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【部員が見る東大軟式野球2018秋⑦】早大に5ー0で今季2勝目 復調の兆しとなるか

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秋季リーグ戦第7戦vs早稲田大学(9月28日)

 

早大 0 0 0 0 0 0 0 0 0 | 0

東大 0 1 0 0 2 0 2 0 × | 5

 

 ここまで6戦を終えて1勝3敗2分で迎えた秋季リーグ戦の第7戦、対早稲田大学戦。東日本大会出場へ向け後がない東大は、この重要な一戦に、前回早稲田大学に対し十回を投げ無失点に抑えた主戦、西野(育・3年)を先発として送り出す。

 

8回1失点の好投を見せ、先制の本塁打も放った西野投手(写真は軟式野球部提供)

 

 その西野は初回、二回と立て続けに三者凡退に抑える完璧な立ち上がりを見せる。すると二回の裏に試合が動く。先発投手でもある六番西野の放った打球が左翼スタンドへ飛び込む本塁打となり、東大が貴重な先制点をあげる。

 

 続く三回裏には八番串田(文Ⅱ・2年)の左前安打、九番静間(文Ⅲ・2年)の犠打に続き相手の守備の乱れもあって一死一、三塁と追加点の好機を迎えるが、後続が凡退しこれを生かすことが出来ない。

 

 次に得点が動いたのは五回裏。八番串田が再び三遊間を破る左前安打で出塁すると、九番静間が犠打を決める。すると続く一番川﨑(経・3年)が右中間三塁打、二番中谷(理Ⅱ・2年)が左前安打と二者連続で適時打が飛び出し東大が2点を追加する。

 

 さらに七回裏、二死から再び一番川﨑、二番中谷の連続安打で二死二、三塁とすると、相手投手の暴投の間に2者が生還する好走塁を見せ、東大がさらに2点を追加する。

 

適時三塁打を含む2安打1打点の活躍を見せた川﨑選手(写真は軟式野球部提供)

 

 先発した西野は、許した安打は八回に許した1本のみと、安定感抜群の投球で八回を無失点に抑える。2つの併殺など好守も目立った。最終回は継投した小川(文Ⅱ・2年)が無失点に抑え、東大が5対0で勝利を収めた。

 

 この勝利で対戦成績を2勝3敗2分とした東京大学。現在順位は5位であるが、この試合で7安打5得点と打線が復調を見せ、攻守が噛み合っての勝利となったことは、逆転での東日本大会出場に向けての好材料となった。今後も負けられない戦いが続くが、目の前の一戦に集中して、一つずつ勝利を積み重ねていきたい。

 

文責:軟式野球部 小川修(文Ⅱ・2年)


「100年大学 開学記念特別講座」が開催 タレント・生駒里奈さんらが出席

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登壇者によるテープカット

 

 「証券投資の日」である10月4日、人生100年時代におけるお金の未来を考える公開講座「100年大学 開学記念特別講座」が、本郷キャンパス安田講堂で行われた。今回の講座は、日本証券業協会と教養学部教養教育高度化機構ブランドデザインスタジオによる取り組み「100年大学 お金のこと学部」の一環として開催された。

 

 講座では、お金や証券投資に知見が深い特別講師として、小説家の羽田圭介さんや資産運用のロボアドバイザーサービスを提供するウェルスナビ株式会社 代表取締役CEOの柴山和久さんが登壇し、これからのお金や資産運用のあり方に関して講義を行った。また、100年大学の学生代表としてタレントの生駒里奈さんも登壇し、お金を主題とするトークセッションが行われた。講座には、100年大学特設サイトにて配信されている、お金のセンスを測ることができるテストコンテンツ「お金のセンス」受験者のうちキャンペーンに当選した250人と、東大の学生が参加した。

 

羽田圭介さんによる講義「やりたいことをやるための資産運用を」

 

講義を行う羽田さん

 

 初めに登場したのは小説家の羽田圭介さん。自らの投資経験を語った後、資産運用に関する知識を持つことの重要性を強調した。「手間暇をかけずライフスタイルを崩さない資産運用の仕方を構築するべき。自分のやりたいことを余裕をもってやるために、資産運用でお金を得ることは大事。お金に余裕があるから採算が合わないこともできる」と述べ、本当にやりたいことと稼ぐことの二つの部門を作ることの大切さを語った。講義後の東大生からの質問で、今までの経験を踏まえ今後やりたいことについて聞かれると、「映画監督。人とのつながりを感じられる仕事をしたい」と答えた。

 

柴山和久さんによる講義「働きながら資産運用する時代が来る」

 

講義を行う柴山さん

 

 次に登場したのはウェルスナビ株式会社代表取締役CEOの柴山和久さん。従来の資産運用を自動化するウェルスナビのサービスについて解説した。また、退職金と年金が減りつつある現在は、老後に資産運用をしていたこれまでとは異なり働きながら資産運用をすることが大事な時代だと話し、長期・積立・分散をテーマにした資産運用をすることが必要と述べた。また、運用資産全体を、安定的に資産を増やすコア部分と高いリターンを目指すサテライト部分に分け、効率よく資産を運用するコア・サテライト戦略の必要性を説いた。東大生からの「若いころは自己投資の方が重要ではないか」という問いに対しては、「若い時は自分のやりたいことにお金をかけた方がリターンは大きくなる。これ以上自分に投資してもしょうがないと感じたら資産運用を始めればいい」と答えた。

 

生駒里奈さんトークセッション 東大生と特別問題対決

 

特別問題対決での東大生4人と生駒さん

 

 続いて行われたトークセッションでは、元乃木坂46で現在はタレントとして活動する生駒里奈さんが登場。「お金のセンス」の結果発表を通じ、お金との向き合い方を考えるディスカッションが行われた。1000円から投資を始められると司会者から聞いた生駒さんは驚き「勉強は苦手なので、そういった気軽に始められる投資で実践的にいろいろ学んでいきたい」と語った。次に行われたのは、東大生と生駒さんによる「お金のセンス」特別問題対決。東大生が間違えた『NARUTO』に関する出題で見事に正解し、会場を沸かせた。最後には東大生に向けて「東大生は今後日本を支えていく存在になると思うので、こういう私みたいな存在を支えていってほしいです。これからも頑張ってください」とエールを送った。

 

 講座後の囲み取材で、今後のお金の使い道を問われた生駒さんは「将来的には結婚したいと思っているので、若い時に頑張ったお金できれいなウェディングドレスを着られたら」と笑顔で答えた。

 

講座後の取材に応じた生駒さん

 

 100年大学特設サイトにて、テストコンテンツ「お金のセンス」は現在も受験可能だ。また、『100年大学 お金のこと学部』開学記念特別講座の他に、10月から12月にかけて、前期教養課程で、人生100年時代のお金と投資の未来を考える主題科目「ブランドデザインスタジオ19〜お金の未来と投資のブランドデザイン〜」が開講中だ。一般の人向けには、講義の要点をまとめた『お金の教科書』が2019年春に出版される。まずは気軽に、お金や資産形成のための証券投資について学んでみてはいかがだろうか。

(堂畑茉由)

「東大生のSDGs意識調査2018」 UTokyo Sustainabilityが実施

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UTokyo Sustainability(TSCP学生委員会)とは?

