「秀才のジレンマ」から抜け出す方法

4   【受験生応援2018】東大生が振り返る2次本番 〜文系編〜

5   【受験生応援2018】ミス&ミスター東大2017から受験生へ

6   【受験生応援2018】東大生が振り返る2次本番 〜理系編〜

7   18年度東大前期入試 全科類で第1段階選抜 文Ⅱの最低点80点上昇

8   最もタフなスキー競技 平昌五輪「クロスカントリー」の見どころ

9   【受験生応援2018】2次試験直前!現役東大生によるアドバイス 〜理科編〜

10   【受験生応援2018】睡眠専門医・坪田聡さん 入試直前の「睡眠」のアドバイス

※当該期間に公開した記事のみを集計

【2018年2月アクセスランキング】入試関連記事に関心東大新聞オンラインで公開された投稿です。

個人に合う適切な支援を 「卒論支援会社」に聞く卒論執筆の裏事情

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 多くの学生にとって、卒業論文の提出は大学生活で最大の目標・課題だ。学生はテーマを設定して資料・先行研究などを当たっていくが、全てがうまく進むとは限らない。「ららみーあ株式会社」を立ち上げ、代表取締役を務める山川洋明さん(農学部卒)は、卒論で困難に直面した学生の依頼を受け、読むべき文献の紹介など支援を行っている。山川さんに、卒論支援の詳細や卒論を上手く進めるこつを聞いた。

(取材・矢野祐佳)

 

教員頼れぬ学生に

 

 山川さんは卒論支援について「卒論を書くための個人指導塾のようなもの」と話す。初めに依頼者の学生から研究テーマ、読んだ文献、すでに書き進めている文章など状況を聞き、手助けできるかを判断する。手助け可能と判断した場合、読むべき先行研究や資料・史料の紹介・文章の手直しなどをするという。「『頑張ってもどうしてもうまくいかない』という学生さんが自力で卒論を進める支援をしています。逆に『お金は払うから一から十までなんとかして』という依頼はお断りしています」

 

 主な相談内容は「途中で行き詰まった」「教員の指導が自分に合わない」「提出期限まで時間がない」などだ。「有名で世間への発言力をすでに持つ人が社会人大学院に通っていたときに、教員が嫉妬して論文指導を十分にしない、というケースもありました」。学生の保護者から「本人が卒論にやる気を出さない」と相談されることもある。

 

 依頼者の相談に応じる「執筆者」は、研究者や社会人など幅広い。依頼内容や依頼者の属性が多様化しているため、さまざまな執筆者を抱えている。「依頼者の研究テーマは多岐にわたるので、その都度詳しい人を外部から見つけてくることもあります」。執筆者は皆、学生の手助けをしたくて相談に乗っている。そのため、学生がどこまで自分の手で頑張ってきたのかも重視しているという。

 

 卒論支援を依頼する学生は大学で十分な指導を受けられていないのだろうか。山川さんは「大学の先生も、一昔前に比べればずいぶん熱心に指導をしている」と話す。それでも行き詰まるのは、教員の指導がその学生に合っていないためだと分析する。「例えば学習塾ではある教科の先生の指導が合わなければ他の先生に教わることができますが、細かくテーマを設定する卒論ではその先生以外の指導を仰ぐことが難しくなるので、合わなかった場合に学生は他に頼るところがなくなるのです」。卒論支援は、学生が大学外で頼れるものといえる。

 

 東大の後期日程試験(当時)に合格するなどもともと論文が得意だった山川さんは、大手食品企業で働いていたときに知り合いの大学教員に「留学生の論文作成を支援してほしい」と依頼され、卒論支援を始めた。その後も学生や留学生の研究支援を行い、事業化するに至った。

 

 数々の卒論支援をしてきた山川さんは、これから卒論を書く人に対し、早めに取り掛かることに加えて「つまずくことを恐れず、自分が突き詰めたいことをテーマにするのが大事」と話す。卒論はテーマ設定が最も重要で楽しい部分で、誰かに与えられたテーマではやる気が十分に出ず、結局行き詰まることもあるという。「テーマを設定できれば、卒論は半分くらいできたようなもの。たとえつまずいたとしても、いろいろな切り口を考えることが重要な経験になります」

 


この記事は、2018年3月20日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

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※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

個人に合う適切な支援を 「卒論支援会社」に聞く卒論執筆の裏事情東大新聞オンラインで公開された投稿です。

岡西政典特任助教ら テヅルモヅル類の新種を106年ぶりに発見

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 岡西政典特任助教(理学系研究科附属臨海実験所)らは、ヒトデの仲間であるテヅルモヅル類の新種(写真)を、日本産の標本の中からは106年ぶりに発見した。標本には昭和天皇が相模湾で採集したものも含まれる。成果は9日付のニュージーランドの科学誌『ズータクサ』に掲載された。

 

 

 海山などの海底の標高が破壊場所は、潮の流れがよくプランクトンを求めて多くの生物がすむが、岩肌が露出していて調査しづらく、環境の詳細が不明だった。テヅルモヅル類は大型で個体数も多いため、こうした環境の指標として期待されてきたが、標本が世界に散らばっていることもあり分類が不明瞭だった。

 

 岡西特任助教らは世界各地の博物館で、既知のテヅルモヅル類ツルボソテヅルモヅル属5種のうち記載情報が少ない3種の標本を観察し、5種全ての分類が正しいことを確認した。さらに国立科学図書館のツルボソテヅルモヅル属11個体の標本を分析し、表面の微小なとげなど既知の5種にない特徴を発見。新種として「トゲツルボソテヅルモヅル」と命名した。

 

 本研究は、標本に基づく研究施設としての博物館の意義を示した。今後は分布するツルボソテヅルモヅル属を分類・同定し、海山などの環境変動を推定する。

 

1208年3月21日14:00【記事修正】タイトルの誤植を修正しました。


この記事は、2018年3月20日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

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「当たり前」の目標並ぶSDGs 朝日新聞が大々的に推進するわけとは

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 2015年に国連サミットで採択されて以降、世界で推進されているSDGs──持続可能な開発目標。「1.貧困をなくそう」「8.働きがいも経済成長も」など、17分野の目標を掲げる。民間企業が続々とSDGsに向けた取り組みを始め、耳にする機会も増えた。その中で朝日新聞社は「2030 SDGsで変える」という企画を紙面で伝える他、特設サイトを開設している。SDGsの解決策を考えるリアルイベントを開催し、SDGsに関する過去記事を紹介した冊子も発行するなど、大々的なキャンペーンでSDGsを推進している。

 

17目標のロゴ

 SDGsの目標はどれも素晴らしい。しかし一見すると、それらは問題意識がすでに広く共有された「当たり前」のものばかりにも感じられる。当然貧困はなくすことが望ましいし、働きがいと経済成長を両立できればもちろん物質的・精神的に豊かな暮らしを送れるだろう。そんな「当たり前」のことをなぜ大々的に推進するのか。朝日新聞社で推進キャンペーンの取りまとめを担う石田一郎・マーケティング本部長に聞いた。

(取材・児玉祐基 撮影・石井達也)

 

石田一郎さん

 

身近な話題で自分ごとに 浸透しつつあるSDGs

 

 朝日新聞社では17年1月から、SDGsを推進するキャンペーンを開始。石田さんには当初「SDGs(エスディージーズ)の読み方すら分かっていただけないのではないか」と認知度への不安があった。その不安は当たり、すでにSDGsに向けた取り組みを始めていた官庁やNPOからの反応は上々だった一方で、読者からは「何の英語の略か分かりにくい」「ルビを振ってほしい」との問い合わせもあった。

 

SDGsの特設サイト

 

 しかし、継続的に発信する中でSDGsへの反応が変わり始めたと石田さんは話す。17年9月にSDGsやSDGsに向けた取り組みを紹介する冊子を発行したところ「学校や自治体、企業から『うちにも欲しい』という問い合わせをいただきました」。生徒の半分が外国籍のある小学校の校長からは「保護者と多様性について考えるための教材にぴったり」と送付の依頼があった。

 

 これまでの特集の中で、ネット上で大きな反響を呼んだ記事がある。17年3月の「『捨てないパン屋』の挑戦 休みも増えて売り上げも維持」だ。長時間労働と、売れ残ったパンを捨てることに疑問を抱いたパン職人の夫妻がウィーンの職人に倣い、パンの種類や具材を減らす代わりに素材にこだわった。すると売り上げを落とさずに「捨てない、働き過ぎないパン屋」への変貌を遂げたと記事は伝える。この記事は、webサイト「朝日新聞デジタル」で公開後1カ月たっても拡散が続いたという。どの街にもある「パン屋」の改革を通してSDGsを見ることで「SDGsを自分ごととして捉えていただくきっかけになったのではないでしょうか」と石田さんは語る。この記事を契機に、「海外では~」「地球環境が~」といった話題に加えて、読者に身近な題材を取り上げて伝えることの大事さが再認識されたという。

 

 

ものさしとして、接着剤として

 

 キャンペーン開始当初は、記事で紹介するそれぞれの取り組みに17分野の目標のロゴが一つずつ付くのかなと考えていた石田さん。しかしキャンペーンを進める中で、実際は一つの取り組みが、同時にいくつもの目標に向けた取り組みになっていることに気付いたという。「世の中の課題やそれを克服するための取り組みは、SDGsの枠組みを念頭に置くことでさまざまな角度から複眼的に分析できます」。逆に、例えば「8.働きがいも経済成長も」に向けた取り組みが、「14.海の豊かさを守ろう」に反することもある。SDGsの枠組みはそのような負の相関へも目を向けさせるきっかけとなる。「SDGsは『新しいものさし』なのです」

 一つの取り組みが異なる目標に関わっているケースだけでなく、異なる課題の解決を目指す異なる取り組みが、実際はどちらも一つの目標に関わっていることもある。実際、朝日新聞社が紹介する取り組みにも、同じロゴが何度も出現。SDGsのフレームワークがあることで、一見別々に解決すればよいと思われてきた課題が、実は根っこのところで課題を共有していることに気付きやすくなる。根本的な課題が同じなら「複数の取り組み間で解決策を共有することも可能になるでしょう」と石田さんは予想する。

 

 SDGsは新しいものさしであると同時に「人と人をつなぐ接着剤でもあります」。SDGsに取り組んでいる人、取り組もうとしている人にとってSDGsは、共に課題解決を目指す仲間を見つけるための格好の合言葉だ。仲間を見つけやすくなることで、課題解決のスピードアップにつながる。また「当たり前」の目標が並んでいるからこそ誰にでも受け入れられやすく、多くの人を巻き込みやすい。このように、SDGsは個々の目標の価値に加えて「ものさし」「接着剤」としての働きを持っているというわけだ。

 「想定より早く浸透している」とSDGsの推進に手応えをつかむ一方、「まだ3割くらいの認知度でしょう。まだまだ足りない」と石田さん。SDGsの17目標は一般市民にとって「当たり前」である上、「3.すべての人に健康と福祉を」「11.住み続けられるまちづくりを」など、国家や企業が実践の主体となりやすいものが並び、どうしても遠い存在になりがちだ。一般市民に直接リーチできる存在である朝日新聞社は、これからもSDGsを自分ごとに捉えられる記事を持続的に発信できるのか、注目だ。

 

「当たり前」の目標並ぶSDGs 朝日新聞が大々的に推進するわけとは東大新聞オンラインで公開された投稿です。

新入部員、募集中。

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新歓ビラ_2899

 

 東京大学新聞社は1920年の『帝國大学新聞』創刊以来、東京大学に基盤を置き、かつ東京大学からは組織的・人的・財政的に独立した立場から、新聞を中心とする各種メディアによる知識・情報の発信・交流を行ってきました。現在の活動内容は『週刊 東京大学新聞』の編集・発行、「東大新聞オンライン」の運営、講演会・セミナー・シンポジウム開催、広告営業など多岐にわたります。東京大学の学部生、院生であれば、どなたでも参加できます。ぜひお気軽に下記のメールアドレスまでお問い合わせください。

 

【連絡先】

新歓係:welcome@utnp.org

【件名・記載内容】

 件名を「東大新聞新歓」としてご連絡ください。本文には「①名前②所属学部/科類③学年④東大新聞でやってみたいこと、関心があること」をお書きください。④に関しては、なければ空欄で構いません。ご連絡をお待ちしています。

 

部門紹介

 東京大学新聞社では大まかに下記の部門に分かれて活動しています。複数の部門にまたがり活動する人もいます。

 

ニュース

週刊東京大学新聞2017年10月17日発行号1面

 

 ニュース面は文字通り、東大に関わる「ニュース」全般を扱う部門です。伝えるべき情報やニュースを簡潔に正しく報道する「一番新聞らしい面」といえると思います。行事やスポーツの試合の写真撮影も行いますし、法学部の人気低迷や女子学生への家賃支援など、気になったネタについて深掘り調査する特集も組みます。

 東大の今にアクセスし、正しく簡潔に情報を伝える。東大で過ごす中で感じた疑問を、大きな特集に育てる。ニュース面の魅力を、ぜひ一緒に味わいましょう。

 

学術

週刊東京大学新聞2017年11月28日発行号3面

 

 東大には3000人以上の研究者がいます。その研究を取り上げるのが学術面です。分野の最前線を走る研究者への取材は、きっとあなたの知的好奇心を満たしてくれるものになるでしょう。

 学術面は、書評を掲載する「百行で名著」や過去の東京大学新聞を振り返る「東大今昔物語」などの連載も扱っています。幅広い興味を持つ人を歓迎します。

 

文化

週刊東京大学新聞2017年10月31日発行号4面

 

 文化面では、普段の生活やそのときどきの話題について、記者が気になることを扱います。自分の興味のあることについて、比較的自由に企画を立てることができます。扱う内容は趣味や娯楽から世間の話題の分析までさまざまです。またテーマを絞った連載企画としては、東大の素敵な学生を毎号1人紹介する「キャンパスガール・ガイ」や博物館・美術館の展示を紹介する「火ようミュージアム」などがあります。

 あなたの気になる人・物事を取材して、記事を書いてみませんか?

 

デジタル事業

東大新聞オンライン2017年1月26日公開記事

 

 「東大新聞オンライン」と東京大学新聞のSNSを運営しています。紙面の記事をオンラインで紹介すると同時に、オンライン独自の記事を発信しています。記事の性質によってはオンラインの記事を紙面に掲載することもあります。

 オンライン記事は、字数や体裁が比較的自由であることが特徴。紙面とは一味違った記事を書くことができます。オンライン上の非常に多くの人々に記事を届けられる点も魅力です。

 

文化事業

2017年度五月祭で講演する川人博弁護士(左)と高橋幸美さん(撮影・児玉祐基)

 

 学生や社会一般向けに講演会、セミナー、シンポジウム等のイベントを開催する事業です。最新の学術文化や時事問題などをテーマとして取り上げ、情報発信を行います。五月祭・駒場祭での講演会の開催が活動の中心となっています。

 

過去のイベントの例

 

ビジネスチーム

日本ビジネスシステムズ株式会社PR企画「東大女子の座談会

 

 東京大学新聞は、新聞や書籍の販売収益と、広告による収益で成り立っています。

 私たちは、東大生やその保護者、東大を目指す受験生にリーチできる稀有なメディアとして、東京大学新聞社にしかできない広告を販売しています。就活生にアプローチしたい企業や、東大受験生を応援したい予備校、東大生に書籍を届けたい出版社など、様々なクライアントから、東大新聞の理念や読者層のユニークさを評価していただいています。

 私たち学生ビジネスチームは、インターネット時代の広告のあり方を模索しながら、クライアントにも読者にも魅力的で、かつ誠実な広告を作っています。社会人スタッフや、広告代理店に就職したOB・OGからアドバイスをもらいながら、企画を出し合い、営業をし、広告記事の作成やイベントの運営といった活動をしています。

 過去には、リクルートの創業者である江副浩正さんも東京大学新聞社で広告を作っていました。公益財団法人という法人格を持ち、90年を超える歴史を持つ学生新聞だからこそやれる活動です。

 企業の担当者と会い、彼らのニーズを聞きながら広告やイベントを作り上げるのは、毎日が学びの連続です。学生新聞だからこそ企画を考えることもできます。多くのメディアが広告収入の減少に悩まされるこの時代に、一緒にメディアや広告の在り方を模索しませんか?