 

 最近、「サステイナビリティ」「SDGs」などの言葉を耳にすることが増えてきています。環境や社会に配慮し、持続可能な社会を目指そうという世界の動きが活発になってきました。そのような時代の流れを背景に、サステイナビリティの考え方をキャンパスの中で捉えて、「サステイナブルキャンパス」の実現を目指しているのが、UTokyo Sustainability(TSCP学生委員会)です。

 私たちは、キャンパスのサステイナビリティに関わるさまざまな活動をしていますが、ここでは主な二つの取り組みをご紹介します。

 

活動① キャンパスの消費電力の削減

 

 一つ目の主な活動は、キャンパスの消費電力の削減に向けた取り組みです。

 私たちは、ドラフトチャンバーに着目した電力削減の取り組みを行っています。ドラフトチャンバーは、化学実験時に有害気体を排気する装置です。しかし、使っていない時にそのサッシュ(開閉部分)を開けておくと、電力消費のムダが生じてしまいます。図1のように「排気ファンの電力のムダづかい」「空調の電力のムダづかい」という二つのムダづかいが生じるためです。

 そこで私たちは、非使用時にサッシュを閉めることを啓発する「SHUT the SASH」キャンペーンという活動を行っており、啓発ポスターの作成や掲示をしています。ちょっとの工夫でキャンパスの電力消費による環境負荷を低減することができます。みなさんも、ぜひご協力ください。

 

(図1)ドラフトチャンバーと電力消費のムダ

 

活動② SDGsの普及、学生のサステイナビリティ意識の向上

 

 もう一つの活動は、学生のサステイナビリティ意識の向上に向けた取り組みです。具体的には、SDGs(持続可能な開発目標)の理解を普及させることで、サステイナビリティの考え方を学生に広める活動を行っています。SDGsは、2015年に国連が、地球環境や経済活動・人々の暮らしを持続可能なものとするために2030年までに世界が取り組むべき行動目標として、17の目標と169のターゲットにまとめたものです(図2)。しかしSDGsは行動目標であるだけでなく、現代が抱えるサステイナビリティの課題を広く取り扱っているため、分野横断的なサステイナビリティの全貌を把握する一助となるものでもあります。

 2017年度は、学生の意識の現状把握のため、「東大生のSDGs意識調査2017」を行いました。その結果を受けて、2018年4月には、SDGsとキャンパスサステイナビリティについて解説したパンフレットを作成して配布しました。今後も、サステイナブルキャンパスの実現を目指し、キャンパス最大の利用者である学生の意識向上に向けてさまざまな活動を展開していく予定です。

 

(図2)SDGsの17の目標

 

「東大生のSDGs意識調査2018」実施中!

 

 現在、昨年と同様、「東大生のSDGs意識調査2018」を実施しています。東大生のSDGsの認知度、キャンパスにおける電力消費、緑地保全、消費における環境配慮など、さまざまな観点から東大生のサステイナビリティ意識を明らかにし、今後の活動につなげていこうと考えています。ぜひ、回答よろしくお願いいたします!

 

「東大生のSDGs意識調査2018」

コチラから回答お願いいたします → https://goo.gl/forms/02lQZlwLWuIFzllf1
期  間:10月17~31日
実施主体:UTokyo Sustainability
協  力:東京大学経営企画部経営戦略課、施設部施設企画課TSCPチーム

☆調査結果を一緒に分析するメンバーを募集中ですので、お気軽に下記の連絡先にご連絡ください。
☆12月に発表予定の分析結果について興味がある学生・学生団体の方も、お気軽にご連絡ください。また、昨年度の分析結果は、下記団体ホームページから閲覧できます。

UTokyo Sustainability(TSCP学生委員会)
ホームページ:https://utsustainability.wixsite.com/utsustainability
メール:ut.sustainability.tscp@gmail.com

 

 

☆いつでも学生委員会メンバーを募集しています。省エネ・環境問題・サステイナビリティに興味がある学生は、お気軽にご連絡ください。

 

寄稿=UTokyo Sustainability委員長 鬼頭健介(農・4年)

人生の進路に新しい選択肢を 東大への再入学者2人にインタビュー

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 東大にはさまざまな学生が在籍している。20歳前後の学生が多い中、30歳以上と思われる人が講義を受けているのを見かけたことがある人もいるのではないだろうか。今回、一度大学を出て社会人を経た後に東大に再入学した在学生・卒業生に、再入学に至った経緯などについて話を聞いた。近年大人の学び直しが注目される中、彼らの生き方をのぞくことは、自らのキャリアを考える上で参考になるはずだ。

(取材・武井風花)

 

退職後にもう一花

 

笹尾克彦(ささお・かつひこ)さん(文Ⅲ・2年)

 

━━再入学する以前の経歴を教えてください

 東大法学部を卒業しました。講義をサボりがちで、仏語の単位が足りずに1年留年しました。何をやってたんですかね……(苦笑)。
 卒業後はエンジニアリング会社で働いていて、プラント建設のために東南アジア、中東、アフリカに10年以上駐在しました。

 

━━なぜ再入学を決意したのでしょうか

 一つは、自分の仕事が一段落したと感じたからです。業界で絶対に失敗すると言われていた事業を成功させたことで「もうこれ以上の達成感は味わえないだろう」と思ったのです。二つ目の理由は、第2の人生があっていいと思ったからです。多くのサラリーマンは仕事が唯一だと思っているけど、2個目の人生で歴史に名をとどめた伊能忠敬を目指したっていいじゃないかと。歴史を学ぶため、文Ⅲを選びました。
 また、家族の理解があったことも大きいです。普通止められそうなもんですけど、うちの奥さんは素晴らしい人で、あっさり許してくれました。

 

━━受験勉強はどのようにしていましたか

 仕事を続けながらだったので大変でした。記憶力勝負の歴史や、スピード勝負の数学などは頭の回転が追い付かずに苦労しました。反対に考えさせる記述式の入試は、人生経験が豊富な分、若い学生より有利だったと思います。東大の入試は実は大人向きなのかもしれないですね。

 

━━再入学してよかったことは何ですか
 純粋に新しい知識を得られることです。勉強をするために戻ってきたから、授業にも真剣に取り組めます。常に最前列受講、先生には率先して質問。そんな中地球惑星科学に出会い、その面白さに感化され、結局文学部進学をやめて留年し、理学部進学を目指すことにしました。

 勉強以外だと若い学生と話せるのがうれしいです。座禅部に所属していて、週に1回座禅会に参加し、その後にみんなで飯を食べたりしていますが、普通この年で若い学生と友達付き合いできる機会は絶対に無いので会社の元同僚に大変うらやましがられます。

 

━━逆に大変だったことは

 「スポ身」です(苦笑)。体力はね……とてもついていけませんね。それと、他の学生からの視線を常に感じることでしょうか……(笑)。「誰やあのおっさん」と珍しがる気持ちも分かりますけどね。

 

━━これからの目標は
 1年留年しますが、理学部の要求科目は1科目しか残ってないので、あとの時間は進学選択の点を気にせず好きなことを勉強したい。相対性理論とか量子論とか。理学部に進学できたら院に進んで研究者になるのもいいと思っています。寿命との競争ですね(!)

 

 

妻の一言で決意

 

本元俊行(ほんもと・としゆき)さん(工学部卒)

 

━━再入学する以前の経歴を教えてください

 東京農工大学の電気電子工学科で、燃料効率についての研究をしていました。部活は卓球部で、部室に寝泊まりして夜はマージャンをするという普通の(?)大学生活を送っていました。

 しかし、2年生の時に休学せざるを得なくなりました。というのも、父親がギャンブル好きで借金をしていまして。さらにDV的な面もあったので自分が借金を肩代わりする代わりに両親に離婚してもらいました。それで、働かないとならなくなりまして。塾の講師や家庭教師を軸に、日雇いの引っ越しアルバイトや深夜の倉庫内作業などいろいろやっていました。株の電子化処理や官公庁での仕事などもしていましたね。

 

━━なぜ再入学を決意したのでしょうか

 一番のきっかけは結婚して妻に「大学卒業すれば?」と言われたことです。子どもが生まれて「お父さん大学どこ卒業したの?」と聞かれたときに堂々と答えられた方がいいだろうということで。家から近かったこともあり、東大を受験しようと決めました。

 

━━受験勉強はどのようにしていましたか

 塾講師をしていたのでそんなに苦労しなかったです。化学だけは勉強していなかったので、『チャート式』で基礎を固めたり、他の参考書を本屋で立ち読みしたりして勉強しました。

 

━━再入学してよかったことは何ですか

 「自分、まだ若いな」と思えたことですかね(笑)。同世代としか付き合わないと、知らずに古い考えに凝り固まってしまったり、若者の流行などに疎くなったりしますが、東大に来ていろいろ吸収できました。最新のスマホの使い方とか(笑)。それから、プログラミングなどの役に立つ知識を得られたことと、そして何よりボルダリングに出会えたこともよかったです。在学中に御殿下記念館でボルダリングを体験して、ハマってしまって。今でも友人や同僚とボルダリングジムに通って楽しんでいます。

 

━━逆に大変だったことは

 一番は、1年次の6月に子どもが生まれて、授業を受けるどころではなくなり、単位を落としてしまいそうになったことです。子どもが熱を出したら帰らないといけないので必修に出席できず、50点台の可を連発してしまいました(笑)。でも、クラスの友人に子どもの誕生祝いをサプライズでしてもらえるなど、うれしいこともありました。

 

━━総じて、再入学してよかったと思いますか

 思います。社会人を経験してから学生に戻ると、指示する側からされる側に急に戻るので新鮮で楽しかったです。やってみないと何が面白いか分からないし、飛び込んでみてよかったと思います。

 


この記事は、2018年10月9日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

ニュース:「文化遺産の教育を」 絵画廃棄問題 シンポジウム開催
ニュース:ラクロス男子一橋大戦 1失点に抑え快勝 予選リーグ無敗で決勝Tへ
ニュース:世界大学ランキング 総合42位に上昇 教育・研究で高評価
ニュース:2試合連続完封負け 硬式野球早大戦 計わずか6安打
ニュース:本庶京都大特別教授にノーベル賞 かつて東大で研究
企画:東大ガールズハッカソン2018 アイデアソン開催 動詞選んでテーマ決め
企画:商品ヒットに法則はある? 理論と実践に見る商品開発の裏側
企画:人生の進路に新しい選択肢を 東大への再入学者2人にインタビュー
キャンパスガール:東野雅潔さん(理Ⅲ・1年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

お金以上の自由求めて 山本周五郎賞受賞の東大生 ・小川哲さんインタビュー

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 作家の小川哲さんは、現在も総合文化研究科博士課程に在籍しながら、SF界の新鋭として注目を集めている。昨年発表されたデビュー2作目『ゲームの王国』では、第38回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞を受賞した。今後ますますの活躍が期待される小川さんに、作家になった経緯や、小説に対する考え方を聞いた。

(取材・伊得友翔 撮影・宮路栞)

 

小川 哲(おがわ・さとし) さん (作家) 2012年教養学部卒。総合文化研究科博士課程3年 (休学中)。15年に『ユートロニカのこちら側』(早川 書房)で第 3回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞し、 作家デビュー。2作目となる『ゲームの王国』では第38回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞を受賞した他、 第39回吉川英治文学新人賞の候補作品にも選ばれた。

 

岩波文庫は「過去問」

 

──作家を志したきっかけを教えてください

 自分が高校時代に何気なく書いた小説を、母親が勝手に友人の編集者に送ったのがきっかけです。その編集者の方から「面白いので別の作品も読みたい」と言っていただき、勉強して新しく小説を書くことにしました。書いた小説は結局ボツになったんですが、さらに数年後書いた小説がデビュー作になりました。

 

──勉強とは具体的に何をされたのですか

 受験で言うと過去問を解くみたいに、名作を多く読みました。東大生協駒場書籍部に置いてある岩波文庫を全部読むことを目標にしていましたね。中でも、モーパッサンやフォークナー、ドストエフスキーやチェーホフは好んで読みました。日本人だと谷崎潤一郎や太宰治あたりですかね。

 

──学部生の頃はどのような生活を送られましたか

 大学には全く行きませんでした(笑)。昔から、じっと座って人の話を聞くのが苦手なんですよね。特に大人数の授業が退屈で、授業に行かず本を読んで過ごしていました。それで単位も取れず、何度か留年してしまいました。

 

──ご自身の研究内容を教えてください

 理Iから工学部に進んだ後、興味が変わって教養学部に移りました。そこでは日本文学を研究し、卒論では中上健次について書きましたね。博士課程の先輩の勧めを受けて、大学院では研究対象を英語圏に変えることにしました。以降、数学者として有名なアラン・チューリングを研究しています。チューリングはアルゴリズムを作った数学者なのですが、戦時中は軍人としてナチスのエニグマ暗号を解読し、戦後は哲学者として人工知能の研究をしたり、生物学者として形態形成学を研究したりしています。彼がなぜこのようなキャリアを歩んだかというのが、自分の修士論文のテーマでした。

 

──研究と執筆活動の間に何か関連性はありますか

 チューリングは人工知能を研究する際、心とは何かを考えていました。そのため研究の過程では、心理学系の本をたくさん読みましたね。これらは確かに小説を書くきっかけになっていて、実際デビュー作のエピグラフ(巻頭などに引用されている題辞)に使用したスティーブン・ピンカーは、この時に初めて出会った人物です。

 

──作家としての強みはどこにあると思いますか

 小説では「場合分け」が求められると考えています。時系列や登場人物の行動に矛盾がないよう、出来事の因果関係を作家が把握していなければなりません。自分はもともと理系で数学が得意なので、この場合分けも得意だと思います。例えば編集者から改善案を示されたときに、それを反映するとどういう矛盾が生じるかが割とすぐに分かります。

 

 

文学の隙間を書く

 

──小説はどのように着想されますか

 日々生きていて、自分は「文学の隙間」を感じるときがあります。例えばニュースを見ていると、「この人はこういう気持ちだったのかな」と出来事の背景を想像するんですね。そこから、文学に発展させていくというわけです。こういった可能性を探すためにも、いろんなジャンルの勉強をしたり本を読んだりしています。特に歴史系は興味深く、『ゲームの王国』はクメール・ルージュの話から想像を膨らませました。

 