過去の広告事業の例

東大女子の座談会 ―私たちの悩みと理想の働き方―

(日本ビジネスシステムズ株式会社・記事広告)

現役東大生が小学生時代に通っていた学習塾:トップは公文式

(公文式・記事広告)

・「週刊東京大学新聞」広告、「東大新聞オンライン」バナー広告

 

書籍

 新聞以外にも『東大20XX』『東大は主張する 東京大学新聞年鑑』『Fresh Book』という書籍の作成に携わっています。発行した書籍は東大生協書籍部などで販売されており、主に東大受験生やその保護者、東大関係者などにご愛読いただいています。

 

東大20XX

 「現役東大生がつくる東大受験本」という触れ込みで、主に東大に入るまでに何を勉強したらいいのか、東大に入った後の授業履修のコツ・進学選択の説明・大学院進学の傾向などを紹介しています。

 

『東大は主張する 東京大学新聞年鑑』

 1年間で東大にどんなことがありどんな変遷を遂げたのかが分かるよう、その年度の週刊東京大学新聞と東大新聞オンラインの中で印象に残る記事をまとめて収録します。

 

Fresh Book

 入学試験から合格発表、入学式に至る道のりや、キャンパスでの授業風景、クラス集合写真などを収めた新入生に向けて作る記念アルバムです。

新入部員、募集中。東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【蹴られる東大①】本音で語る、僕らが海外を選んだ理由(上) 海の向こうへの挑戦

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 日本人の留学熱が高まっている。日本学生支援機構の調査によると、統計を始めた2009年度の約3万6千人と比べて、2016年度の日本人海外留学者数は約9万6千人と、3倍に迫る勢いだ。半数以上を1カ月未満の短期留学が占めているが、中には大学の学位取得を目指し、長期にわたる留学に挑む人々もいる。

 

 近年、日本人学生による海外大学への正規入学を日本の経済界や国も後押ししている。この2年の間に柳井正氏や孫正義氏といった日本の財界を代表する人々が、自身の財団を通じて海外の大学で正規の学部生として学ぶ学生に奨学金の給付を開始し、ついには日本学生支援機構も、正規の学部留学生への支援を開始した。社会のグローバル化が進む中、世界を舞台に活躍できる人材の育成は日本社会にとって急務なのかもしれない。

 

 かつてなく海外大学への扉が身近になっている時代に、黙っていても東大に学生が集まった時代は終わりつつある。連載企画「蹴られる東大」では、優秀な日本人の学生が東大と海外のトップ大学双方に合格し、東大を離れ海を渡る現象に焦点を当てつつ、外部の有識者や東大教授に取材。東大と海外トップ大の違いをできる限り偏りのない視点から描き出すとともに、その違いから見えてくる、「国境なき大学選び」の時代に東大が取るべき道を探っていく。

 連載初回の今回は、2017年の4〜7月まで東大に通い、9月から米国の名門大学に渡った3人の学生に、座談会形式で米国大・東大併願の経緯や、東大での半年間の生活について語ってもらった。

 

(本文中に付されている数字をクリックすると注に飛び、注の冒頭の数字をクリックすると本文の該当箇所に戻ります)

 

(取材・高橋祐貴 撮影・山口岳大)

 

 

参加者(写真左から順に)

上田裕路さん 私立武蔵高校出身。理科Ⅰ類から米国名門リベラルアーツカレッジ[1]のカールトン大学に進学

西尾慧吾さん 私立灘高校出身。文科Ⅲ類からイェール大学に進学

鞍馬陸さん 私立開成高校出身。理科Ⅰ類からプリンストン大学に進学

 

険しき米国大受験への道のり

 

——今日は皆さんお集まりいただきありがとうございます。初めに、皆さんが米国大受験を決意した経緯について聞かせてもらえますか

 

 

西尾 米国大受験を決意したのは高3の8月末でした。高校の二つ上の、ハーバード大学に行った先輩とたまたま話して、全寮制のハーバード大学の寮で友人と夜な夜な語り合う楽しさについての話などにインスパイアされたのがきっかけです。当時は国際関係論をやろうと思っていたので、世界からいろいろな人が集まっている米国の大学っていいな、と感じました。

 

上田 僕は高2の夏にHLAB[2]というサマースクールでリベラルアーツ教育の魅力に触れ、米国の大学に興味を抱きました。それまでは、なんとなく東大を受けようと考えていました。しかし東大だと必ずしも自分の進みたいと思った分野に進学選択で行けるとも限らず、後に興味を抱いた心理学も理系なのか文系なのか曖昧な学問だったので、(文理の区別がなく専攻も入学後に自由に選べる)米国大にチャレンジしてみよう、と思いました。

 

鞍馬 漠然とは結構前から考えていましたが、強く意識したのは高1冬に高校で開かれたカレッジフェアに参加したときですね。このイベントでは米国や英国、フランスの大学の関係者から話を聞けたのですが、その中でリベラルアーツ教育に引かれました。僕は数学が好きな一方で経済や歴史といった社会科学にも興味があったので、分野融合的な学習ができ、レベルを自由に選択して授業を取ることのできる米国の大学の柔軟な環境は自分に合っていると思いました。

 

——アメリカの大学を受験することを決意してからは具体的にどのような対策をしたのでしょうか

 

鞍馬 高校に海外進学担当の教員がいたので、まずはその人にお世話になり、高3の夏になって一人で書くのが難しいエッセイ[3]のためにRoute H[4]という塾に通いました。テスト対策は学校の先生にも手伝ってもらいつつ自分で進めました。

 

上田 僕はまずアゴスジャパン[5]という塾に行ってテスト対策をし、そのまま塾でエッセイも見てもらいました。エッセイは他にも留学フェローシップ[6]のサマーキャンプで出会った先輩や、内定をいただいた日本の米国大向けの奨学金団体の先輩にもチェックしてもらって、それでなんとかしたという感じです。

 

西尾 対策というと、エッセイは12月に入って1カ月だけ通ったRoute Hで見てもらいました。米国大受験において評価の対象となる課外活動については、高校で生徒会長を務めるなど米国大を意識する以前から手広くやっていたので、決断した後に改めて受験を意識してやることはありませんでした。

 

——ちょうど課外活動の話が出ましたが、皆さんは課外活動についてはどのようなものをやっていましたか

 

西尾 生徒会長以外にも、いろいろなことをやりました。模擬国連[7]という海外大受験においては王道の活動と、地元でやっている国際交流イベントの実行委員長、国際シンポジウムへの参加などです。修学旅行で知り合った人と沖縄戦の遺品を整理するボランティアを始めたり、高校生向けの起業コンテストであるキャリア甲子園で賞をいただいたりもしました。

 

 

上田 僕はそれこそ普通の日本の高校生がやるような活動をしていました。軟式テニス部とESS(English Speaking Society)に所属していて、受賞歴というのもESSでやった英語劇で小さな大会の賞をいただいたくらいです。高3の3月からフランスに2カ月留学する機会があって、それが高校生活の中では一番刺激的でしたね。海外大受験のかいわいでは、模擬国連やWorld Scholars Cup[8]のような活動をしている人が多いですが、必ずしも真似をする必要はないと思います。僕は王道ではない活動ばかりしていましたが自分自身では好きなことをやれていたと思っているので、もし当時に戻ったとしても、他の活動に手を出すことはないでしょう。

 

西尾 フランスはどうして行ったの?

 

上田 学校で中3から第二外国語を学べるプログラムが用意されていて、その一環で行かせてもらったという。

 

——それで留学まで行けるというのはすごいですよね。鞍馬さんは課外活動についてはどうでしたか

 

鞍馬 そうですね…。まず思い付くのが数学をやるLLSという部活に入っていたんですけど。

 

 

西尾 何の略?

 

鞍馬 Logic Lovers Society。

 

一同 かっこいい(笑)。

 

鞍馬 他にも校内では体育祭の実行委員やクラス代表を務めました。校外では、友人に紹介してもらった筑波大学で大学の先生に数学を教えてもらえるプログラムに参加していました。課外活動をやらなければならないというプレッシャーがあってさまざまなことをしましたが、その中でも好きなことができた、というのが良かったと思います。

 

——先ほど上田さんの話の中で高校の環境という話題に少し触れましたが、皆さんが受験するに当たって高校からはどの程度のサポートを受けることができましたか

 

鞍馬 僕が開成についてまず言いたいことは、自由に活動できる環境があったということです。米国大受験に向けて自由に課外活動に取り組めたのはありがたかったですね。サポートに関しては海外大受験専門の教員がいたことが大きいですが、自分たちの代が初めて、という感じだったので、先生も生徒も互いに手探りの状態で進めました。教科の先生2人とスクールカウンセラーまたは校長から推薦状がそれぞれ1通ずつ必要になりますが、それらの翻訳は学校側で行ってくれました。僕の場合はそれに加えて筑波大学の先生にも推薦状を書いてもらいました。

 

上田 武蔵の場合は、まず学校の直接的なサポートとしてはネーティブの先生が海外大進学支援の窓口となってくれていました。この先生は30年前からポツリポツリと出ていた海外大に進学する生徒の支援をずっと担当していたため、場数を踏んでいました。推薦状も依頼すると英訳までされて気がついたら出来上がっているという感じでしたね。加えて間接的なサポートとして、学校に10年以上前の卒業生とつないでもらい、エッセイ執筆や学校選びに助言をいただきました。

 

 

西尾 灘高は、10年くらい海外大に進学する生徒が出ていて、その面倒を見ていた先生がお世話になっていた生徒会の顧問でした。もともと近しかったのもあり頼りにしましたが、推薦状の内容は、完全に任せるのではなく、自分が各アプリケーションとのバランスを鑑みながら、先生と一緒に考えていきました。米国大受験では、自分のエッセイと推薦状の内容を調整する必要があるため、ある程度推薦状の内容も自分でコントロールする必要があります。

 

——米国大受験で一番難しかったことは何でしょうか

 

西尾 エッセーですかね。まずネタ出しに苦労し、友達や親に自分について聞いてどのようなテーマについて書くかを探りました。やっとエッセイを書き上げたのは一般出願締め切り直前の年末のことです。あとは日本のセンター試験にあたる共通テストのSAT[9]。私は帰国子女ではなかったので英語は苦労しました。米国大を目指し始めたのが遅かったため、本来なら年6回受けることが可能なSATを受ける機会が3回しかありませんでした。

 

上田 僕もエッセーに一番苦労し、塾のカウンセラーや学校の先生、友達に相談してテーマを決めていきました。僕の場合は親とはあまり話していませんが、話しておけばもっと面白いテーマが出てきたかもしれません。実際にエッセーを書いた経験のある米国大の先輩に、同じ題材から興味深いストーリーを描き出す方法と言いますか、テーマの「掘り方」について教わったりもしました。最終的には普段何気なく接している人たちについて、「自分の物差しだけでは計れない多様さがあることに気づいた」という掘り下げ方をして書き上げました。

 

 

鞍馬 振り返ってみて大変だったのは奨学金関連ですかね。やはり大学によっては年間およそ7万ドル(700万円)などと学費が高いので、親からも心配されていました。最終的に受験の直前に国内の奨学金団体から支援を受けられることになったから良かったものの、奨学金を取れなければ自由に受験することはできなかったでしょう。二つ目は時間管理です。日本と米国の大学双方を受験するだけで大変でしたし、僕の場合SATの数日前に実行委員を務めていた運動会があったので、長期的な視野に立ってそのときやるべきことを判断する必要がありました。

 

東大受験、そして駒場での生活

 

——それではここから、東大受験の経緯について伺っていきます。まず皆さんが東大併願を決めた理由をお聞かせください

 

西尾 東大受験は、米国大受験を許可してもらえるよう親を説得するための条件でしたね。とりあえず東大は行ってくれ、と言われて、「あ、はい」というか。後は、高校を卒業した後、9月に米国大学に入学するまでの4カ月のギャップタームの間も勉強をしたかったので、そのための環境を確保したいという思いもありました。米国大受験を決めたのが遅く全落ちの可能性もあったため、浪人を避ける意味合いもありましたね。

 

上田 僕も高3の6月に米国大受験を決意したのですが、その時の親を説得するための条件が「両方受ける」ことでした。高3の8月に留学フェローシップでエッセー執筆の大変さを知り、一旦東大受験をやめようとしましたが、9月に学校がまた始まると、学校で日本の大学受験向けの勉強をするのも楽しかったですし、成績もそこまで悪くなかったので、受けられるなら受けてみよう、と最終的には東大も受験しました。

 

鞍馬 2人と似ているのですが、やっぱり親からそういう風に言われていたんですよね。高校の普段の授業が日本の大学の受験を意識していて、周りで東大を受ける人も多かったので、併願に尻込みするようなことはありませんでした。もしギャップタームで通うことになったら日本の大学がどういうものかを見ておきたい、という動機もありました。

 

 

——どのように2種類の大学受験の準備を並行して行いましたか

 

鞍馬 僕は時期ごとに集中することを変えていましたね。高3の夏は日本の大学受験の勉強をし、夏過ぎから10月ごろまではエッセイに集中しました。アーリーアクション(早期出願)締め切り後の11月は日本の勉強をし、また年末が近づくとエッセーに注力して、1月からはほぼ日本、という感じです。

 

 

上田 高2の夏までは普通に東大を受験するつもりだったので何となく受験勉強はしていました。英語だけはしっかりやっていたので、いざ両方受けるとなったときも、帰国子女でないにしては苦労が少なかったのかな、と思います。日米併願をした先輩方からは、共倒れになる危険があるからどちらを優先するのか決めた方がいいと言われていて、東大は浪人という選択肢も考慮すれば挑戦する機会がまだあるというのと、米国大のリベラルアーツ教育により惹かれていたことがあり僕は米国大受験を優先しました。年末までは学校の授業をきちんと聞き、エッセー執筆の合間に日本の勉強をして過ごしました。結局センター試験の前日までエッセーを書く羽目になっていたので、ろくに勉強をしないでセンター試験を受け、その後は基本的には東大の受験勉強をしていました。

 

西尾 僕は6月末まで生徒会長を務めていてあまり勉強もしていなかったのに、8月に突然米国大受験を決めたせいでSATの勉強やエッセイの執筆などを全て同時並行でやらなければならなくなり、東大の対策をやっている場合ではなくなってしまいました。12月までは海外のことだけをやり、東大は1、2月だけで詰め込みました。

 

 

——かなり準備期間が短かったと思うのですが、センター試験はいかがでしたか

 

上田 僕実はセンターの社会でどの教科を受けるか最後まで迷ったままで、ついぞなんの勉強もしないまま1月に突入しまして。やらなくても点数がある程度まで取れる教科ということで結局地理にして、参考書を時間がある時に買いに行き、センターの前日に2冊組の参考書の片方だけを読み終えてセンター試験に臨みました。それまで一度も学校で勉強したことない地理で。

 

西尾 ん? 学校でなに選択してたん?