──執筆の際に気を付けていることはありますか


 なるべく余計なことは書かないようにしていますね。90分のつまらない映画を見たときと、3時間半のまあまあの映画を見たときに、自分は後者の方に腹が立つんです(笑)。つまらないことよりも余計なことを書くのが罪ではないかと、小説においても最近そう感じています。特に今は昔よりも時間に追われる中で本を読んでいる人が多いと思うので、できるだけ無駄を排除したいという意識は持っています。

 

『ゲームの王国』上・ 下 早川書房 上下巻共に税込1944円

 

──これまでの印象的な読書体験を教えてください

 中学生のとき、父親の本棚にあった筒井康隆の本が面白かったのはよく覚えています。それからは基本的にSFを中心に読んできました。あとは大学生になって読んだ、町田康の『告白』はすごく感動しましたね。「小説はこんなことができるのか」という驚きもありました。

 

──読書の魅力は何でしょうか

 本を読む前と読んだ後で、世界の捉え方が変わる可能性があることですね。実際、自分が中学生の時に読んだSF小説は「こういう見方もあるのか」と思わせるものが多かったです。ありきたりかもしれませんが、今まで見ていた景色が変わって見えることが確かにあると思っています。

 

──今後の目標を教えてください

 率直に言えば、より多くの人に読んでもらいたいです。自分も書きたいジャンルにこだわりはないので、SF以外の作品も書いていきたいですね。そうしてSF以外の読者にも自分を知ってもらえれば良いなと思います。

 

──最後に、東大生へのメッセージをお願いします

 東大を卒業して小説を書いている人は少ないです。理由は単純で、もうからないからですね。小説を書く才能を持っている東大生は、小説を書かない方がはるかにお金持ちになれます。ただそこをぐっとこらえて、小説を書いてみるのはどうでしょうか。お金以上の自由が作家にはありますよ。


この記事は、2018年10月2日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

インタビュー:お金以上の自由求めて 山本周五郎賞受賞の東大生 小川哲さんインタビュー
ニュース:成績提出義務付けず 英語民間試験 調査書で代用可能
ニュース:要所押さえ大勝 アメフト駒大戦 守備陣が奮闘
ニュース:秋季入学式 802人が入学
企画:読書を、仲間たちとともに 読書会、ビブリオバトル……それぞれの工夫
企画:東大生協本郷書籍部売り上げランキング(2017年8月〜18年7月)
企画:本は、あなたを変える 編集部員厳選の4冊を紹介
企画:変わりゆく書籍の在り方 紙で深め、電子で広げる
キャンパスガイ:阪本昂平さん(理Ⅰ・1年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

THE世界大学ランキング 総合42位に上昇教育・研究で高評価

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 英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が9月26日に発表した世界大学ランキングの最新版で、東大は昨年から総合順位を四つ上げ42位となった(表)。アジア内順位も昨年の6位から5位に上昇した。

 

 

 東大は教育・研究の項目でそれぞれ84点(世界16位)、87.2点(同19位)と高評価。この2項目では80〜90点を、評価基準が変わった2011年からほぼ維持している。産学連携では昨年から14.5点増加して67.2点。12年以来の60点超えを果たした。

 

 課題が残ったのが国際性。11年(18.4点)から徐々に評価を上げ、今年は11年以来最高の35・9点となったが、同じ40位台の他大学が同項目で平均75.2点であることを踏まえると、依然低水準にある。

 

 論文被引用では昨年より2.4点低い61.3点。東大の総合順位が23位から43位に急落した16年に、この項目で前年比13.8点減の60.9点を記録。以降も60点台前半で推移している。

 

 国内で上位100校に入ったのは昨年同様、東大と京都大学(世界65位)のみだった。ランキング全体には昨年より14校多い103校が入り、ランクイン数は米国に次いで2位。THE編集長は「日本は、主要大学と有望な新規参入大学、両方の堅実な改善によって好結果を残した」と評価した。

 

 アジア内では、清華大学が昨年アジア首位のシンガポール国立大学を破り首位に躍り出た。他にも北京大学・香港大学が東大の総合順位を上回った。

 

 全体では英オックスフォード大学が3年連続首位で、英ケンブリッジ大学が続く。上位10校は米英の大学が独占した。

ア式蹴球部男子 成城大に惜敗 チャンス作るも及ばず

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 ア式蹴球部男子(東京都大学サッカーリーグ2部)は10月14日、リーグ最終節となる第18節を成城大学と御殿下グラウンドで戦い、1-2で敗れた。リーグ戦での黒星は今季開幕戦以来。2部優勝を決めた中で迎えた最終戦で悔しい敗戦となった。今季の戦績は、全18試合で13勝2敗3分け。来季は東京都大学サッカーリーグ1部に昇格する。

 

 最初にシュートを放ったのは東大。前半2分、東大は右サイドでフリーキックを獲得し、細井隼選手(工・3年)が蹴ったボールに大谷拓也選手(文Ⅰ・2年)が頭で合わせるも、シュートは枠の上に外れる。開始早々にチャンスを演出したがその後、東大はなかなかボールをつなげない。8分、相手の右サイドからのアーリークロスに、頭で合わせられ先制を許した。その後も前線にボールをつなげず、相手に攻め込まれる展開が続いたが、徐々に東大がパスをつなぐようになる。東大は前半終了間際の42分、左サイド後方から右サイドへのロングパスを松本周平選手(理Ⅰ・2年)が受けると、寺山怜志選手(工・4年)にパス。寺山選手がワンタッチでつなぐと佐俣勇祐選手(工・4年)が直接ゴール左隅に突き刺した。前半を1-1で折り返す。

 

前半、右サイドを突破しようとする松本選手(右)(撮影・中井健太)

 

 後半、東大は最終ラインからボールを運び、サイドを中心に攻撃を組み立てる。12分、中沖隼選手(経・4年)の左サイド深くからのクロスを、佐俣選手がゴール前でトラップ、シュートを放つも相手ゴールキーパーに止められる。

 

後半12分、佐俣選手(写真右)がシュート(撮影・中井健太)

 

 守備では18分、ペナルティエリア内ゴール正面での相手のシュートを、内倉慈仁選手(理Ⅱ・2年)がブロック。徐々に東大が流れを引き寄せているかに見えた23分、東大がペナルティエリア付近、ゴール向かって左側でフリーキックを獲得する。細井選手が蹴ったボールは、左に曲がり変化するも、惜しくも左のゴールポストに直撃した。すると25分、この流れから相手のカウンターを受ける。相手の右サイドからのクロスが流れたところを押し込まれ、勝ち越し点を許してしまう。1点を追う東大は43分、中村知朗選手(文Ⅲ・2年)のハーフウェイライン手前からのスルーパスに和田爽選手(理Ⅰ・2年)が抜け出し、シュートに持ち込むが枠の右にそれた。東大は最後まで攻めるも、リーグ最終節を勝利で飾ることはできなかった。

 

後半、ヘディングでゴールを狙う寺山選手(写真中央右)(撮影・中井健太)

 

◇山口遼学生コーチ兼選手(工・4年)の話

━━今日の試合、振り返ってみてどうか

 けが人が多いなかで、ディフェンスラインの選手を大きく変えなければいけなかった。選手が変わる部分で難しいところがあった。

 