 

上田 日本史か地理選んで、って言われて高2のとき日本史を選択した。

 

一同 (爆笑)

 

 

上田 化学も無機化学でつまずいて勉強しなくなっていたので、東大なら9割は欲しいセンターで55点を取ってしまって。2次の数学も6問あるうちの一つも完答できなかったので、本当に何してたんだろう、という感じです。

 

西尾 私は世界史・日本史選択だったのですが、日本史の方はろくに教科書を読んでなかったので、1月5日からセンターの勉強を始めようと思い、4日間で教科書を読み込んで、残りの日でひたすら過去問を解きました。1日6年分。

 

鞍馬 センターは結構普段の勉強で意識して対策していたので、1月になってからは過去問を解くなど実践的な対策に集中できました。準備はできるだけ早くからするようにしていましたね。

 

上田 偉い。

 

西尾 もう(鞍馬)陸のコメントだけ載せればいいよ(笑)。私は日本史運試しだったから。言うて4択やからこんなん当たるんちゃう、みたいな。

 

——では、そうして入学した東大での半年の生活について、お話を伺ってもよろしいですか

 

西尾 結構東大の人たちとは仲良くなれました。灘は男子校で理系が3/4を占める限られたコミュニティーでしたが、灘より多様な環境である文Ⅲで勉強できたのは楽しかったです。哲学は真面目に勉強していました。景山洋平講師(教養教育高度化機構)のハイデッガーを読む授業を取って、ハイデッガーだけは研究対象にするのをやめよう、と思ったり(笑)。関西人の私にとっては東京に住む経験も良かったですね。サークルには入っていませんでしたが鈴木寛先生(公共政策大学院)が主催する学芸饗宴(通称すずかんゼミ)に所属していて、周りのレベルが高い中で楽しい時間を過ごせました。

 

上田 僕はフランス語を高校で勉強していたので、英語以外の言語を高校以前に習得していた学生対象のクラス[10]であるインタークラス(既修外国語クラス)に所属していました。このクラスは変人が集まっていて面白かったですし、科類もごちゃ混ぜで25人くらいの少人数だったので、クラスの結束がすごく強かったです。クラスが楽しかったため、なんだかんだ毎日授業には来ていました。何を思ったかサークルは三つ入って、スポーツ愛好会の軟式テニスパートでずっとテニスをし、お笑いサークル笑論法でかねてからやってみたいと思っていた漫才に挑戦し、6月に定期演奏会があるオーケストラが一つだけあったのでそこにも入って、バイオリンを演奏しました。

 

鞍馬 僕が一番東大で楽しかったのはTLP[11]フランス語の授業ですね。サークルは数学や物理に関するゼミを開くATOMSというのに入っていて、授業とは関係なく自由に勉強できたので良かったです。授業はあまり出ていないのもありましたが、自分が履修していない授業にも頻繁に参加していたので、結局大学にはほぼ毎日来ていました。後はオフィスアワー[12]はありませんでしたが、積極的に話を聞きたい教授にアタックし、議論をしていました。東大には1学期しかいないことが分かっていたので、できることは全てしよう、という意気込みでした。

 

※受験での苦労話や東大生活について語ってくれた3人。次はいよいよ米国での大学生活、そして東大と米国の大学の比較について語ってもらいます。次回連載予定は4月3日です。

 

お断り:特集名にて「大学を蹴る」という表現を使用したことについて、ご不快に思われる読者の方もいらっしゃるかもしれません。この特集名は「東大は一番だ」という未だ根強く残っている固定観念から離れなければ東大の成長は望めないのではないかという編集部の問題意識に基づいたものであり、実際に東大をやめて海外大に進学した学生が東大をないがしろにしているということでは決してないという点をご理解いただけると幸いです。

 

【蹴られる東大】

本音で語る、僕らが海外を選んだ理由(下) 海の向こうで見たもの

 


注 

※冒頭の数字をクリックすると本文の該当箇所に戻ります

[1]米国で一般的な小規模大学。主に教養学部のみから成り、密な教育を強みとする

[2] HLAB…「ボーダーを越えたリベラル・アーツ」をコンセプトに開催される、日本及び世界の学生を招いて行われる教育・国際交流プログラム

[3] アメリカの大学受験では作文の提出がほぼ必須となる。自分の個性などをアピールする内容の共通エッセイや、志望理由等を聞く学校ごとの個別エッセイがある

[4] ベネッセコーポレーションが運営する、海外大トップ校を目指す高校生のための塾。テスト対策は行わず、主にエッセイの執筆指導を中心に行っている

[5] 海外の大学・大学院進学指導塾。非英語圏の受験生が英語力を証明するために受けるTOEFLや、米国のセンター試験にあたるSATといったテストに備えた対策に加え、エッセイ指導、進路カウンセリングなどを包括的に行っている

[6] 2013年に海外大学に在籍する日本人学生が主体となって立ち上げたNPO法人。サマーキャンプなどを通じて、現役海外大生による高校生の海外大学進学支援を行っている

[7] 1923年に米国ハーバード大学で「模擬国際連盟」として始まった、学生が国連の国際会議を模して議論を交わし、国際政治への理解を深める教育プログラム

[8] 2012年より日本大会が行われている、学生が教養を競い合う国際的な知的競技で、ディベートやエッセイ、ペーパーテスト、クイズの4種目から成る。日本大会を勝ち抜くと世界大会に出場でき、そこで上位20パーセントに残るとイェール大学で行われる決勝大会に進むことができる

[9] 米国でのセンター試験にあたる共通テスト。民間の業者によって運営され、米国外の生徒の場合1年に6回受験可能。国語(英語)と算数のリテラシーを問うSATと、個別の教科の知識を問うSAT Subject Testから成る。Subject Testは2~3教科を受験する

[10] 東大には、選択した第二外国語を元に振り分けられるクラスが存在する。必修授業や文化祭もクラス単位での参加となる

[11]トライリンガルプログラム:入試の英語成績上位1割の学生のみ受講可能な初修外国語の特別プログラム

[12] 米国の大学で一般的な、教授が学生と話すために時間を指定して居室を開放する制度

【蹴られる東大①】本音で語る、僕らが海外を選んだ理由(上) 海の向こうへの挑戦東大新聞オンラインで公開された投稿です。


【蹴られる東大②】本音で語る、僕らが海外を選んだ理由(下) 海の向こうで見たもの

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 東大を離れ海外の大学に進学する学生に迫り、世界での東大の立ち位置を考える連載「蹴られる東大」。2回目の今回は、前回に引き続き2017年の4〜7月に東大に通った後、9月に米国の名門大学に渡った3人の学生に、米国の大学での生活や、東大と米国の大学を比べて思うことを語り合ってもらった。

 

(本文中に付されている数字をクリックすると注に飛び、注の冒頭の数字をクリックすると本文の該当箇所に戻ります)

 

(取材・高橋祐貴 撮影・山口岳大)

 

 

参加者(左から順に)

上田裕路さん 私立武蔵高校出身。理科Ⅰ類から米国名門リベラルアーツカレッジのカールトン大学に進学

西尾慧吾さん 私立灘高校出身。文科Ⅲ類からイェール大学に進学

鞍馬陸さん 私立開成高校出身。理科Ⅰ類からプリンストン大学に進学

 

十人十色の米国大生活

 

——それではいよいよ米国での大学生活について語ってもらいます。まずは学業面について、授業の構成や厳しさなども日本とは違うと思いますが、実際に受けてみてどう感じましたか

 

西尾 まず取っていた授業を言うと、一つ目はDS(Directed Studies)というもので、これは1年生のうち選考に通った人のみが受けられる、ひたすら人文学をやる授業です。基本的に各セメスター4単位を取得するのですが、この授業が3単位分あって、文学、歴史、哲学がそれぞれ1単位ずつ、というように特にハードな集中授業三つから構成されていました。他に前セメスターは1.5単位のフランス語を取っていたのですが、こうした授業の取り方をした結果、リーディングの量が週平均600ページになってしまいました。もうどうなってんの、という(笑)。しかも古典の授業なので、『イーリアス』1冊をいきなりバーンと渡されて、3日後までに読んでこい、みたいなこともありました。最終的にDSの三つの授業で30冊くらいの本を買わされましたね。さらに毎週5〜6ページのライティングが課され、各授業それぞれ期末試験があったため、本当に一日中本を読むような生活が続きました。図書館が午前1時45分まで開いているので、そこで閉館まで勉強して、寮に帰ってルームメイトが寝ていれば、そのまま部屋で午前3時くらいまで勉強しました。フランス語の授業が朝8時20分から始まるので、朝7時半には起きて小テストの勉強をしていました。勉強は本当にすさまじかったです。毎日4時間睡眠で回す感じで、キツかったですね。

 

上田 週末はどうだったの?

 

西尾 週末はミスって10時間くらい寝てしまう日もあったけど、少人数の授業ばかりで予習しないとばれてしまうので、基本的に勉強ばかりしていました。

 

 

上田 僕の場合はまず1年生が取らなければならないArgument & Inquiry Seminarと呼ばれるセミナーがあり、教育についての授業を選択しました。後はフランス語を続けたかったのでフランス語の授業を取り、それからまだ理系か文系どちらに進むか決めていないので[1]「もし理系に進むなら数学は早めに取っておいた方がいい」というアドバイスのもと数学を履修しました。僕の大学は1学期10週間のトライメスター(3学期)制で、一つの授業で基本6単位ですが、例えばオーケストラのような半分課外活動みたいなものだと1単位のみだったりします。音楽が専攻として成立するのも米国大の面白いところですよね。

 

 一つ一つの授業は基本週3回、合計3時間半くらいでしたが、フランス語だけはTA(ティーチングアシスタント)との少人数のセッションが通常授業とは別の日にあったため毎日授業がありました。フランス語は毎回コンスタントに宿題が課されましたがどれも1時間半程度で終わり、時々あるテストもそこまで大変ではありませんでした。頻繁に授業がある分負担が分散される感じでしたね。数学は入る授業を間違えた感じがありました。カリキュラムもきちんと確かめた上で決めたのですが、教授が思いの外前半の内容を長くやり過ぎてしまい、高校のとき習ったような内容で止まってしまうという…。セミナーも大学の中では楽な方だったらしく、今学期は8時間近く寝られました。

 

 

西尾 うらやましい…。

 

上田 来学期はもっと人文系の授業も取ってみようかな。

 

西尾 いやあ、人文系の授業取ると一気に睡眠時間減るよ。

 

鞍馬 僕が取っていたのは数学、物理、経済、フランス語です。数学は数学専攻向けの授業だったのでそれなりに量は多くて、授業の頻度は少ないですが毎回の課題として出される問題のセットをこなすのが大変でした。証明問題ばかりだったので毎週ペーパーを書かされている感じでしたね。物理は解析力学の授業でしたがそこまでキツくはなく、日本でやっていたものからちょっと進んだ内容を学びました。経済は入門の授業だったので重くはなく、週100ページはいかないくらいのリーディングで済んだので楽しめました。フランス語が個人的には重かったかな。毎日授業があって、コンスタントに宿題があるのに加え、作文や口頭試験、ペーパーテストのような重たい課題が週に2、3回あったのでつらかったです。

 

——ここにいる3人とも帰国子女ではないですが、英語面での苦労はありましたか

 

西尾 授業では古代ギリシャの人名などが、日本の世界史とは違う呼ばれ方をしている場合が多く、分からないという苦労をしました。後は雑談をするのが難しいですね。

 

上田 僕も大変でした。読むことに関しては週100ページくらいのリーディングをこなしているうちに、一文一文じっくり読まずに要点を捉えて読めるようになりました。しかし、他の留学生もアメリカの高校に通っていたなどして英語に堪能な人が多く、英語力のハンディは大きかったです。

 

西尾 留学生っていっても帰国子女の子が多いよね。「冬休み国に帰るの?」って聞いたら「いやニューヨークにお父さんいるから」みたいな。

 

上田 一応外国から来ているけれどもUWC[2]出身みたいなね。ライティングも自分が苦労しているものを、他の留学生の人たちはこんなの余裕という感じでこなす人も多いです。話すことに関しては、セミナーの授業がディスカッションの多いものだったんですが、アメリカ人の学生が教授からの質問を無理やり自分の言いたいことにこじつけて答えるのに驚きました。

 

西尾 ああ、なんとなく分かるかも。おそらく彼らも課題文献を全部は読んでないので、自分が読んだ部分につなげようとしゃべってくるんですよね。自分はそこについて話したくないのにな、と思っていても向こうが延々としゃべっているのでどんどん論点がずれていく。

 

 

上田 そう。教授が提示した論点に必ずしも直接的に答えないんですよね。そんなのでいいんだ、と言ったら変かもしれませんが、これは新鮮でした。

 

西尾 教授も学生がリーディングを全部は読んでいないことを察するので、論点から外れた発言は評価されませんが、かといって何も発言しないと授業参加点がゼロになってしまうので、難しいところです。しかしイェールではこうした点も、授業ごとに配置されているアカデミックアドバイザーの人たちに2週間に1回くらいの頻度で相談できます。「本当は授業中にこういう話をしたかったのにクラスメイトがこう話をもっていったせいでできなかった」と相談すると、「教授もそこは気付いているから、教授に後からどんな話をしたかったのか伝えに行けば参加点は下がらないよ」と教えてくれました。

 

上田 僕のところは基本的に、専攻を決めるまでA&I Seminar (Argument & Inquiry Seminar)の先生がアドバイザーになってくれます。僕も授業でのディベートがつらいと相談しに行ったことがありました。相手が何を話しているのかを聞き取るのがまず大変だし、それを理解してから話題が次に移るまでに考えて発言するのはなかなか速度が追いつかない。どうすればいいかと尋ねたら、一つ核となるアイデアを持っておいて、何か聞かれたらとりあえずそこに結びつけて答えるようにすればいい、と教えられました。おかげで少しやりやすくなりました。

 

鞍馬 僕は取っている授業の性格的にそこまでディスカッションは多くありませんでした。経済の授業は一応しゃべりましたが、リーディングの内容確認をする、という感じだったのでそこまでハードでもなく、物理や数学でもディスカッションはありませんでしたね。ただ、入学前に「今年の1冊」的な本が家に送られてきて、オリエンテーションの時にその内容についてディスカッションをさせられた時は本当にきつかったです。

 

 

西尾 今年の本は何だったの?

 

鞍馬 “What Is Populism?” (Jan-Werner Mueller)という本で、トランプに代表されるように近年ポピュリズムの台頭が著しいけど、実際ポピュリズムとは何なのか、というような内容でした。なかなかあれは難しかった。

 

——皆さん大学での課外活動はどのようなものをやっていますか

 

西尾 イェール大学の日本人会に所属しています。他にはイェール大学のあるニューヘイブンは難民が多いので、シリア難民に英語を教えるボランティア活動に参加したり、ホームレスに食事を届ける活動をしたり。地元の小学校で英語を教えるボランティアもやっています。イェール生は積極的に課外活動をするので、これでも少ない方です。

 

上田 僕はそんなにはやっていないですね。単位がつくので授業なのか課外活動なのかわかりませんが、とりあえずオーケストラには入っていて、後はやはり日本人会みたいなものはあるのでそこにも入っています。けどそこ止まりかな。

 

 

西尾 皆課外活動の希望を持って米国に行くけど、意外とできへんよな。やっぱり授業は忙しいから。

 

上田 多分課外活動をやると、寮の友達と過ごす時間がなくなると思う。

 

鞍馬 僕はサッカーをやっています。学校代表とかではなく、結構自由な感じで活動しているクラブです。一応数学クラブにも入っていますがこちらはクラブ自体ほとんど活動していません。後はAASAという団体にも入っていて、週末ごとに皆でまとまってキャンパス外のレストランにご飯を食べに行くなんてことをしています。

 

 やはり全体的に課外活動は少ないと思っていますが、これにはクラブに入らなくてもできる活動が多いためという事情もあります。寮で夜開かれている「プログラミングコードを書く会」なんてものに出てみたり、歴史のセミナーに参加しに行ったりしているうちに、課外活動に手を出す時間はなくなっていました。

 

西尾 そういうイベントの点では、イェールの場合結構大学が著名人を呼んできてくれますね。昨年だとジョン・ケリー元国務長官とか。まあOBだから呼べるのですが。

 

——それはすごいですね。ちょうど寮での話が出ましたが、東大とは違ってほとんど全ての学生がキャンパス内の寮に住む米国大での寮生活にはどのような意義があると思いますか

 

西尾 良し悪しがあると思います。当然ストレスもたまりますし。一応事前にルームメイトとの性格が合致するようにアンケートを取ってから部屋を決めてはくれるのですが、特に1年目はミスマッチも多いです。私の場合も自分とテンションがかけ離れた人たちと相部屋になってしまい、4人部屋の残り3人は常にパーティーに行っているというような状態でした。寮で静かに勉強ができないため図書館に行かなければならず、つらかったです。

 

 その一方で、他人との衝突をどう解決するか、ということを学べるのはいいと思います。私のところは、ルームメイトの3人が全員アメリカのニューイングランド地方出身という著しく多様性に欠けた部屋でしたが、日常生活に対する見方がまるで違う彼らと衝突しつつも、話し合ってお互いの違いを認識し合い、歩み寄ることができました。後は留学生が全体の1割しかいないのでなかなか難しいですが、もう少し出身地に多様性のある部屋に割り振られればなあ、という感じです。