━━前半、なかなかボールをつなげない場面があった。後半、どのように改善したのか

 ロングキックに対する相手のヘディングが強かった。後半途中からになるが、自分を含めて選手交代でビルドアップ(攻撃の組み立て、後方から前線へのボールのつなぎ方)の部分を強化し、自分たちがボールを持つ展開を作ろうとした。

 

━━後半、攻めている中でカウンターから失点した。点を取るのに足りなかったものは何か

 相手が中央を固めている中、自分達がサイドからの攻撃に誘導されてしまうと相手が待ち構えている中で攻撃するしかなく、難しい。中央の選手がより良いパフォーマンスでボールを受けてさばけると、相手は選択肢をしぼりにくいと思う。

 

━━今季、リーグ優勝を決められた強さの秘訣(ひけつ)は

 攻守一貫した戦い方を練習から選手に落とし込んでいった。攻撃だったらボールをしっかり持つ、守備ならボールを奪われた後すぐ奪い返すなど。良い練習をしっかりできたところが秘訣だと思う。

 

━━来季に向けて

 今季中心だった4年生の中沖選手、日野選手が抜けることは大きく、チームとしても戦い方を変えなくてはいけない。厳しい1部での戦いだが、チームとしてやるべきことを統一し、そのやり方の中で個人個人が伸びていけばいい戦いができると思う。公式戦では選手には、プレッシャーがかかる。各選手が苦手な部分を練習の中で改善していくしかない。選手には良い準備をしてこれまで以上に良い選手となって臨んでほしい。

 

◇中沖隼前主将の話

━━リーグ優勝を果たした今季を振り返ってどうか

 開幕戦(亜細亜大学戦)で敗れ、振るわなかった昨季のことが頭をよぎった。次の試合でライバルの一橋大学に勝ってから波に乗り、前節まで負けずに来られた。(今季18試合でわずか2敗という)結果だけ見れば簡単なことだが、勝ち続けるというのは追いかけられるということで、すごく精神的に苦しかった。選手、コーチそれぞれが役割を持って、みんな精神的に苦しい中で声を掛け合って支えあってこられたことが、今季の圧勝、優勝につながったと思う。

 

━━来季、後輩である選手たちに期待するものは何か

 僕らの代には、(才能あふれる)タレントは全然いなかった。それに比べると、1年下、2年下の代には、本当に良い選手がそろっている。これを考えると、来季1部でも戦っていけると思う。彼らにはもっと成長して自分達を超えて活躍して、いい試合をしてほしい。関東リーグにも挑戦できると希望ではなく、本当に思っている。心から頑張ってほしい。

後半、左サイドで仕掛ける中沖選手(左)(撮影・中井健太)

 

◇松坂大和主将(農・3年)の話

━━来季に向けた意気込みを

 自分が1年生のとき、東大は(東京都大学サッカー)1部リーグで戦っていた。自分も試合に出場したが、降格してしまいとても悔しい思いをした。その時の先輩、またこれまでの先輩の思いを背負って、関東リーグへの昇格を目標に戦いたい。試合を見に来てもらえたり、結果を見てもらえたり、いろいろな人に気にかけてもらえる部にしていきたい。

硬式野球 法大に0-8で完敗し初勝利ならず 負ければ最終戦の2回戦に臨む

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 硬式野球部(東京六大学野球)は10月20日、法政大学との1回戦を戦い、0-8で敗れた。東大は初回と最終回以外は得点圏に走者を進められず、先発の小林大雅投手(経・3年)は制球が定まらないまま7回7失点と徐々に点差を広げられた。東大は明日21日午前11時から、負ければ今季最終戦となる法大との2回戦に臨む。

 

走者を背負いながらの苦しい投球となった小林投手(撮影・湯澤周平)

 

東大|000000000|0

法大|10220021X|8

勝:三浦(法大) 負:小林(東大)

 

 東大は初回、2番・笠原健吾選手(文Ⅲ・2年)が二遊間を破る中前打を放つと、辻居新平選手(法・3年)が四球で、三鍋秀悟選手(工・4年)が内野安打で出塁して1死満塁の好機。しかし続く2打者が連続三振を喫し、先制点は奪えない。先発の小林投手は死球で出塁させると、2死二塁の場面で左前打を許して先制される。

 

 二回以降の打線は、相手投手の一方的なペースに乗せられる。二回と四〜六回は三者凡退に抑えられ、出塁しても走者を二塁以降に進められない。一方で小林投手は制球が安定せず、三つの死球を含む6四死球。法大の計7盗塁を記録した機動力と着実な適時打によって、失点を重ねた。

 

 守備では八回、新人の左腕・小宗創投手(文Ⅲ・1年)がリーグ戦初登板。先頭打者は内野ゴロに打ち取るものの、その後内野安打やレフトへの三塁打で1点を失う。最終回の攻撃では、明治大学との2回戦を引き分けに持ち込む同点打を放った武隈光希選手(文Ⅲ・2年)が代打で登場し、この日も右中間を破る二塁打を放つ。しかし続く打者が倒れ、1点も奪えないまま試合終了を迎えた。

 

八回にリーグ戦初登板を果たした小宗投手(撮影・湯澤周平)
九回2死の場面で代打の武隈選手は二塁打を放ち、この試合唯一の長打となった(撮影・湯澤周平)

(石井達也)


19歳が見た中国②  学校の近くに、安くてうまい飯あり

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中華料理は中国の料理じゃない!?

 

 「日本の中華料理ね、あれぁ中国菜(チョングオツァイ;中国の料理)とは全くの別物だよ」

 「どういうことですか?中華料理は中国から来たんですよ!」

 フェリーで隣だった中国人のおじさんに言われたときはピンと来なかったが、3週間中国の街角でご飯を食べて、おじさんの言い分は正しかったことが分かった。

 

 中華そば、天津飯、青椒肉絲、麻婆豆腐……日本で人気の中華料理と同じものが中国にも勿論ある、と考えている読者の皆さんは多いだろう。だが、中華料理はあくまでも、日本人向けにアレンジされた日本の料理文化だ。私たちの中華料理のイメージと中国の食文化とのかけ離れ具合には、びっくりさせられる。

 

▲広東地方の食文化、饮茶(ヤムチャ;飲茶)。好きなお茶を選んで、点心(ディムサム;軽食)とともにいただく。饮茶は社交のツールとしても使われる(写真は広州で)
▲お得感のある自助餐(ビュッフェ形式)。ひと皿12元(=204円)で、どれだけでもよそって良い(写真は深圳で)

 

 まず、本場の味付けは圧倒的に強烈だ。武漢で、地元の人たちが何気なく食べている火锅(フオグオ;火鍋)を一口試してみて、私は辛さで椅子から飛び上がってしまった。日本の「激辛」は中国の「ふつう」。日本の「程よい塩加減」は、中国では「味がしない(=まずい)」という評価になってしまう。甘さ勝負でも中国に軍配が上がりそうだ。というのも、中国の人たちは、私たちにとっては無糖が当たり前の緑茶も含めて、あらゆる飲料に砂糖を入れたがるのだ。上海のスーパーで、ミネラルウォーター以外の無糖飲料の種類を指折り数えてみたが、数十種類並ぶ中でわずか2種類しかなかった。

 