 

 

上田 僕のところは、基本的に1年生は2人部屋で、留学生は米国人と相部屋になります。1フロアに30くらい部屋があり、そのうち留学生は4人程度です。学生数が全部で2000人程度なので、知り合いの知り合いの知り合いをたどればキャンパス内の全員を網羅できそうな、密なコミュニティーが形成されています。週1回寮のフロアの全員で夕食を食べたり、毎週日曜には連絡事項を伝達するフロアミーティングがあったり、面白いところではうちの学校で盛んなフリスビーのフロアチームもあったりと、フロアの結束は固いです。僕やルームメイトだけじゃなく、ルームメイトの友達も普通に僕たちの部屋に入って来るので、いろいろな人に会う機会は多いと感じます。終電という概念もないので、勉強したければずっと勉強できるし、週末も深夜3時くらいまで遊んで帰って寝る、ということができて、ずっと大きな家に住んでいる感覚です。

 

鞍馬 高校、大学に日本で通っていたときは、通学に片道2時間かかっていたので、それを思うと徒歩数分で教室に行ける寮生活は新鮮でした。自分の場合は、珍しいと思いますが1人部屋だったので、他の2人とはちょっと違いますね。ただし、寮の同じフロアに住んでいる、同じく1人部屋住まいの15人程度の学生で構成されたグループがあり、そのグループで一緒に出かけたり、普段も交流したりと、ルームメイトに近い存在はいました。このグループに自分を含めて3人の留学生がいて、結構話しやすい雰囲気はありましたね。自分の寮は酒とたばこが厳禁だったので、それを目当てに留学生が集まったのかもしれません。

 

上田 うちの大学にもそういうフロアがありますよ。希望して入ってるはずなんだけど、酒飲んでる人もいる(笑)。

 

——飲酒事情にもいろいろあるんですね。次の質問ですが、米国大での生活を通して、これはいいと思った点はありますか

 

西尾 やはりいいのは勉強に打ち込めることですね。古典を本気で学ぼうと思ったら、人文学の基礎知識を徹底して教えてもらえますし、提出したエッセイ(小論文)にもたくさんコメントを書いて返してくれます。それから、日本だと論文を書く時は二次資料の引用が普通ですよね。面白いのは、イェールだと1年生のうちは二次資料の引用が禁止で、自分でどれだけ古典の原典という一次資料を深く読めるかを求めてくるところ。おかげで人文学をやる上で必要なスキルが身につきます。

 

鞍馬 クラス単位が小さいというのが嬉しいところでしたね。プリンストンだと基本全ての授業が16〜20人で行われます。経済とかだと100人くらいになることもありますが、どの授業にもプリセプトと呼ばれる少人数での討論中心のゼミの時間が付随しているので、必ずきめ細かい指導を受けられます。

 

西尾 イェールもTA(ティーチングアシスタント)による討論中心のゼミ授業というのを毎週やっていて、大人数の授業を取っても少人数指導の要素が必ずあります。

 

 

上田 僕のところはそもそも学生数が少ないので、授業は基本15人くらいで、多くてもレクチャー授業の70人程度ですね。僕の行っているリベラルアーツカレッジが他の2人の総合大学と違うのは、院がないためそもそもTAがおらず、教授が直接討論の指導も行ってくれることでしょう。

 

西尾 私の取っているDSも特別な授業なので、イェールの人文学のトップ層の教授たちが毎週2時間半、1対15くらいで直接指導してくれます。オフィスアワー[3]もものすごく充実していて、週3時間くらい1人の教授が時間を取ってくれる上に、時間外に行っても相談に快く乗ってくれました。

 

——続いて、米国大に進学する際にネックになると思われる学費についてお聞きします。米国の大学は、大学にもよるものの、寮費などを含めた学費が年間約7万ドル(およそ700万円)と高いですが、皆さんはどのように負担していますか。金銭的負担は進学の妨げになり得るでしょうか

 

上田 僕は日本国内の財団と大学から奨学金をもらっているのですが、それでもカバーし切れないので親に一部を負担してもらっています。キャンパスでのバイトは週8時間までと定められていて、学年が上がっても週10時間程度までにしか増えないので、あまり学費の足しにはならないですね。

 

西尾 僕は国内の奨学金団体に全額を負担してもらえています。1年の学費は大体6万5千ドル(約650万円)ですが、それに加え大量に本を買わされているので、やはり年間700万円近くはかかっていますね。ペーパーバックも「ちりも積もれば山となる」という感じです。

 

鞍馬 僕も国内の財団から全額学費を補助してもらえています。ですが、やはり一般には学費の問題は進学の妨げになるでしょう。

 

 

西尾 私は今援助してもらっている奨学金に受かることが米国大受験の第一条件でした。かなり宙ぶらりんの状態のまま米国大受験の準備を進めましたが、奨学金の選考に通った前提で話を進めないと準備が間に合わないので、そのつもりで取り組みました。

 

上田 お金が妨げになるのは厳然たる事実です。僕は実際問題、最後の段階で大学側から提示された奨学金の額の違いを見て、第1志望を諦め第2志望に進学しました。

 

西尾 米国の大学は、高額な学費を取っている分資金も潤沢で、大学の設備や学生のサポートシステムがしっかりしています。卒業後を含めた将来的なことも考えると、払った分だけ見返りがあるとも言えますが、やはりその見返りにたどり着くまでに払う額が高いのは否めないですね。

 

東大 VS 米国トップ大 それぞれの強み

 

——ここからは東大と米国の大学の比較について話していきたいと思います。まず、実際に行ってみて、米国大にしかない強みにはどのようなものがあると思いましたか

 

西尾 やはり友人関係の面で見ても寮生活で「大学に住んでいる」というのは大きいですね。後は資金力。東大と比べても施設の面でイェールは充実しています。それから授業が少人数なのも良さですし、何よりサポートの充実が強みです。週2回はオフィスアワーで教授と会う機会が保証されていますし、日本では考えられないレベルで教員が学生に尽くしてくれます。前にちょっとリーディングで分からないところがあり、ある先生に質問をしたら、その分野が専門の先生にいつの間にかメールを転送してくれていたこともありました。

 

上田 僕も前に授業を取っていない先生のところに、今こういうことをやりたいと思っているが来学期どんな授業を取るべきか、といったことを聞きに行きました。他に米国にしかないものとしては、向こうに行ったら日本人としてマイノリティーの立場に立たされるということ。共通の前提がない人たちと交流する体験は東大にいるときにはない経験でした。

 

鞍馬 2人が話していた教授とのコンタクトの点について言うと、僕は東大にいるときも積極的に教授に会いに行ったから分かるのですが、東大にはシステムとしてのオフィスアワーもないし、初めはどう教授にコンタクトを取ればいいのか分からず戸惑うことも多かったです。その点プリンストンだと、アカデミックアドバイザーや生活上の相談に乗ってくれる寮の相談員がいて、そういう人たちのところに行けば、教授や先輩と簡単にコンタクトを取ることができます。

 

西尾 米国内部の多様性も向こうでしか実感できないかな。教授には白人が多いのに、レストランなどで働いている人にはラテン系が多い、というような、米国内部でのヒエラルキーを肌で実感させられます。

 

 

上田 今バイトでダイニングホールで働いているのですが、やはりラテン系の人たちが多いですね。東大にいるうちは普通に過ごしていると一般的な東大生のイメージから外れた人に会うのが難しかったですが、向こうではむしろ一般化された学生像がない感じが面白いです。

 

西尾 ただ、逆に米国の大学には多様性がない、という見方もできて、人種や国籍が多様でも、言うて育ちが似通っている人が多いんですよ。イェール大学の学生の19%が社会の収入上位1%の家庭から来ているという統計もあり、いやおかしくないか、と。留学生でもその国の超上流階級出身だったりするので、多様かどうかというのは国籍・人種だけでは測れないですよね。

 

——逆に東大にしかない強みにはどのようなものがあると思いますか

 

上田 ぱっと思いつくのは東京にあること、ですかね。僕の大学が米国のど田舎にあるから、というのもあるかもしれませんが、東京には何でもそろっているし、東大生だから、という理由でやれること、面白いことに触れる機会も増えるでしょう。

 

鞍馬 日本で仕事をするなら東大に行くことには大きな利点があると思っていて、例えば将来日本で政治をやりたい、という友達がいたんですが、そういう人なら東大に行った方が有利かもしれません。それから、もし授業外で自分が学びたいことを突き詰めたい、というのであれば東大の方がいいかもしれない。東大にいた時には自主的にゼミをよく開いていたんですが、プリンストンに行ったら、好きな授業は取れるけれども取ったらそれに注力しなければいけない、というような裏表な状態に陥って、自主的な勉強の機会が減ってしまったので。

 

西尾 話がかぶるかもしれませんが、イェールには何でもある分、受動的にならざるを得ない側面もあって、自分が何かを始めようとしてもすでに他の誰かがやってしまっているとか、大学がやってしまっている、ということがあります。米国大の、与えられたものをこなすだけで精一杯になってしまうというのは、良さでもあるし悪さでもあると思う。東大だと日本語という強みもあるので、自分でバリバリ動きたいのであれば、東大に行くべきだと思います。一つ思うのは、米国の大学に行くのであれば、将来をやりたいことを一つに決める必要はないけれど、自分がそのとき興味を持ったことについてはとことん集中できる人でないといけない、ということです。向こうでは取った授業については、単に講義を受けること以上の注力を求められるので。

 

——今自分が行っている大学と東大を比べて、東大のどのようなところを改善すべきだと考えますか

 

 

鞍馬 東大でもシステムさえ整えれば、学生と教授の距離を縮めることが可能だと思います。米国の大学ほどサポートシステムを整えるのは難しいでしょうが、教授とのコンタクトの取りやすさを変えるだけでも大きな違いが生まれるでしょう。

 

上田 これは僕が東大で全科類を合わせて一つのクラスとして扱われるインタークラス[4]に所属していたから思うのかもしれませんが、科類ごとにクラス分けする必要はないのかな、と。今のところクラスにはコミュニティーとしての機能以外に、五月祭や駒場祭をやりやすくするくらいしか役割がないと思うので、いっそ文理を混ぜてしまった方がより多様性があって刺激的なコミュニティーができあがるのではないかと思います。

 

西尾 イェールに行っていて思ったのが、向こうの教授は学生の生活面の面倒も見るという点で、高校の先生に似ているということ。特にイェールは学部の教育を誇りにしているからか、学生の世話と自分の研究を二者択一だと思っていない教授が多いです。皆楽しんで学生の面倒を見ている。日本の大学の先生が他の業務で忙しいという問題もあるとは思うのですが、東大でももっと学生の生活面を気に掛ける教授が増えてもいいのかもしれませんね。

 

 それと同時に、学生の側も自ら勉強するよう意識を変えることも大切だと思います。東大でも真面目に勉強する意志があればいくらでも吸収できるというのは、東大に通っていて感じたことです。システムを変えると同時に、学生は学生で変わらないといけないでしょう。

 

——それでは最後に、東大と米国大の双方に興味がある高校生に、進路選択について一言アドバイスをお願いします

 

西尾 東大と米国大、双方にそれぞれの良さがあり、うまいこと始業の時期がずれているので、併願するのはいいことだと思います。東大受験に向けての勉強も、例えば世界史の論述問題のようなものは米国に行っても必ず役に立ちます。一方で、米国大受験でエッセイを書いて自己分析をすることなどは人生にとっての糧になるでしょう。両者を二者択一だとは考えずに、お互いの受験形式のいいとこ取りをしよう、くらいの意気込みで、受けてもらえたらと思います。

 

上田 両方行ってみたいという気持ちが強くあるのであれば、やった方がいいと思います。両方の受験に失敗することは十二分にあり得るので、受験する際にどちらに集中するかは考えた方がいいですが、思い立ったら行動に移してしまうのがいいでしょう。

 

鞍馬 僕は海外の大学で学ぶということに興味があるのであれば、いつかは必ず行くことをおすすめします。しかしそれは必ずしも学部での正規留学でなくても構わないでしょう。留学の形は一つではないので、自分にできる形で留学すればいいのではないかな、と思います。

 

——本日は本当にありがとうございました

 

 

 取材を通して彼らから伝わってきたのは、自分のやりたいことを追求する積極性と、東大、米国大双方が好きだという気持ちだった。彼らにとっては、学ぶ場所はもはや本質的な問題ではなく、何を自分が学ぶかが大切だということなのだろう。そんな彼らから指摘された東大と米国大の最大の違いは、寮生活の有無とサポート体制の充実度。近年国際化に取り組む東大が改善すべきは、一見国際化とは関係ないところにあるのかもしれない。

 

※次回は、今回取材した3人とは異なり、高校における海外大進学のサポートが必ずしも整ってはいない状況から米国の大学に進学した2人の学生に取材します。次回掲載予定は4月8日です。

 

【蹴られる東大】

本音で語る、僕らが海外を選んだ理由(上) 海の向こうへの挑戦

 


※冒頭の数字をクリックすると本文の該当箇所に戻ります。

[1]米国の大学では基本的に学部での文理の別がなく、大学2年次に自由に専攻を決めることができる。

[2] ユナイテッドワールドカレッジ。国際的なネットワークをもつインターナショナルスクールで、日本では経団連が派遣事業を担っている他、軽井沢に系列校がある。

[3]米国の大学で一般的な、教授が学生と話すために時間を指定して居室を開放する制度。

[4]英語以外の外国語を高校以前に習得していた学生対象のクラス。

【蹴られる東大②】本音で語る、僕らが海外を選んだ理由(下) 海の向こうで見たもの東大新聞オンラインで公開された投稿です。

さよならチムニー

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 本郷キャンパス赤門近くの居酒屋「チムニー本郷店」が2018年3月14日に閉店した。150人収容可能な店舗で大規模な飲み会ができ、2000円程度の予算でも十分お酒や料理を楽しめる手頃な価格が魅力だった。1994年の開店以来、20年以上にわたり東大生や教員に愛された店だ。

 

(取材・福岡龍一郎 撮影・石井達也、横井一隆)

 

 

 

「チムニー先生」の憂鬱

 

 西村義樹教授(人文社会系研究科)は一時期、周囲の大学院生から「チムニー先生」と呼ばれるほど店に通い詰めた常連客。ビールの種類が豊富で、広い店舗の開放的な雰囲気が気に入っていた。

 

チムニーでくつろぐ西村教授(写真は西村教授提供)

 

 自身の本郷での生活を振り返ったとき、チムニーは大切な節目に登場する店だったと西村教授は話す。退職する同僚の送別会などの後、みんなでチムニーに繰り出して2次会をするのが定番だった。「学生の進学や卒業を祝うコンパも大概はチムニーでしたね(笑)」。チムニーで第1回目の打ち上げを行った駒場・本郷キャンパス合同の言語学の研究発表会は12年たった今でも続いている。

 

 さまざまな思い出が詰まっているからこそ、閉店を知ったときは「本当にショックで、これからどうすればよいのか途方に暮れました」と寂しそうに話す。

 

 

高橋教授、チムニーに500万支払ったってよ

 

 

 高橋伸夫教授(経済学研究科)はこれまで自身がチムニーに支払ってきた飲み代を計算し、累計500万円を超えることが分かり仰天したことがある。20年近く毎週のゼミの後、学生とチムニーで飲み会をしてきたためだ。頻繁に通っているうちにゼミの存在をチムニー側にも認識され、店が混んでくると、ゼミの最中に店側から「今日は予約しときますか?」と確認の電話が掛かってきたほどだ。

 

 チムニーを巡るゼミの逸話も数多い。過去にはゼミ生が「居酒屋の経営」という卒業論文でチムニーについて言及した。卒業生への記念品として店で使われているロゴ入りビールジョッキを店に頼み込んで購入して贈呈したこともある。「閉店したら大人数のゼミ生で入れる店をまた一から探さなきゃならないね」。高橋教授も落胆した様子だ。

 

チムニーにて高橋ゼミの学生と。写真はおよそ10年前に撮影されたもの(写真は高橋教授提供)

 

チムニー閉店、東大生は「大人しくなった」

 

 

 チムニー本郷店の芳賀安男店長によると今回の閉店の理由は「オーナー経営者の体調悪化」のため。閉店を1カ月前に知らされるなど店側からしても急な出来事だったという。また近年は客数も過去に比べると減少し「大規模な店舗を維持するのが難しくなっていた」ことも事実だ。

 

 芳賀店長は12年前からチムニーの厨房で働き始め、2年前から店長に。長年、飲みに訪れる東大生を観察して思うのは「最近の東大生は昔と比べて大人しくなりましたね」。大酒を飲んで酔っぱらい、馬鹿騒ぎをする学生が減った印象だ。「それも時代の流れなのでしょう」

 

 それでも、適量のお酒は仲間との関係をより親密なものにすると芳賀店長は力説する。チムニーは閉店してしまったが「すてきなお酒とともに、学生生活をぜひ満喫してくださいね。今までチムニーをご愛顧いただき、本当にありがとうございました」。

 

2017年4月5日12:50【記事訂正】写真のキャプションに提供元を追加しました。

 


この記事は2018年4月3日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナル記事を掲載しています。

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東大今昔物語:1963年1月16日発行号より 自ら開塾する東大生たち
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【東大今昔物語】自ら開塾する東大生たち

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1963年1月16日発行号の紙面

 

 

 4月は大学の新歓期。新入生に食事をごちそうしてサークルや部活に勧誘するこの時期は、上級生の出費がかさむ。貯金を泣く泣く切り崩す人もいるだろう。

 

  高時給の教育系アルバイトで稼ぐ東大生は多いが、塾バイトのもうけ具合は昔から好調だったようだ。1963年1月16日発行の紙面には『灰色の季節に稼ぐ東大生進学塾は花ざかり』という見出しが躍る。塾講師として雇われるだけでなく、「自分の理想を生かした塾をやりたい」などと自ら塾を開く東大生もいたようだ。東大生が指導する学習塾は62年4月から63年1月までで少なくとも20誕生し、開塾から半年で200人以上の生徒が集まった例も。大学生としての経験を生かし生徒に「将来に役立つ本物の実力を体得させる」といった指導方針を掲げる塾もあった。

 

 指導方針を体系化して塾を開く際の、受験や大学での学びを通して得たものを伝えたいという思いは、塾や家庭教師バイトにも通ずるものだろう。大学時代の貴重な時間を使ってバイトをするなら、ひたすらバイト三昧の「バ畜」とならず仕事にやりがいを見出したいものだ。

 


この記事は2018年4月3日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナル記事を掲載しています。

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お悩み解決 東大卒の恋愛専門家から恋に煩う東大生へ 赤門恋愛相談室

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 東京大学新聞では昨年、クリスマス前の時期に合わせて東大生の恋愛相談記事掲載した。この記事の反響を受けてこの度、新コーナー「赤門恋愛相談室」がスタート。前回の記事と同様、東大生からの恋愛相談に対し、医学部健康科学・看護学科(当時)卒で「恋愛結婚学研究所」所長を務め、女性の恋愛・婚活を支援するサイト「愛カツ」を運営する新上幸二さんが答えていく。

 

ーーとにかく出会いがない。授業では接点がないし、部活では男ばかり、バイト先も男ばかり。どこで女性と出会えばいいのか、何も分からないです(文Ⅰ・2年、男性)

 

 男性が大多数を占める東大において女性との出会いが少ないのは分かります。でも、それなら女性がいる環境に自ら身を置く努力をしてみましょう。「出会いがない」は多くの人が抱える悩みですが、正直これは言い訳にすぎないのではないでしょうか。

 

 大学生ならば、女性のいるバイトやサークルを探せば良いし、仲の良い友達に紹介してもらうのもありです。恋愛上手になるには、友達を多く作ることも意外と重要です。

 

ーー私と恋人は同学年で、今後私は大学院に進学し、彼は就職しておそらく最初の数年は地方で勤務する予定です。今は週に何度も会うことができていますが、今後今のような仲の良い関係を続けられるのか不安です。会いたい時に会えないとどれだけ苦しい思いをするのかが分かりません(法・3年、女性)

 

 遠距離恋愛を続けるには、2人のルールを明確に決めておくことが大切。1カ月に1回会う、などと定めて、定期的に直接相手に会うことが大事です。

 

 ただ、遠距離恋愛を続けるのはかなり難しい。できるなら彼がいないときの楽しみ方を見つけ、彼に依存し過ぎないようにしましょう。もちろん人生設計を相談しながら、遠距離恋愛の期間を短くする努力もした方が良いですね。

 

ーー高校の部活で知り合ったある女性が好きで忘れられません。もうほとんど会うこともなく相手は彼氏持なので諦めた方がいいとは思っているのですが……(理・4年、男性)

 

 採れる方法は二つ。すっぱり諦めて次の女性を探すか、駄目元でアピールしてみるかです。後者の場合うまくいく可能性ははっきり言って限りなく低いですが、駄目だと自覚することも経験です。何も、女性は世界に一人しかいないわけではありません。

 

 次の異性を見つける気持ちが起こらない原因は、もしかすると「付き合う相手の全てを好きでなければいけない」と考えているからでは。最初はそこまで好きではなくとも、一緒にいるうちに相手を好きになることもあります。恋愛は経験を積まないとうまくなりません。もっと気楽に恋愛を楽しんでほしいです。(談)

 本企画は東大生の恋愛に関する悩みに対し、東大卒の恋愛専門家の新上幸二さんが相談に乗る不定期連載です。

***

新上 幸二(しんじょう こうじ)さん(株式会社TOBE取締役)

02年医学部健康科学・看護学科(当時)卒。IBMビジネスコンサルティングサービスなどを経て、16年より現職。株式会社TOBE(http://tobe.tokyo/)常務取締役。ハワイ最大級の結婚相談所「マッチメイキング・ハワイ」(https://mhawaii.net/)社長。「愛カツ電話・メール恋愛相談」(https://soudan.aikatu.jp/)にて恋愛相談受け付け中。

 

 


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【蹴られる東大③】学生目線で比べる東大と米国トップ大

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 東大の国際的競争力が低下している。海外から優秀な留学生を確保できないだけではない。すでに日本からの頭脳流出も始まっているのだ。東大と海外のトップ大学、その双方に合格した上で海外大を選んだ学生たちに迫る特集「蹴られる東大」。3回目の今回は、あまり海外大進学の予備知識がない状態から米国大受験に挑戦した2人に話を聞いた。

 

(取材・高橋祐貴)

 

(本文中に付されている数字をクリックすると注に飛び、注の冒頭の数字をクリックすると本文の該当箇所に戻ります)

 

想像もしなかったことを学べる

ボードイン大学 八木悠斗さん

 

(写真は八木さん提供)

 

 1人目に話を聞いたのは、兵庫の私立甲陽学院高校から東大文Ⅱを経て、米国・メーン州の名門リベラルアーツカレッジであるボードイン大学に進学した八木悠斗さん。リベラルアーツカレッジとは、米国では一般的な、少人数での柔軟な教育を売りにした、学際教育を重視する小規模大学のことだ。ボードイン大学の学生数は学部全体で1,800人ほどという小規模さ。日米双方の大学生活を経験した八木さんに、米国の大学生活や日米の大学比較について語ってもらった。

 

違うゴールに挑戦してみようと思った

 

——どうして海外大受験を決意したのですか

 

 高校の二つ上の先輩に、プリンストン大学に進学した方がいて、その人の話を聞いて日本とは違う環境に身を置いて寮で暮らしながら学生生活を送ることに魅力を感じ、米国の大学を目指し始めました。それまでは目指せる最高の場所は東大だと思っていましたが、海外大という違うゴールに挑戦してみようと高1の夏頃に漠然と考え始め、高2の春に決心しました。

 

——どのようにして海外大受験を進めましたか

 

 受験の際にアピールできる課外活動として、ディベートや言語学オリンピックへの参加を行っていました。海外大受験を決意した段階で、海外大受験塾のアドバイザーに自分の受賞歴や成績などを伝え、校内での活動実績や、米国大学受験用のテストの成績が足りないと指摘されたので、生徒会の役員を務めたりSAT[1]の勉強に力を入れたりしました。

 

 SATは、Subject Testの数学、物理は日本のセンター試験レベルなので、模試を数回分演習しただけでした。SATの理系科目は日本の高校生には簡単だと言われています。英語のリーディング、ライティングは速読力、ボキャブラリーが必要なので、帰国子女でない私は、単語をひたすら覚え、練習問題をかなりの量こなしました。

 

 母校では2人目の海外大進学者だったので、高校のサポート体制が整っているわけではありませんでしたが、どの先生も応援してくださり、推薦状執筆などに対する協力など、必要な支援は頼めば出来る限りのことをやってくれました。

 

——東大との併願をしますが、ここにはどのような経緯があったのでしょうか

 

 将来日本に帰ってきて働く可能性がある以上、東大に一時期でも通っていれば人脈ができ、就職に有利になるという想定があったのが併願の大きな理由です。米国大の出願が1月1日で全て終わり、そこからの2カ月を東大受験の対策に充てました。米国大受験で要求される、定期テストの成績や英語力を付けるためにした勉強を、最後に東大の入試で生かす訓練をすれば良かったので、ゼロから2カ月で受験したわけではありませんが、それでもやっている当時は大変で、2カ月必死に勉強して東大に合格できたというのが正直なところです。

 

 

 入ってみたら結果的に東大を大好きになりました。東大にいた1学期の間で、ファンだった野矢茂樹先生(総合文化研究科教授)に初年次ゼミナール(初ゼミ)や記号論理学の授業で教わったり、初年次活動センターを運営する細野正人先生と協力してイベントを企画したり、障害者支援の研究を行っている近藤武夫先生(先端科学技術研究センター准教授)に突撃して先生が企画するサマーキャンプの手伝いをさせてもらったりしました。半年というタイムリミットが定まっていたので、東大でやれることは全てやろう、と意気込んで積極的に行動しましたね。

 

深夜テンションで絆深まる米国の大学生活

 

——そして、9月には東大を離れ、米国メーン州のボードイン大学に進学します。実際に米国の大学で過ごしてみて、東大との違いはどのようなところにあると感じましたか

 

 寮生活がもたらす違いは大きいと思います。東大とボードイン大学の一番の違いは、ボードイン大学では対人関係について深く学ばせてもらえることでしょう。僕は人種的にも多様な4人部屋での生活で、他人のことを気にし過ぎても気にしなさ過ぎても共同生活は送れないということを実感させられました。

 

 夜中に第2次世界大戦についての米国のドキュメンタリービデオをソファに座って見ながら、「こうした部分は嘘なんじゃないか」「事実はそうだが描かれ方が誇張されている」というような会話を米国人と交わすのは、こちらの大学に来なければできなかった体験でしょう。深夜独特のテンションだからこそ普段は言えないようなことも気を使わずに話せて、友人との絆が深まりますね。

 

——米国の大学は授業が大変だという印象がありますが、実際に受けてみた感触としてはいかがでしょう

 

 授業はとても楽しいです。リベラルアーツカレッジだというのもあり、少し専門的な授業になると基本的に15人以下の少人数、ディスカッション形式で進みます。課題図書のチャプター数個を事前に読んで授業内でその内容について議論し、2週間に1回は4〜5ページの小論文を書く、というスタイルが基本で、課題をこなしているうちに自然と授業の内容が身に付いている実感があります。授業はどれも基本的に週に2回行われます。今学期は四つの授業を取ったのですが、取った心理の授業が東大で受けたものと同じレベルだったこともあり、特に大変だという印象はありませんでした。ですが他に五つ授業を取っている人もおり、授業の取り方によって大変さはだいぶ違うようです。

 

 ただ、僕は未経験だった水球のチームに入ったり、野外活動クラブで引率ができるリーダーになるための研修を受けたりと積極的に課外活動を行っていたので、そういう点で忙しくて授業との両立が大変だったというのはあります。

 

試合前夜、水球のチームメイトとの夕食(写真は八木さん提供)

 

——やはり大学において課外活動は活発なのでしょうか

 

 そうですね。結構みんな課外活動をしている印象があります。キャンパスが本当に田舎にありますし、寮生活でずっと大学にいて他にやることもないので課外活動をする必要があるというのもあるでしょう。一番人気なのが僕も入っている野外活動クラブで、全学生の1/3〜1/2が加入しています。これはもちろん全員がフルで活動しているわけではありません。僕もなろうとしている「リーダー」という役職の人がトレッキングツアーなどを企画し、それに他のメンバーが参加するという形で活動していて、自然に囲まれた立地ならではのクラブと言えます。

 

野外活動クラブのメンバーと(写真は八木さん提供)

 

——米国の大学というと、学費が著しく高いことで有名ですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか

 

 金銭的負担は確かに進学の妨げになり得ると考えます。僕もとある財団から奨学金を受けられることが決まらなかったら東大に残っていたでしょう。この奨学金の受給が決まったのが4月で、それまで大学には受かっても行けるかどうか分からない状態でした。こうした米国大進学の先の見通せなさも、僕が東大を受験した理由です。

 

 ただ、こうした学費の高さが学生の勉学へのモチベーションに結びついている側面はあって、こちらの大学では学生が勉強したくて大学に来ているという認識は学生の間で一致しています。東大だとなぜ大学に来ているんだろう、という感じの人もいるじゃないですか。米国では皆大学のキャンパス内に住んでいるというのもあって、授業に遅刻する人はまず見かけませんね。

 

多様性を広げることが最終目標

 

——東大と米国の大学を比べた時、それぞれの大学にしかない強みとはどのようなところにあると思いますか

 

 米国の大学について言うと、これは米国の大学の強みというよりリベラルアーツカレッジの強みなのかもしれませんが、教授との距離の近さが挙げられるでしょう。昼食を誘ったら気軽に応じてくれて、学問の世界から一度外に出て働いたあとにもう一度大学に戻ってきた経緯なんかを話してくれる。これは大変刺激的です。授業でもアウトプット中心の形式の中、頻繁にフィードバックを行ってくれます。東大だと初ゼミの小論文なども提出しただけではフィードバックが返ってこないですよね。ああ、野矢先生の小論文へのコメントを読みたかった(笑)。

 

 逆に小規模リベラルアーツカレッジの弱みとしては、学部だけなので院生と会う機会がなかったり、専門性が少し深くなると対応できる先生がいなかったりすることがあります。これは裏返せば東大の総合大学としての強みです。すなわち学生、教員の人数が多く、様々な研究分野の専門家がいる。ただし東大の場合は数多くいる学生の大半が私立高校から来た男子なので、価値観の似ている人が集まってしまっているのが問題だと感じます。その点米国の大学は人数が少なくとも、多様な考えを持ち人種的にもさまざまな学生が集まっています。

 

 先ほど東大は多様性を欠いていると言いましたが、それは学部レベルの話で、研究に従事している院生のレベルになると、多くの留学生も擁していて一気に多様になります。初年次活動センターで「外国語でしゃべランチ」[2]などに関わっていて、さまざまな国から来た多様な学生と出会えました。その他では、これはある意味当然のことですが、日本語の資料は東大の方が圧倒的に充実しているので、日本について研究したい場合は東大の方が優れています。

 

——どのような人が海外大に、どのような人が東大に向いているでしょうか

 

 僕はそれなりの英語力があれば、誰でも海外に行ってしまっていいのではないかと考えています。向き不向きが特にあるとは思いません。学費も大学からや日本の財団からの奨学金が充実しているので問題にならないでしょう。学びながら働きたいというのであれば、東京という世界有数の都市にある東大にいる方がいいとは思いますが、そうでなければ海外へ出てしまっても問題はないと言えます。

 

——ボードイン大と比べたときに見えてくる、東大の改善すべき点にはどのようなものがあるでしょうか

 

 学生にとっての刺激を強めるためにも、多様性を広げることが、今の東大が目指すべき最終目的ではないでしょうか。東大だと日本という立地もあって、文系の場合は留学生の興味関心も日本やアジア研究に偏っている。そうした点には改善の余地があると思います。欲を言えばキャンパスのごく近くに大規模な寮も設立してほしい。そうすれば女子学生の数なんか、絶対増えるじゃないですか。でもそれが東大の立地や予算的にできるかどうかは別問題ですよね。僕は、今の東大は費用対効果の面で見れば、米国の大学よりも優れているんじゃないかと思っています。予算の規模の小ささに対してランキングなどでの実績が高いと感じるからです。