 何人かで食べるときは、大鍋や大皿を皆でつつくというのが中国流。取皿はないし、直箸なんて勿論気にしない。シェアするから、自然といろいろなメニューが食べられる。それに、皿洗いの量も少なくなる。一人ずつ別々に注文したり、一人ひとりの皿に料理を取り分けたりする私たちのやり方よりも、中国流はある意味合理的といえる。中華料理屋さんでよくお世話になる「セットメニュー」は、中国の飲食店では目にしなかった。セットにする必要がないからだろう。

 

 日本との違いに最も驚いたのが、中国では朝ごはんを外で済ませる(あるいは、外から買ってくる)のが普通だということ。日本では想像できないことだが、早くも朝7時には街角の飲食店が営業を始めていて、店頭で饅頭や油条(ヨウティァオ;揚げパン)のテイクアウトができる。これは、朝に余裕がない学生やビジネスパーソンにとっては特別に便利だ。私は一人暮らしで自炊に精を出しているが、朝目が覚めて、何も考えずに外に出たらおいしい朝飯が待っている中国の街角が、恋しくて仕方がない。

 

▲朝7時。街角の至るところにある小吃(シャオチー;軽食堂)から、食欲をそそる匂いが漂ってくる(写真は深圳で)
▲卤肉饭(ルーロウファン)のテイクアウト。中国の街角では、早朝でも夜中でも、簡単にご飯を調達できる(写真は広州で)

 

 今まで、中国の食文化の特徴を見てきた。ところで、私の旅先の「先生」いわく、おいしいお店の見つけ方にも、中国流のコツがあるというのだ。

 

趙さんのセオリー「美食は学校の近くにあり」

 

 「おいしいご飯を食べたいのなら、まず学校を見つけるの」

 おいしいお店を見つけるには、という私の問いに、武漢大学の趙さんは意外な答えを返してきた。

 「大学でも中学でも小学校でもいいから、とにかく学校を見つけるの。見つけたらその周辺を歩き回る。きっと地元の人でぎゅうぎゅうのお店があるわ。そこなら絶対においしいし、値段もすごく安いのよ!学校の近くには、自然と美食(メイシー;うまい飯)が集まってくるの」

 逆に、外国人が食事を済ませるような、駅や空港や観光スポットの飲食店は、趙さんに言わせれば「おいしくないのに値段が高い、せっかく中国に来たのになぜそんなところに行くのかしら?」

 

 私は趙さんのセオリーを試してみたくなった。翌朝ユースホステルを出ると、ちょうど目の前が小学校ではないか!小学校に沿った道を歩いて行くと……あるある、小さな飲食店が並んではいるが、どの店もすっからかんで、店主が椅子に座ってスマホをぼうーっと眺めている。忘れてはいけない、趙さんは「ぎゅうぎゅうのお店を探せ」と言ったのだ。次の角を曲がると、さっきとは打って変わって、老若男女が目まぐるしく出入りする活気溢れる店が現れた。

 (きっとここだ!)

 趙さんのセオリーを信じて店に入ると、大当たり!わずか140円で、できたてアツアツの牛肉ビーフンと饅頭とおかゆでお腹いっぱいになることができた。

 

▲100円できたてアツアツビーフンのリピーターになって、お店の人に顔を覚えられた(写真は深圳のお店で)

 

 ところで、趙さんのセオリーには、腑に落ちない点があった。大学の近くには、学生向けの安い飲食店が自然と集まるのは日本でも同じだ。だが、趙さんが「中学(日本の中高に相当)や小学校の近く」とも言ったのは、私の常識には若干そぐわない。どういうわけだろうか。

 

 理由が分かったのは、ある日の昼間、広州の路地を散策していたときだった。人だかりができているので、何があるのかと近づいてみると、小学校の門前である。ちょうど、学校から出てくる子どもたちを、保護者や学童保育所の人たちが迎えるところだ。どの子も荷物を持たず手ぶらで出てくるのが気になった。近くの保護者に聞いてみた。

 

▲小学校の校門には、昼休みになると人だかりができる。子どもたちは保護者に迎えられて、これから外で昼食をとるのだ(写真は広州で)

 

 「子どもたち、学校はもう終わったんですか?」

 「いやいや、まだ昼休みだよ。これから昼飯に連れて行くのさ」

 しばらく歩いて行くと、近くの中学からもお腹を空かせた生徒がどっと溢れ出してきた。

 あとで復旦大学の友人にも聞いて確かめたのだが、中国の小学校や中学では、全員が給食を食べるわけではない。小学生なら昼休みに迎えに来る保護者と、中学生なら同級生と、一緒に学外で食べる子も多いのだそうだ(日本ならば、昼休みの外食は勿論、放課後の買い食いさえ許されない小中学校もあるだろう)。

 

 「学校の近くには、自然と美食(メイシー;うまい飯)が集まってくるの」

 

 趙さんは、自らの子ども時代の経験を思い出してそう言ったに違いない。中国を旅して、中国の当たり前を知ったことで、言葉の細かなニュアンスを理解できたのである。

 

 ちなみに、上で見てきた外食の盛んさからも分かるように、親(とくに母親)が子どものために弁当を作るのは、中国では一般的でない。中華圏では出産・育児のタイミングで離職する女性の割合が日本に比べて少ないが、女性が働き続けられる背景の一つには、頼れる街角の飲食店が沢山あることで、弁当作りなどの家事の時間を減らせることがあるだろう(子どもを世話できる祖父母が近くに居住しているなど、他の重要な要因もある)。

 

▲寝ぼけていて料理する気力がなくても、街に出れば朝食が食べられるのは楽だろう(写真は南京で)

 

 

▲趙さんのセオリーのおかげで出会えた、安くてうまい「中国菜」の数々

アメフト 学芸大に完封勝利でリーグ戦4連勝 次戦は横国大と全勝対決

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 アメリカンフットボール部(関東学生1部リーグBIG8)は10月20日、リーグ戦第4戦を東京学芸大学とアミノバイタルフィールドで戦い、37―0で勝利した。攻撃陣は試合全体を通じてパスの成功率が高く、持ち前のランプレーがより効果を発揮。守備陣はフィジカルで相手を圧倒し前進を許さなかった他、随所で攻撃権を奪い、今季初めての完封勝利につなげた。これで東大は開幕4連勝。第5戦は11月4日午後2時半から、横浜国立大学とアミノバイタルフィールドで戦う。

 

第1Q、決勝点となる先制のTDを決めた古賀選手(撮影・吉良椋)

東 大|71767|37
学芸大|0000|0

 

 最初の守備を危なげなく切り抜け、攻撃権を放棄するパントに追い込んだ東大。鍵和田祐輔選手(医・4年)が体を回転させながら相手をかわす華麗なリターンを披露し、相手の反則も手伝い、敵陣44ヤードという好位置からの攻撃開始となる。フィールド左で待ち構える古賀福丸選手(法・4年)への短いパスが立て続けに決まり、順調に前進。最後も、ゴールラインの隅を目がけたパスを、古賀選手が相手選手に競り勝ってキャッチしてタッチダウン(TD)となった。ここまでの3試合とも、前半で先制のTDを決めている東大が、この試合でも勢いそのままに先制する。

 