 

 日本から優秀な学生が抜けることは東大にとって問題ではないでしょう。日本人が多少減ることは、大学の多様性を広げることにあまり関係しないからです。本当に問題なのは、海外から優秀な学生を確保できないことです。多様性を最終目標に据えると、キャンパスの英語化、国際化は避け得ない手段ですし、そのために留学生向けに米国と同様の出願制度を整え、もっと海外から教授を招聘すべきだと思います。特に、世界的にも著名な教授を一人確保できれば、それだけで留学生の集めやすさは大きく変わってくるでしょう。

 

——最後に、東大と海外大の双方に興味をもつ高校生にメッセージをお願いします

 

(写真は八木さん提供)

 

 もし両方受けるかどうかを迷っているのであれば、絶対に併願を勧めます。東大で半年過ごすにしろ4年過ごすにしろ、受験勉強を2カ月余分に頑張れば、素晴らしい教員や優秀な友人と出会えるからです。よほどギャップタームに他にやりたいことがなければ、東大に行くことには大きな価値があります。

 

 その上で、海外大には別の良さがあります。僕は東大では、こんなことを学べるんじゃないか、と想像していたことを学べました。それが米国の大学に行くと、全く予期していなかったことを学んだりやったりする機会があります。僕も水球なんて米国に来なかったら絶対やってないですし、価値観のバラバラな米国人の集団をまとめようとする中で、グループマネジメントの大変さを実感しながら、その方法を学べています。オフィスアワーで論理学の教授とゲーデルの不完全性定理の話をしていたら、プログラムにおける停止性問題というコンピューターサイエンスの話につながる、なんていう予期せぬ学びは日常茶飯事です。難しくも面白い経験ができるのが、米国の大学へ行くことの意義だと思います。

 

 

知らないからこそ頑張れた

プリンストン大学 由里詩奈さん

 

 

 2人目は京都の私立洛南高校を卒業後、文Ⅰを経て米国ニュージャージー州のプリンストン大学に渡った由里詩奈さん。海外滞在経験は最高5日程度、高校でも近年の海外大進学者はゼロという環境から米国大を目指したという由里さんに、受験時の苦労やプリンストン大・東大のそれぞれの良さについて語ってもらった。

 

不純なきっかけ、純粋な挑戦

 

——米国の大学を目指し始めたきっかけを教えてください

 

 高1の時に、ハーバード大学に受かれば3000万円を奨学金として支給する、という東進ハイスクールの全国統一高校生テスト成績上位者向けプログラムの候補者に選ばれました。その時は東大に行こうとしか思っていなかったので、あまり奨学金のことは気にしていなかったのですが、高2になってからもその奨学金を受けるための面接などが進んでおり、意識のどこかに米国大のことがあったように思います。受かればお金は支給してもらえる、という少々チープな動機と、米国大に行けば世界が広がる、という言葉に後押しされて、高2の3月に米国大受験を決意しました。文系で中高一貫校に通っていたため、高2までに数学の範囲などは一通り終わっており、少し勉強面で余裕があったことも米国大受験に踏み切った理由です。

 

——受験の対策はどのようにして進めたのでしょうか

 

 SATやTOEFLといったテスト対策は全て自力でやりました。エッセーだけは海外大進学専門塾のRoute Hに見てもらいましたが、私は高3から米国大受験を始めたので入塾できず、メールでのやり取りで添削してもらっていました。時々対面でも見てもらっていましたが、校舎が東京にしかなかったため行くだけでも一苦労でした。

 

 米国大受験で要求される課外活動の実績は、ピアノをずっと習い事で続けていたのと、小学生の頃からの趣味だった裁判傍聴、それから挫折しましたが司法試験突破を目指して伊藤塾に通った経験などがありました。高3に入って米国大受験を決意して、改めて自分の課外活動実績を見返してみると、以前に米国の大学に受かった先輩方の実績と比べて受賞歴の数が足りなかったので焦りました。とりあえず高3の夏休みにさまざまなエッセーコンテストに応募し、Route Hが協賛している韓国開催の日中韓リーダーシップサミットに参加したり、京都でやっているあまりメジャーではない哲学合宿に参加したりしました。他にもボランティアで福祉施設の夏祭りのスーパーボールすくいのブースを切り盛りするなど、勉強しなければいけないはずの高3の夏休みにずいぶんと忙しくしましたね。

 

 こうした活動は結果的にエッセーを書くにあたって大いに役に立ちました。エッセーは何個も書きましたが、その内一つはピアノについてのもので、急ぐことだけが大事ではないということをピアノを通じて学び自分の人格が形成された、という内容になりました。もう一つ、ボランティアで手伝ったスーパーボールすくいについて書いたものもあり、こちらは福祉施設のイベントで耳の聞こえない子供がいたのですが、忙しくてそのことに気付けず、最後になってようやく気付いて本当のコミュニケーションが取れた、といった内容になりました。

 

——高校からは米国大受験に対してどの程度のサポートを受けることができましたか

 

 

 洛南からはここ最近海外大への進学者が出ておらず、30年くらい前に1人出たらしいという伝説みたいな言い伝えが残っているだけだったので、高校側からの積極的なサポートはありませんでした。しかし、こちらから要請すれば、どんどん応えてくれる先生方ばかりで、例えばSATのエッセーなんかも、SATのことを全く知らないネーティブの先生に説明をした上で添削を頼んだらフィードバックをくれたり、推薦状も学校の先生に事細かにお願いしたらその通りに書いてくれたりしました。学校の誰も前提知識を持っていない状態だったので、Route Hで推薦状などの書き方を聞いてこちらから積極的に先生方にアプローチし、学校側も臨機応変にそれに応える、という関係でしたね。

 

———米国大受験でつらかったのはどのような点でしょう

 

 日本の大学だったら模試などで合格可能性が把握できるじゃないですか。その点米国大は評価されるのが学力だけでなく、SATの点数がいくら高くても落ちるときは落ちるので精神的に不安が募るというのと、勉強以外にやることが多く、あれもこれもこなさなければならなかったのがしんどかったです。私は日米併願をしていて、そのどちらもものすごく行きたい大学だったので、模試の判定を見て東大なら行けるだろう、と思えていたことがこうした不安を振り払うのに非常に有効でした。

 

悩みに悩んだ進路

 

——米国の大学を受験する、となるとどうしても米国大の対策が中心になるかと思うのですが、その中でどうして東大を併願したのですか

 

 

 東大は中学生の頃から憧れていた大学だったので、米国大を受けることになっても併願するつもりではありました。そもそも親が全く米国の大学になじみがなく、ハーバードだけはかろうじて東大よりも知名度があるかな、くらいの認識で、それ以外の大学に行くくらいなら東大に行け、という感じだったので、東大受験を取り下げることはできない状態でした。併願をしてどちらも中途半端になり東大に落ちるくらいなら東大に絞ってほしいと言われましたが、私自身としては一度米国大受験の準備を始めると引き下がれなくなり、結果として併願にまでこぎつけました。

 

 ハーバードなど5校に出願しましたが、結果的に合格通知が来たのは、ハーバードとエッセーの内容が似ていて出願に手間がかからないというだけの理由で出願したプリンストンを含め2校でした。この結果を見た時は本当に悩み、4月に東大に入学した際には絶対に東大に残る、と決めていました。私は将来日本で政治家になりたくて、それなら東大に残った方が道が多いと考えたからです。

 

 しかし、プリンストン大学出身の東大の先生にお話を聞きに行った際に、どこか他の業界で専門性を身につけてから政治の道に進むという方法もある、ということを指摘されて、自分がファーストキャリアとして何をしたいのかがよく分からなくなりました。最終的に、やりたいことが分からないのなら、東大と同じく入学後に専攻を決める仕組みでありながら東大の進学選択のように枠も定められておらず、本当に好きなことを専攻できる米国の大学の環境に一度身を置きたい、と思いプリンストンへの進学を決めました。自分自身プリンストンに関しては合格通知を見た時に、地理的な意味ではなく「どこやこれ?」と思ったくらいなので、親も「これなら東大やな」と言って譲りませんでしたが、進学を決意してからはいかにプリンストンが良い大学か、という情報を集め、親を説得しました。

 

——東大での1学期間の生活を経て、東大にどのような印象を持ちましたか

 

 授業はコマ数が多く1コマの時間が105分と長かったので、皆よく頑張っているなあ、と思いました。でも結構寝ている人が多くて、そんなに真面目な人もいないんや、と少し残念な気がしましたね。これは私が1年の1学期しかいなかったから感じるのかもしれませんが、東大の学生は東大をゴールだと捉えていて、はっちゃけてしまう人が割合多いように思いました。ですがこれは東大に限った話ではなく、入学してすぐは、プリンストンでも入学した喜びで勉強していなさそうな人は見かけました。ただしプリンストンの方が勉強が厳しいので、切り替えは早いかな、という印象です。

 

刺激的なプリンストンの生活

 

——続いてプリンストンでの大学生活についてお聞きします。まずは授業についてですが、やはり勉強は大変でしょうか

 

 初めから課題の多い授業を取ったら苦労することが目に見えていたので、リーディングの量が少ない授業を選んだ結果、そこまで大変だという印象は持ちませんでした。1年生にとって必修のWriting Seminarという論文を書く授業で週15ページ程度のリーディングが出ることはありますが、私が取ったその他の授業だと2時間程度のビデオ教材の予習や、8、9問の問題を解く、といった課題のみで、何かを読まされるということはありませんでした。経済と地学の授業は、大教室でのレクチャー授業が週2回と、週1回の15人程度で行う実験やディスカッションの授業で構成されています。Writing SeminarとFreshman Seminar(東大の初年次ゼミナールに当たる)の授業はどちらも15人以下の少人数授業で、インタラクティブ(双方向的)な環境が保証されているのはうれしい点ですね。普通の学生は膨大な数の授業の中から1学期に四つしか取らないのがミソで、これによって思い入れのある授業しか選ばなくなるため、勉強に楽しく集中することができます。授業選びの持つ意味が東大に比べて重くなるため、アドバイザーとして付いてくださる教授と相談しながら、慎重に履修を決めていきました。

 

Prepared pianoについて学んだ音楽の授業の様子(写真は由里さん提供)

 

 リーディングに関しては、ネーティブの学生は課題文献を見たら何が必要で何が不要な情報か見分けることができるようなのですが、私はそこまでできないという点で確かに読むのに時間を取られるというのはあります。でも、要らない情報も混じっているんだ、と思って気楽に読んでいると、そこまでストレスにはなりませんでした。英語論文を書くのも初めての経験でしたが、ライティングセンターというところで丁寧にサポートしてもらえました。

 

——学業面以外のことで、プリンストンの生活で良いなと感じた点や、逆に期待外れだった点があったら教えてください

 

 世界中から人が集まっており、恐ろしいくらい遠い世界の住民と日常的に接することができるのは刺激的です。例えば私が大学で所属しているバンドのとあるドラマーの子は、ある国の元大統領の息子さんなんですが、そうした普通だったら触れ合えないような世界の人たちと一緒に過ごしていると、自分も何にでもなれるのでは、と思えてくるから面白いですよね。

 

 クラブ活動では、大学側がふんだんに金銭を投じて学生団体を支援することに感心しました。前に一度日本人学生会で日本料理を作るイベントを開いたことがあるのですが、その時の費用は大学から支給してもらえました。私の知る限りほとんどのクラブが何らかの援助を大学側から受けており、そうした大学の学生を支援する姿勢には目を見張るものがあります。

 

Princeton University Rock Ensemble の2017 年秋ライブで演奏する由里さん(写真は由里さん提供)

 

 がっかりした点だと、プリンストンでもあまりモチベーションが高くない人がいる、ということがありますが、その数はやはり東大に比べると少ないと感じます。より問題だと感じたのは、就職活動が日本以上に学生の生活をむしばんでいる点でしょうか。日本では最近は変わりつつありますが、やはりまだ東大を出ていれば一流企業に入りやすい、という感じが残っていますよね。米国だと例えプリンストンを出ていても簡単に就職できるわけではないという風潮があり、学生も必死になって就職活動に励みます。初めは私も、頑張らなければ就職できない環境の方がいいのでは、と思っていましたが、頻繁に大学で開催されるジョブフェアに1年生の頃から必死になって参加する学生を見ているうちに、入学直後くらいは東大であまり就職のことを気にせずのんびり過ごせる方がいいのではないか、と思うようになりました。

 

——米国の大学は学費が非常に高いですが、どのように負担されていますか

 

 私、実は他の人の大半が応募している柳井正財団の奨学金などの存在を全く知らなくて、東進から奨学金を出してもらえるハーバード以外の大学に進むことになったら大学に奨学金を出してもらうしかない、というスタンスで受験をしていました。家の収入がそこまで高くないのと、プリンストン合格後にやった、他の合格校が提示してくれた奨学金額を引き合いに出しての大学側との交渉が功を奏し、最終的に自己負担額は年間650万円程度の学費のうちの15%程度に抑えられました。結局ハーバードに受からず東進から奨学金を受けることはできなかったので、プリンストンのような奨学金に恵まれている大学でなかったら受かっても行くことができなかったでしょう。確かに学費は進学の障害になりますが、大学によっては奨学金を出してくれるところもあるということ、今は日本国内の奨学金も充実しているということを踏まえると、米国大受験に挑戦してみる価値はあると思います。

 

東大が改善すべきはサポート体制

 

——ここからは、東大とプリンストンの比較の話に移っていきます。まずプリンストンにあって東大にはない強みとはどのようなものがあるでしょうか

 

 人種のるつぼ的なところが魅力だな、と感じます。ディスカッションに基づいた授業が多いので、そうした場で価値観の違いがあらわになるということ、そしてその価値観の違いが共有される場が用意されているということが、面白いです。やはり米国だとマイノリティーに対する差別があるわけで、そういう話はタブーなのかな、と思っていたのですが、例えばライティングセミナーの授業だと黒人の学生は黒人文化について書くなど積極的に自己主張して、他の学生も気兼ねなくそれに対してフィードバックを返していますね。

 

——逆に東大にしかない強みとは何でしょうか

 

 東京のど真ん中に立地している上に自由時間が多いので、起業にインターンシップ、資格取得など、何にでも挑戦できるのが東大の良さではないでしょうか。自由時間をうまく使えば充実した日々を過ごせると思います。これがプリンストンだと、田舎にあるし寮生活で自由な時間も見つけづらいので、なかなか自分から動くことはできません。

 

 それと、これは日本からの留学生の一部に限った話だとは思いますが、米国の大学に行ってしまうと、言語の違いもあって圧倒されてしまい、どこから手に付けていいのか分からなくなる人もいると思います。やりたいことを自由にやるのであれば東大の方がいい。米国の大学はホンマに「勉強をしに行っている」という感じがします。

 

——東大とプリンストンで、学生の勉強に対するモチベーションに差はありますか

 

 東大だと勉強は、数あるやることのうちの一つですよね。プリンストンだとテスト前に限らず勉強が生活の中心に置かれています。寮生活なのもあって「授業を切る」という概念もありませんし、女子学生が化粧もせずにジャージで授業に出てしまえるような環境で、他に気を使わなくて良い分授業に注力できる感じです。高い学費を払っているという意識があるのと、就職の時に必要になる場合があるGPA(平均評定)を皆気にするというのもあり、学生の勉強に対するモチベーションは高いと感じます。東大にいた時は1時間勉強に集中するだけでも大変だったのですが、プリンストンに行ってからは勉強が当たり前の環境になり、自分でも不思議に思えるほど、何も感じず1日中勉強できるようになりました。

 

大雪の日、キャンパスにて(写真は由里さん提供)

 

——どのような学生が東大に、どのような学生が米国の大学に向いていると思いますか

 

 やりたいことが明確な人は東大に行けばいいのでは、と思います。資格試験が必要な職業を目指している人や、文系で官公庁に行きたいと決まっている人なら東大でしょう。日本の資格のことは日本でしか学べませんし、東大なら官公庁に卒業生が多くいて相談などもしやすいからです。それ以外の分野の場合も、東大の方が将来の道筋を描きやすいのではないでしょうか。素朴な人が多く集まっていて、どんな人でも生きていけるのが東大という場所だと思います。

 

 プリンストンももちろん多様な学生がいられる大学ですが、やはり少し競争的な雰囲気はありますね。リベラルアーツを標榜する米国の大学に行くと、幅広い分野を学ぶべきとするリベラルアーツの思想に基づいて4年の間ずっと多様な分野に触れることになり選択肢が大きく広がるので、将来について迷うことも増えると思います。米国大に向いているのは、4年後の自分がどうなっているのか全く分からない、その分からなさにワクワクを感じられる人なのではないでしょうか。

 

——プリンストン大学と比べた時に、東大が改善すべき点は何だと思いますか

 

 学生のサポート体制だと思います。東大にも初年次ゼミナールの論文執筆をサポートしてくれる駒場ラーニングコモンズなどさまざまな支援体制があるにはありますが、あまり学生に宣伝されておらず利用している人も少ないですよね。プリンストンだと本当に何重にもサポート体制が用意されていて、学生もそれを積極的に利用します。ライティングセンターで1対1で論文執筆の指導をしてもらえたり、経済などの毎年必ず開講されているメジャーな授業だと無料で授業内容に関する個別のチュータリングが受けられたりするのはプリンストンの優れている点です。専門家によるカウンセリングや学生のピアサポーターによる支援など、メンタルケアの体制も何重にも用意されています。

 

学校のオリエンテーションでボランティアに行ったフィラデルフィア(写真は由里さん提供)

 

 他には、大人数の授業が多いということ、1学期に取らなければならない授業のコマ数が多過ぎて各々の授業を深く学べないこと、授業時間が長いことが東大の問題点として挙げられるでしょう。なぜ105分の授業を2回に分けないのでしょうか。50分授業を週2回行った方が授業内容が身につくし、それが難しくともせめて50分の授業二つの間に10分休憩を挟む形式にした方が集中力も続くと思います。プリンストンの場合は基本的に①50分×週3コマ、②80分×週2コマのいずれかで授業が展開されています。

 

 でも逆にクラスの制度は米国の大学にも取り入れてほしいです。同じ授業を取るメンバーで仲を深め合えるし、授業で互いにサポートし合えるのは良い制度ではないでしょうか。東大でクラスごとに配置されているシケ対やシケプリといった制度[3]も、始めは「勉強はしないけど試験で点数は取りたい」という考えに基づいている気がして戸惑いましたが、今思うと課外活動に全力を注ぎたい人がシケプリを使って単位を確保することができる点で、あれは東大生の持つ自由に貢献するシステムだったんだなぁと思います。

 

——それでは最後に、東大と海外のトップ大学双方に興味を持つ学生に、進路選択についてのアドバイスをお願いします

 

 受かってから決めるという贅沢をすればいいのではと思います。私は東大での生活が楽し過ぎて、最終進学先を決めるときは「こんなことなら日米併願などしなければ良かった」と思ったくらい悩みに悩んだのですが、併願をして両方受かれば、どちらに転んでも悪いことにはならない選択肢が手に入るのは確かです。東大に入って、東大が本当に肌に合うと思ったら東大に残るという選択肢もありますし、ちょっとチャレンジしてみようと思えば海外に出てみれば良いわけです。

 

 日米併願は楽なことではないですが、私は米国大を受けるならむしろ日米併願をすることで精神的には楽になると思います。東大は判定が出てある程度合格の可能性がつかめるため、米国大の応募書類を出すときに不安になっても、どうせ東大は受験するのだからとりあえず出願してしまおう、と勇気を持てます。逆に東大を受験するときは、あれだけたくさんの米国大に出願したのだからどこかには引っ掛かっているだろう、と思えて必要以上に緊張することなく試験本番に臨むことができます。

 

 私は、もしどれだけ米国の大学に受かることが難しいか分かっていたら高3からチャレンジしようとは思わなかったでしょう。受験は情報戦の面が強いとは思いますが、初めから情報を入れ過ぎて怖がってしまうのは逆効果だと思います。知らないからこそできるチャレンジがある、というのは大切なことではないでしょうか。私は米国大受験を始めた動機こそハーバードに行けたらお金がもらえるな、というある種不純なものでしたが、エッセーを書くなどしているうちに、「自分が米国に行きたいのはこういう理由からなんだ」と思えた、不純な動機が純粋な動機に変わる瞬間がありました。逆にやっているうちに自分には米国大が向いていない、と思う人もいるでしょう。始めてみたら分かること、というのはたくさんあると思うので、少しでも行きたい気持ちがあるのであれば米国大受験にチャレンジしてみるのがいいと思います。

 

 ちなみに最近、プリンストン大学の日本での知名度を上げるべく、日本人留学生の仲間と共にブログを立ち上げました。ぜひ見ていただけるとうれしいです!

 

由里さんも関わっているプリンストン大学のブログはこちら→https://princetonjapan.blog/

 

 

※次回は日本人の海外大進学支援を行っている学生団体の理事長に話を聞きます。次回掲載予定は4月18日です。

 

【蹴られる東大】

本音で語る、僕らが海外を選んだ理由(上) 海の向こうへの挑戦

本音で語る、僕らが海外を選んだ理由(下) 海の向こうで見たもの


注 

※冒頭の数字をクリックすると本文の該当箇所に戻ります

[1] 米国でのセンター試験にあたる共通テスト。民間の業者によって運営され、米国外の生徒の場合1年に6回受験可能。国語(英語)と算数のリテラシーを問うSATと、個別の教科の知識を問うSAT Subject Testから成る。Subject Testは2~3教科を受験する。

[2] 駒場Ⅰキャンパスの初年次活動センターで昼休みに行われている、外国語で会話をしながら昼食を取る対談型イベントのこと。「スペイン語でしゃべランチ」「ロシア語でしゃべランチ」などがある。

[3] 東大のクラス単位で学生が自主的に行っている試験対策制度で、授業ごとに試験対策係(シケ対)が設置され、シケ対が作ったテスト対策用のプリント(シケプリ)を見ることで他の学生が楽に試験対策を行えるようにするもの。

【蹴られる東大③】学生目線で比べる東大と米国トップ大東大新聞オンラインで公開された投稿です。

「東大生よ、神宮に集え!」4月14日六大学野球開幕戦で、硬式野球部・応援部主催の学生無料招待試合開催

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(硬式野球の応援風景・写真は応援部提供)

 

 今年も東京六大学野球の季節がやって来た。この春卒業した宮台康平投手がプロ入りし、注目が集まる硬式野球部。4月14日に行われる東京六大学野球の春季リーグ開幕戦で、慶應義塾大学と対戦予定だ。

 

 硬式野球部・応援部は14日の開幕戦で、東大生を無料で招待するイベントを実施する。さらに、クラスで応援に参加すると景品や写真撮影、五月祭でのクラス出店宣伝など豪華特典もついてくる。14日は神宮球場で、硬式野球部を応援しよう!

 

「どうして東大生が来ないのか」

イベント主催の応援部主将・酒井泰斗さんの話

 

――このイベントを企画・主催したきっかけは

 他大学に比べると、試合観戦に来る東大生の数はさほど多くありません。東大生が、ほかならぬ「東京大学の学生」であることを実感することができるようなイベントがないことに問題意識を持っていました。東大生が同じ大学の仲間を応援し、隣の東大生と声を出して喜びあう、一体感を感じられる場所があればどんなに幸せなことだろうかと思ったのがきっかけです。そして応援部として何かできることはないかと考えたとき、運動会の試合を東大生が集まるコミュニティとして発展させていけるのではないかと思いつきました。

 

――応援部が今後目指していきたいことは

 そもそも観戦に来る東大生が多くないのは、東大に対する帰属意識が薄いからかなと思っています。優秀な学生ほど、自分で道を開いてきたという感覚が強い。あまり東大生であることを大っぴらにはしたがらないですよね。それも決して悪いことではないと思います。ただ同時に東大生同士のつながりが深まり、東大全体としてのコミュニティができれば、東大内にとどまらず、東大から社会に、よりさまざまなものを発信していけるのではないかと思います。今回の企画にとどまらず、東大生の一体感を作っていけるよさまざまな働きかけを行っていきたいです。

 

 一体感を作り出すためには、東大生をまとめるシンボルとなるものが必要です。その一つに、応援歌や東大運動会の試合はなれる魅力があると思います!

 

 運動会の試合観戦は本当に楽しく、刺激的なものが多いです。ぜひ14日は明治神宮球場で開幕戦を観戦し、応援の楽しさ、そして東大生の一体感を味わってみてください!

 

 

<開催概要>

日時:2018年4月14日(土)10:15開会式開始

場所:明治神宮野球場三塁側11番ゲート(東京メトロ銀座線外苑前駅より徒歩5分)

参加方法:学生証を11番ゲート入口で見せてください。

参加費:学生無料

 

<クラス参加特典>

  • 豪華景品:抽選でアマゾンギフトカード1万円分をはじめとする豪華景品をゲット
  • 記念写真撮影:クラス写真を応援部員が撮影。フェイスシールも無料で配布
  • 五月祭の宣伝:フォロワー5000人の応援部ツイッターにて、来てくれたクラス限定で出店の宣伝を実施

「東大生よ、神宮に集え!」4月14日六大学野球開幕戦で、硬式野球部・応援部主催の学生無料招待試合開催東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【2018年3月アクセスランキング】3/10実施の合格発表に高い関心

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(左から時計回りに)合格者番号掲示当日の受験生ら、CHOCO=CROWのメンバー、受験生応援連載のロゴ

 

 東大新聞オンラインで3月に公開した記事の3月中のアクセスランキングを調べたところ、1位は3月10日に行われた2018年度入学試験(前期日程・外国学校卒業学生特別選考)の合格発表に関するニュース記事だった。今回は前期日程で3014人、外国学校卒業学生特別選考で40人が合格。同日の記者会見で東大は、今回から復活した理Ⅲ志望者を対象とする面接について「医療者としての適性を持つ学生を獲得できたと考えているが、効果については追跡調査をする必要がある」とコメント。記事ではその他にも復活後2年目を迎えた合格者番号掲示を見に来た受験生らの様子を、多くの写真を交えて速報した。東大入試の最後を飾る合格発表が、例年通り大きな注目を集めたようだ。

 

 今回のアクセスランキングでは受験生向けの記事が六つランクインした。「東大に実家から通えるのはどこまで?」と題して遠方から東大に通う経験を持つ学生の体験談を紹介する記事や、東大で履修できる外国語を紹介する記事も多く読まれていた。

 

 受験以外の話題では、2位に英教育専門誌『タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)』発表の最新版アジア大学ランキングの記事がランクイン。大学ランキングの記事は、毎回多くのアクセス数を記録している。東大は直近3年で低迷が続き、今回は13年の発表開始以来最低の8位。記事では、5項目の評価軸のうち東大の強みとされていた「研究」「教育」で点数が落ちたことを説明している。

 

 7位の記事では、東大の女子学生によるアイドルコピーダンスユニット「東大CHOCO=CROW」が出場した、女子大生アイドル日本一を決定する大会の模様を数多くの写真と共に伝えた。東大CHOCO=CROWは17年12月に行われた関東予選を2位の成績で突破し、今回の決勝戦に挑んだ。ダンスのミスなど反省点が多かった関東予選後、倍近くの練習量を重ねてきたという東大CHOCO=CROW。アイドルコピーダンスに取り組みつつ勉強にも励むメンバーやプロデューサーが、活動にどのような思いを込めているのかを重点的に取材した。

 

【2018年3月アクセスランキング】

1   18年度前期日程試験3014人が合格 理科で最低点大幅低下、文科は昨年度並み

2   THEアジア大学ランキング 東大は過去最低の8位 研究、教育で評価落とす

3   【受験生応援2018】東大に実家から通えるのはどこまで?

4   【受験生応援2018】東大生の実態に迫る! 読者の疑問に答えます

5   【受験生応援2018】最も仲の良いクラス? 知られざるインタークラスの実態

6   【受験生応援2018】現役東大生が語るフランス語学習

7   東大CHOCO=CROW、最後のUNIDOLで決勝戦出場 ラストステージで見せた「攻めの姿勢」

8   【受験生応援2018】初修外国語を決めよう!各言語の特徴・クラスを徹底比較

9   【受験生応援2018】現役東大生が語る中国語学習

10   「当たり前」の目標並ぶSDGs 朝日新聞が大々的に推進するわけとは

※当該期間に公開した記事のみを集計

 

過去のランキング

【2018年2月アクセスランキング】入試関連記事に関心

【2018年1月アクセスランキング】近藤選手の箱根欠場に注目

【2017年アクセスランキング】まつりさんの記事が今年の年間1位に

【2017年12月アクセスランキング】東大生のSNS事情に高い関心

【2017年11月アクセスランキング】東大生の「銀行志向」に関心

【2017年10月アクセスランキング】「ボカロ」関連の記事が人気

【2017年9月アクセスランキング】哲学者の勉強論に高い関心

【2017年8月アクセスランキング】「駒場図書館冷房停止」が1位

【2017年7月アクセスランキング】宮台教授のメッセージに注目

【2017年6月アクセスランキング】「N高」に注目 論文不正問題に依然高い関心

【2017年5月アクセスランキング】高橋まつりさん関連記事に大きな注目

【2017年4月アクセスランキング】今年も新入生アンケートに高い関心

【2017年3月アクセスランキング】トップは東大生のテレビ 合格発表の記事も上位に

【2018年3月アクセスランキング】3/10実施の合格発表に高い関心東大新聞オンラインで公開された投稿です。


分生研を改組 論文不正続発を受け

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 分子細胞生物学研究所は1日、渡邊嘉典教授(分生研=当時)らによる論文不正を受け、定量生命科学研究所へ改組した。従来の研究不正対策室に代わり、論文上のデータと実験の元データの照合などより強固な監視体制を敷く「研究倫理推進室」や、著名な研究者による研究不正防止の監視機関「Advisory Council」を新設。研究室の閉鎖性を排するために、基盤技術を集約した中央実験室も設置される。

 

 今回の改組では13の研究分野と二つの研究センターが廃止され①主に可視化技術を担う生命動態情報研究領域②細胞・分子単位の定量的解析手法を開発する高度細胞多様性研究領域③たんぱく質結晶の構造の解析技術開発などを担う先端定量生命科学研究領域④医学などに①~③の成果を生かす応用定量生命科学研究領域――の4領域に再編。実験データを定量化して研究に生かす。

 

 2度の論文不正発覚を受け、東大は昨年12月に分生研の組織体制を見直す方向性を提示していた。

 

【関連記事】

東大関係者の論文不正疑惑、本調査を完了 不正がなければ公表せず(2017年6月10日掲載)

さらなる論文不正疑惑で本調査へ 150日以内に判断(2016年11月16日掲載)

論文不正疑惑で新たな告発状(2016年10月26日掲載)

論文不正疑惑で本調査へ 原則150日以内に判断(2016年9月28日掲載)

東大分生研での論文不正問題、教員ら11人に不正行為(2015年1月14日掲載)

 


この記事は、2018年4月10日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

インタビュー:軸を持って多様な経験を 元官僚の政治学者・内山教授(総合文化研究科)に聞く
ニュース:英語民間試験認定結果 従来型の英検落選 受検生間の公平性が課題
ニュース:分生研を改組 論文不正続発を受け
企画:前期課程の履修失敗談 我が屍を越えてゆけ
企画:運転免許、いつどう取る? 合宿vs通学、AT車vsMT車
企画:東大の歩き方
企画:楽しめ 世界の多面性 初修外国語を学ぶ意義とは?
企画:学食だけじゃない 駒場の名店
東大今昔物語:1990年4月3日発行号 幻の「社会学部」構想
東大新聞オンライン:2018年3月 入試関連記事に注目
キャンパスガール:増田怜奈さん(文Ⅲ・2年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

分生研を改組 論文不正続発を受け東大新聞オンラインで公開された投稿です。

東大入学式 ロバート・キャンベル国文学研究資料館長「論理と共感のバランスこそ教養」

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  2018年度学部入学式が12日午前に日本武道館(千代田区)で挙行され、約3000人の新入生とその家族ら約5000人、計8000人ほどが出席した。五神真総長と石田淳教養学部長が式辞を述べ、2000年から17年間東大で教壇に立ったロバート・キャンベル国文学研究資料館長が祝辞を披露した。