 第2Qには、学芸大にこの試合初めて自陣まで攻め込まれる。しかし低いパスを受けた相手選手にタックルを決め、こぼれたボールを別の東大の選手が滑り込んでキャッチ。自陣19ヤードで攻撃権を奪うことに成功する。フィールド左でパスを振り向きざまにキャッチした森本檀選手(文・3年)が、そのまま50ヤード以上駆け抜けて敵陣4ヤードに迫るなど、東大は一気に前進。1分も経たないうちにTDまで持ち込む。

 

 後半開始直後からは豪雨に襲われるが、東大はペースを乱さない。第4Qには横尾樹選手(工・3年)が相手のパスをキャッチするインターセプトを決めると、直後のプレーで鍵和田選手がフィールド中央で迫り来る相手守備陣の間をすり抜け、フィールド右へと逃げつつ相手を置き去りに。たった1プレー、62ヤードのロングランで、ダメ押しのTDを決めた。

 

ランプレーで前進するクオーターバックの伊藤宏一郎選手(文・3年)。多彩な攻撃で相手を幻惑した(撮影・吉良椋)

 

 昨季も開幕4連勝を飾っていた東大は、5戦目と6戦目で連敗。最終戦となる7戦目に勝てば関東学生1部リーグTOP8との入れ替え戦「チャレンジマッチ」に臨める状況にあったが敗れ、夢はついえた。その最終戦の相手だったのが、次に戦うことになる横国大だ。昨年以上に大差をつけての4連勝を飾っている東大だが、横国大も同じく4連勝中と油断はできない。昨年の雪辱を晴らし、チャレンジマッチ進出へ大きく前進したい。

(小田泰成)

 

◇森清之ヘッドコーチの話

 試合内容自体は悪くなかったが、試合前に体調を崩す選手が多かった。本当のトップチームは一度に多くの選手がコンディションを落とすことはまずなく、そういう点でもこのチームはまだまだだと思う。とはいえ次に戦う横国大とは、実力は互角。やるべきことをやって試合に臨みたい。

 

◇楊暁達主将(工・4年)の話

 練習で取り組んだことをいかに本番で出せるかが重要で、今日は出せた点と出せなかった点があった。体調管理の面では、危険な兆候が見えた選手には個別に声をかけるなどもしているが、4年生主導で意識の底上げも図りたい。

硬式野球 法大に反撃及ばず連敗 全敗で今季を終える

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 硬式野球部(東京六大学野球)は10月21日、法政大学との2回戦を戦い、2-8で敗れた。東大は、先発の有坂望投手(育・4年)が相手打線に捕まり二回までに6失点とするも、救援に入った宮本直輝投手(育・3年)が4回を無失点に抑える好投。六回には3本の安打で2点を返したが、宮本投手が降板した七回と八回に相手に追加点を許して逃げ切られた。東大は明治大学との2回戦での引き分けを挟む10連敗で今季を終え、春秋通して勝利を挙げられなかった。

 

六回、好投の宮本投手は自ら反撃の中心に(撮影・湯澤周平)

 

法大|150000110|8

東大|000002000|2

勝:高田(法大) 負:有坂(東大)

 

 明治大学との2回戦で9回1失点で引き分けに持ち込む好投を見せた有坂投手は初回、内野安打で先頭打者を出塁させると、盗塁と犠打、内野ゴロで早くも先制される。その裏の打線では、中前打で出塁した先頭の梅山遼太選手(理Ⅰ・2年)が犠打で二塁に進むと、相手捕手が球をこぼしたのを見逃さずに三塁へ。1死三塁と同点の好機をつくるが、続く打者は倒れ、点を奪うことはできない。

 

 二回、有坂投手は早くも相手打線に捕まる。先頭を四球で出すと、続く打者のセンターへの打球が上空の風に押し戻され不幸なポテンヒットに。犠打を決められ1死二三塁とした場面で三遊間を抜ける2点適時打を浴びる。その後も相手の盗塁や長短打、有坂投手の暴投が絡み、この回で一挙5点を失う。

 

 三回には宮本投手が救援に入る。「これ以上は点をやらない」という気持ちで登板した宮本投手は、コーナーの変化球を中心とした投球で狙い球を絞らせない。初めの回を無失点に抑えると、四回には2死満塁のピンチを迎えるも無失点。五回には三者三振の力投を見せる。

 

五回に相手打線を三者三振に抑えた宮本投手(撮影・湯澤周平)

 

 すると六回、先頭打席に入った宮本投手は初球を中前にはじき返す。犠打で1死二塁になると、梅山選手が右越えの二塁打を放ち1点を返す。続く笠原健吾選手(文Ⅲ・2年)も中前打を放ち、さらに1点を加える。

 

六回1死二塁の場面で、梅山選手は宮本投手を生還させる二塁打を放つ(撮影・湯澤周平)

 

 七回の守備では、宮本投手が投球練習中に足のけいれんを訴え、先頭を四球で出塁させたところでマウンドを小林大雅投手(経・3年)に譲る。ベンチに戻る宮本投手には、スタンドから大きな拍手が送られた。

 

 小林投手は宮本投手が残した走者を犠飛で生還させ、八回にも追加点を許す。打線は七〜九回は全て三者凡退に倒れ、反撃及ばず試合終了。東大は全敗で今季を終え、春秋を通して勝利を挙げることはできなかった。

(石井達也)

 

◇浜田一志監督の話

 

 今季のチームはエラーが減り、長打が出るようになった。基礎練習の成果が出て、春に比べるとかなりレベルが上がったと思う。部員が100人を超えたことで、チーム内での競争も活発化したことも良かったのでは。

 甲子園に出場したことのある他大学の選手を相手にするためには、たくさん食べて練習するしかない。来季はベンチ入り選手の合計体重を2トンにして臨む。

 

◇宇佐美舜也主将(法・4年)の話

 

 昨季はエラーや四死球などミスの連続で自滅してしまったが、今季は全員でミスを断ち切ろう、という気持ちが共有できた。ただ、春秋通じて勝利を挙げられなかったのは本当に悔しい。昨年の勝ち点を味わっている2、3年生は、今の4年生を反面教師にして何が足りないのかを考えていってほしい。

 ファンの皆さまは、勝利を挙げられない中でも最後まで大きな声援を続けてくれて、それが選手の力になった。来季も変わらない応援をお願いしたい。

 

2018年10月22日15:25【記事訂正】宮本投手の三者三振の写真のキャプションで、五回のところを誤って四回と表記していました。お詫びして訂正いたします。

硬式野球 法大に0-8で完敗し初勝利ならず 負ければ最終戦の2回戦に臨む

本郷キャンパス建築めぐり 東京大学広報センター編

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東京大学広報センター

 前回のコミュニケーションセンターに引き続き、キャンパスにひっそりと佇む、小さな建築を紹介します。

 

 

 龍岡門東側の門衛所のような建築は、現在広報センターとして活用されていますが、大正15年大学附属病院の外来患者夜間診療所として建設されました。当初は夜間のみ受け付けていましたが、後に日中も救急患者を受け付けるようになります。当時の外来患者診療所は現在の本部棟辺りにありましたので、より門に近いこの場所に救急診療のための施設が建てられました。内部は改修され当時の面影は残っておりませんが、正面右側の「東京大学広報センター」表札の下には、当時の名残として、現在なお「東京帝国大学附属医院急病者受附所」の表札が掲げられています(現在は見ることができません)。