 

入学式を終え、笑顔の新入生(撮影・吉良椋)

 

 学部入学式の式辞で、五神総長は現代を社会や思想の転換期である「変化の時代」と捉え、同様に変化の時代であった明治時代に活躍した岡倉天心に言及。西洋文明の急速な普及の中、日本文化軽視の流れに抵抗し、日本美術史という新たな学問を確立したと述べた。その上で、変化を楽しんだ先人に学び、新たな知を築く糧としてほしいと語った。

 

 石田教養学部長は前期教養課程で狭い専門に囚われない教養を学び、視野を広く持ち、現実を俯瞰(ふかん)する力を獲得するよう激励した。

 

祝辞を述べるロバート・キャンベル国文学研究資料館長(撮影・小田泰成)

 

 ロバート・キャンベル国文学研究資料館長は「他者を理解すること」「他者に共感すること」はそれぞれ人に喜ばれるのか否かという問いを提示。出会う相手に対する確かな知識と感性が問われる時代に、江戸時代の古書の事例を引きながら、他者と接する際の言葉の論理と共感のバランスこそが教養だと話した。

 

 入学生総代の上野史朗さん(文Ⅲ・1年)は「何事に対しても、何人に対しても謙虚な姿勢で臨み、感謝の心で精進する」と宣誓した。

 

 各科類の入学者数は文Ⅰ423人、文Ⅱ376人、文Ⅲ496人、理Ⅰ1176人、理Ⅱ561人、理Ⅲ100人の計3132人。女子学生は610人と全体の19.5%になり、昨年の20.4%から0.9ポイント下降した。留学生は46人だった。

東大入学式 ロバート・キャンベル国文学研究資料館長「論理と共感のバランスこそ教養」東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【東大発サークル「ごちそう会」寄稿】新歓・クラス会にぴったり!飲めない人も楽しめる食事会

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何かと集まる機会の多い4月。「ごちそう会」メンバーに、食事会にぴったりなお店について寄稿してもらった。

(関連記事=飲み放題に代えごちそうを 学生団体が提案する新しい食事会の形

 

新学期は出会いの季節! 初めてのクラス会にサークル新歓の食事会・女子会など、夜の集まりがたくさん。

でも、こんな悩みを持つ幹事さんも多いはず…

  • 未成年の人もいるから、飲み放題ができない
  • お店が、ちゃんと交流できる席配置なのか不安
  • せっかくなら、おいしいお店を選びたい

そんな悩みを持つ幹事さんに東大発のサークル「ごちそう会」が、自分たちで実際に使ったおすすめのお店を紹介します! 

  • ソフトドリンクだけの予約もOK
  • 席替えしやすくて、大人数でも入れる
  • なんてったって、おいしい!

そんな渋谷・下北沢の、おすすめの4店です。

 

 

ちなみに、ごちそう会(略して「ごち会」)は

「夜の集まりで、どうして飲み放題しかないのだろう?」

「せっかく集まるなら、おいしいコースを楽しみたい」

という想いから生まれました。そこで自分たちでお店をめぐって、心からおすすめできるお店にプレゼン。【自慢の料理+おすすめの2杯】(ソフトドリンクも選択可)のとっておきのコースを一緒につくり、WEB掲載しています。 

 

【ごちそう会】飲み会に、ごちそうを

 

新歓・クラス会のおすすめ店

 

【渋谷】女性も入りやすいおしゃれ店、デ・サリータ

 

渋谷駅マーク下から5分ほど歩いた、道玄坂の途中にあるお店です。

まず、おすすめなのは料理! 写真は1人分です。(ソフトドリンクのみの提供もOKです)

あっつあつの「ぷりぷりエビのアヒージョ」やトリュフのホワイトクリームパスタなど、大学生に向けて特別な料理・値段のコースです。

 

一人一人出てくる、トリュフのパスタ。お皿は人数により変わります

 

40~60名なら1フロアで貸切りができて、スクリーンも利用できます。また、人数が10人程度なら、2階の奥に半個室があります。新歓の女子会などにもぴったりの雰囲気。お店の様子は、ごちそう会のコンセプト動画でも見られます。

ごちそう会専用のコースなので、詳しくは電話で「ごち会コースをください」と相談してみてください。

デ・サリータ(渋谷:2名~60名、2980円、日〜木)

 

【渋谷】じゅうじゅうラム肉などで満腹! キリンシティ

 

じゅうじゅう音を立てて出てくる、漬けラムのローストがメイン。カルボナーラや毎月変わる季節の料理などなど、惜しみなく出てお腹がいっぱいになるコースです(にもかかわらず2800円とお得!)。運動系サークルにもおすすめ。

シェアスタイルの料理なので、席替えしやすくなっています。

 

 

ここからさらに奥の窓際へと進むと、

 

 

奥の座席で、10名程度から数十名で交流できます。小〜中規模の会向けですが、人数はご相談ください。

ソフトドリンクも充実! 「自家製レモンスカッシュ」や「ももいろソーダ」など、おすすめドリンクを楽しんでください。

マーク下から南口方面(バス停のある方)へ5分ほど。歩道橋を渡ってすぐです。

キリンシティ渋谷桜丘店(渋谷:2名~、2800円、全曜日可)

 

【下北沢】ふわぁっと蒸したての牡蠣をみんなで。雷や

 

蒸したての牡蠣をみんなでシェアできるお店。しめは牡蠣のスープを使った雑炊です。雑炊以外の料理はシェアできるので、席替え・交流がしやすい場所です。

また、奥のスペースは周りと区切られて話しやすいです。人数次第ですので、お店と相談してみてください。

 

 

南口から徒歩3分。野菜が並んでいる目立つ入り口は、一度は見たことがある人も多いのでは。ここが「雷や」。

同じ鍋を囲んでお話しすると、自然と距離も縮まってきます(ちなみに、牡蠣が苦手な人がいたら、食材の変更も相談可能です)。牡蠣やお肉に、地産地消のフレッシュな野菜など、様々な味を楽しんでください。

雷や(下北沢:4~30名、3000円、月~金)

 

【下北沢】ここぞという会に。創作牛タン料理、夏火鉢

 

前菜、メイン、パスタまで牛タンの夏火鉢。創作牛タン料理を心ゆくまでどうぞ! 5年以上続き、地元でも人気のお店になっています。

 

 

写真の右列のように16名程度で席をとれます。地元の常連さんにも、大学生にも人気のお店です。

夏火鉢(下北沢:2~30名、3240円、月~木 )

 

おすすめのお店で、新歓・クラス会を成功させてください!

 

「ごちそう会」とは?

飲み放題で「物足りないな」「もっとおいしく食べたい」と思うこと、ありませんか? 新しい会の提案です。

私たちはお店をめぐり、心からすすめられるお店と【自慢の料理+おすすめの2杯】(ソフトドリンクも選択可)のとっておきのコースをつくりました。WEBサイトに公開しています。

メンバーも募集中(2年生以上も歓迎します)。今までの飲み放題コースにかわる、おいしくて楽しめる会を広める学生団体です。

 

こんな人におすすめです。

「おいしいお店でご飯を食べて記事が書きたい」

→ライター経験豊富なメンバーと、一緒にグルメ歩きしましょう。

「お店にプレゼンして、オリジナルのコースをつくりたい」

→2012年から6年間、活動してきたノウハウを直接、教えます。

「おいしいお店をもっと知りたい」

→一緒に、お店をめぐりましょう。

 

おいしいコースでお腹も心も満たされて、仲間と親しくなれる。そんな会を定着させます。

 

連絡先:ごちそう会 野並新 mail@gochikai.com

【東大発サークル「ごちそう会」寄稿】新歓・クラス会にぴったり!飲めない人も楽しめる食事会東大新聞オンラインで公開された投稿です。

硬式野球 開幕戦で慶大に大量失点 1安打無得点11三振で完敗

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 硬式野球部(東京六大学野球)は4月14日、慶應義塾大学との1回戦に臨み、0―15で敗れた。開幕戦となった今試合では、先発の宮本直輝投手(育・3年)が立ち上がりから制球に苦しみ、初回の2点を含む6回5失点。続く投手陣も追加点を与え、計15失点を喫した。打線は、相手先発の8回で四死球0と安定した投球の前に抑え込まれ、安打は二回に岩田昂之選手(工・4年)が放った三塁打1本のみ。九回に後を継いだ投手からも安打を放てず、完敗を喫した。東大は明日15日午後1時半ごろから慶大との2回戦に臨む予定。

 

今季からエースナンバーを背負う宮本投手(撮影・湯澤周平)

 

東大|000000000|0

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 東大の先発は、今季からエースナンバーを背負う宮本投手。初回、先頭打者に出塁を許し3番4番打者にも連続四球を与えて1死満塁の場面を招くと、5番打者に130キロの直球を左前へはじき返され2点を失う。反撃に出たい東大は二回、岩田選手が左中間を破る安打を放ち、積極的な走塁で三塁打に。しかし続く廣納敬太選手(工・3年)が強い三ゴロを放つと、岩田選手は三塁と本塁の間で挟殺されてしまう。廣納選手は二盗を試みるがあえなく失敗し、得点圏に走者を進めながら無得点でこの回の攻撃を終える。二回以降、宮本投手は制球に大きな乱れはなかったものの、五回には相手6番打者に本塁打を浴び、計6失点で降板する。

 

二回1死岩田選手がチーム唯一の安打となった三塁打を放つ(撮影・湯澤周平)

 

 打線は高い制球力を誇る相手先発の前に、三~八回は6イニング連続三者凡退と手も足も出ない。八回の守備では救援した投手陣が大乱調となり、併せて打者15人に9失点。九回の攻撃では2死から四球で走者を出したが、好機をつくれないまま試合終了を迎えた。

 

 東大打線は1安打11三振と相手投手に歯が立たず。昨季以降の練習で力を入れたという走塁は二回の攻撃などで積極的な場面が見られたが粗さも目立ち、得点につなげることはできなかった。

(文・石井達也)

硬式野球 開幕戦で慶大に大量失点 1安打無得点11三振で完敗東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【N高生のリアル】<子供たちだけの世界>に学校を 記者が見たN高がつくる未来

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 全10回でお送りした「N高生のリアル」の最終回をお送りする。今回は、連載を担当した学生記者からの「オピニオン記事」となる。

 

記者について:東京大学教育学研究科比較教育社会学コース修士課程修了(2017年)。東大新聞オンラインの立ち上げの経験も含め、インターネット×学校教育を対象として、社会学的に研究している。

 

 

<子供たちだけの世界>に学校を

 

 スマホネーティブ世代が今、中高生になった。今の子供たちのスマートフォンの使いこなしっぷりはすさまじい。多くの子が自らコンテンツを発信し、同級生のコンテンツに「いいね」をつけてコミュニケーションをしている。

 

 インターネット上に教育サービスを展開するというのは、いわばそういった<子供たちだけの世界>に割って入るということである。

 

 N高は、その世界にいかにして入っていったのだろうか。

 

インターネットによって出現した教育の「フロンティア」

 

 N高にまつわる記事といえば、VR入学式といった派手な演出と、「プログラミング教育」×「起業部」といった、情報が高度化する社会を生き抜く、新しい力を持った人材輩出への期待を取り上げたものが多い。

 

<参考記事>

N高、全新入生2800人にVRゴーグル配布して入学式

N高が起業家を育成する「起業部」設立–高校卒業後の進路に新たなスタンダードを

 

 このような先端テクノロジーの導入や、社会の先端人材輩出なども、確かにN高の特徴的な取り組みの一つだ。だが筆者は、多くのメディアが注目するこれらの「分かりやすい」魅力とは違う点に希望を感じている。それは、「若者のインターネット・コミュニケーション上に学校を立ち上げる」意義である。

 

SNSによって成立する学校空間

 

 全10回の連載の中で、最も反響を呼んだのが、連載第5回のSlackでのオンラインHRの取り組みである。

 

 普通の学校においては、スマートフォンやSNSは使用禁止であったり、あるいは教育的に忌避されたりする場合が多い。しかしN高においてはむしろ、スマートフォンやSNSが生徒と教師を結ぶ貴重なコミュニケーションの手段だ。

 

 それ故、普通の教師は「生徒がSNSばかりやっていてけしからん」となるところを、N高教師は「生徒がSNSを見てくれない」と、「悩み」が反転する。

 

 そこにおけるN高教師の仕事は、まずは「生徒がクラス運営用SNSにアクセスする」ことを仕掛けることだ。そのために担任教師は、親しみやすいキャラクターを演じたり、ゲームをする企画をしたりと、さまざまな工夫をしていた。教師は生徒にオンラインHRに来てもらうことで、学習への動機付けをしていた。

 

 N高のSlackでのコミュニティーづくりは、当初は生徒同士のコミュニケーションのトラブルがあったものの、生徒内での自警団が結成されるなど、インターネット・コミュニケーション上の秩序を作り出す試みだった(連載第9回)。

 

 また、生徒が自由に活動するネット部活の役割も見逃せない。連載第8回でも一部取り上げたが、ネット部活によって、生徒が社会的に立ち直ったケースも出てきている。

 

「いつでも・どこでも・だれでも」の先へ

 

 しかし、インターネット上で教育を行う取り組みは、N高が初めてではない。古くはアメリカのカーンアカデミーや、日本でもさまざまなサービスが世に出てきた。これら既出のインターネットでの教育サービスと、N高の違いはどこなのだろうか?

 

 多くのオンライン教育サービスは、教育者(大人)が作った授業や教材といった「コンテンツ」を学習者(子ども)に届ける。そこでのストロングポイントは、教室に通わずに済むという「どこでも」、授業時間に拘束されないという「いつでも」、また限りなく値段が安い(フリーな場合も多い)という「だれでも」の3点だといわれている。

 

 N高もこの3点の強みはもちろんあるが、筆者は「学習者同士のコミュニケーションを重視した」点に、N高の特有さがあるのではないかと考えている。

 

「非教育的なもの」への挑戦

 

 N高の指導のポイントは、物理的に離れている生徒といかに連絡・コミュニケーションを取り続けられるかという点にある。

 

 通常の通信制高校、あるいは広く通信教育においても、この点が教育上の課題となり続けてきた。物理的に会って指導するならば、ある種強制的に学習をさせることも可能だが、通信教育においてはそうではない。いかにして学習者を、学習へと動機付けし続けることができるのか。N高はそれを、多くの高校生が日常的に多用している「スマートフォン」「SNS」に見出した。ここに、スマートフォンは公教育の(補完ではなく)主役となる可能性を帯びたように思う。

 

 とはいえ、SNSを使えばすぐさま高校生を学習に駆り立てることができるわけではない。ただでさえ、若者がスマートフォンを見る「アテンション時間」を、さまざまなサービスや広告、あるいはコンテンツが奪い合っているのが現状である。ある意味でN高の敵は、生徒のアテンションを奪う全てのインターネットサービスなのかもしれない。

 

 だが、それは今に始まったことではない。教育、あるいは学習は常に、そのような「非教育的なもの」との戦いであったともいえる。(例:「勉強しなければいけないけど、漫画やテレビを見たい…」)

 

 多くの教育機関は、学習者を登校させ、教室で授業を受けさせることでそれら「非教育的なもの」から隔離し、教育を施してきた。しかし、学習者が日常に帰ると、途端にそれら「非教育的なもの」から刺激を受ける日々である。これまでの教育機関は、このような生徒の現実にふたをしてきた。

 

 しかしN高は、それに立ち向かうことにした。現代で最も「非教育的なもの」にあふれるといっても過言ではないインターネット世界に、学校空間を立ち上げた。N高は、学校教育業界が開けたくなかった扉を開けて、そこに立ち入る役割を果たしたのではないか。

 

 今年も新たに約2800人の生徒を受け入れ、開校3年目にして全校生徒約6500人になったN高。快進撃が続くが、N高の挑戦はまだ始まったばかりだ。N高で育った生徒が、社会でどう活躍するのか。期待して経過を見守りたい。

 

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