 

 

 日本の救急医療の歴史を紐解くと、昭和6年の日本赤十字社大阪支部が始まりらしいのですが、東京帝国大学附属病院の夜間診療も先駆的事例として挙げることができるでしょう。

 

 明治期の本郷キャンパスの建築は、造家学科(建築学科)の教員としてイギリスより来日した御雇外国人ジョサイア・コンドルの設計にかかる建築が大半を占めていました。コンドル設計の校舎は煉瓦の組積造でしたので、大正12年の関東大震災により、校舎群の大半は大きな被害を受けました。実際のところ、全壊した建物は必ずしも多くはありませんでしたが、火災により多くの建物が使用不能となり、復興再整備が早急に求められました。この復興事業の大役を担ったのが、建築学科教授であり当時営繕課長を兼担していた内田祥三です。後に東大総長も務める内田は新たなキャンパス全体計画を描き、安田講堂をはじめとする「内田ゴシック」と呼ばれる建築群を次々と建設してゆきます。

 

 内田営繕課長のもと建てられたこの外来患者夜間診察所ですが、他の「内田ゴシック」とは趣が異なります。内田の設計にかかる校舎はカレッジ・ゴシックを基調とした様式建築であり、当時の建築界の潮流からは少々時代遅れの感があります。しかし、この外来患者夜間診療所のマッシブな外観は、中世ヨーロッパの城塞を想起させ、内部には数理模型のような曲面がある階段を持ち、正面入口の両側にはスクラッチレンガを付柱のように装飾的に重ねます。このようなレンガの装飾法は帝国ホテル(大正10年竣工、現在明治村に移築)でもみられ、同時代の流行ともいえるでしょう。

 

スクラッチタイルを付柱のように装飾的に用いた入り口

 

 実はこの診療所は、内田の教え子でもある岸田日出刀の設計によるものといわれています。内田祥三は岸田の設計能力を高く評価しておりましたが、彼の好む表現主義的な意匠は「気に入らない」ため、岸田が自由に設計できたのは、ごく一部の建物に過ぎませんでした。

 

 

 大正という時代において、様式主義からの脱却を目指した若い建築家の気迫が、この診療所から力強く感じられます。

 

 

文・角田真弓(つのだ・まゆみ) 工学系研究科技術専門職員

(寄稿)

 

【本郷キャンパス建築めぐり】

東京大学コミュニケーションセンター編

【2018年9月アクセスランキング】「とりあえず東大」は終わった?

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連載「蹴られる東大」の公開取材イベントでは東大生3人が鈴木教授(左端)を交えて議論した

 

 東大新聞オンラインで9月に公開した記事の9月中のアクセスランキングを調べたところ、1位は連載企画「蹴られる東大」の公開取材イベントで行われた、鈴木寛教授(公共政策大学院)と東大生3人との座談会の模様を伝える記事だった。まずは3人にどのような理由で東大に進学したかを聞き、次いで大学のサポート体制や学生の多様性について議論した。全体を通して「とりあえず東大」の時代は終わり、生徒自らが問題意識を持って高等教育に臨むことの重要性が認識された。東大を蹴って海外大に進学する学生に迫り、これからの時代に東大が取るべき道を探る「蹴られる東大」は、今回で最終回となった。

 

 2位は、厳しいといわれる東大の休講条件を、歴史的視点も交えて考察する記事。大学当局にとって、学生の安全確保と授業スケジュールの双方を考慮した判断は難しく、最終的に授業に出席するかは学生自身が判断する必要がある。

 

 3位には、大学に籍を置いたまま再び大学受験を目指す、いわゆる「仮面浪人」の素顔について、経験者や河合塾本郷校の青木緑校舎長に話を聞いた記事が入った。「仮面浪人」には、併願校の対策をする必要がないため第一志望校の勉強に集中できるというメリットがある反面、その大学に通い続けることになった場合、仮面浪人期に友人関係やサークルを犠牲にしたせいで大学生活を謳歌できないというデメリットもある。

 

 4位は、2020年度から始まる新しい大学入試制度で、東大が英語民間試験の成績を必須の出願資格としないことを報じた記事。センター試験導入以来約30年ぶりの入試制度改革に東大がどのように対応するかが注目されたようだ。新たな出願要件の詳細については、今年12月ごろをめどに公表される。

 

 5位と8位にはラクロス部男子の活躍についての記事がランクイン。3戦連続でチーム初得点を挙げ、日体大戦では4得点を記録した矢野皓大選手(法・4年)の活躍が光った。

 

 6位は、宿題の有用性に迫る記事だった。漢字・計算ドリルなどの覚える対象が明確な習得型と、自由研究などの学習者自身が「問い」を立てて解決する探究型の2種類の宿題を実施することで、後の高等教育でも生かされる高度な学びにつなげることができる。

 

 7位はアルコールが人間の共感を促進し、共感の低下が見られる自閉スペクトラム症の治療にも役立つ可能性があることを伝える記事。実験では共感と脳回路の関係も明らかになり、実用化が期待される。

 

 9位は、学生および若手演奏家を中心としてオペラを上演する団体であるHAMA project(はまぷろ)の秋公演についての記事。職業や大学といった垣根を越えた多様な若者が集まり、時には定番の解釈をあえて裏切るような、新たな演出を披露する。

 

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6 宿題に追われるあなたへ 学習効果の理想と現実

7 アルコールが共感促進 自閉スペクトラム症の治療に

8 ラクロス男子 日体大に勝利し決勝トーナメント進出 矢野選手が4得点の活躍

9 学生の自由が生み出す新演出 オペラ企画はまぷろがドニゼッティ「愛の妙薬」を上演

10 受験の生かし方考えて カリスマ講師・犬塚壮志さんから受験生へエール

※当該期間に公開した記事のみを集計

 

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【2018年8月アクセスランキング】教授の語る大学の選び方

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東大職員、人材登用改革の成果は? 高度化と多様化を目指す

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 「東大で働いています」と言われれば、ほとんどの人が教員として研究・教育に従事する姿を思い浮かべるだろう。しかし、教育支援、研究推進、社会貢献、組織運営……、と部局の仕事を現場で動かす職員の奮闘を忘れてはいけない。学生・教員と並んで東大を支える存在、事務職員の姿に迫る。

 

 

改革の気運高めて

 

上杉 道世(うえすぎ・みちよ)さん
(大正大学理事長特別補佐)

 

 従来国立大学として国の内部組織だった東大が、「国立大学法人」として自律的な大学経営に移行したのは2004年のこと。少し前の2003年に文部科学省から東大に着任し、事務局長・理事として法人化に携わった上杉道世さんは、改革の一環として職員の働き方の見直しを始めた。

 

 打ち出したのは「職員の高度化と多様化」。「教員の言うことを聞いていれば大丈夫」という職員の空気を一掃し、職員それぞれに多様な専門性を身に付けさせることが始まりだった。「昔は教員の側も職員に期待していない部分があった。佐々木毅総長(当時)から改革の命を受けたのです」と上杉さん。

 

 例えば、自らの職務が学生へのサービス業でもある点を職員たちに理解させること。主体性・協調性のなさを改善し、あいさつ一つから見直そうという気運を生んだ。学生生活実態調査に書かれた学生から職員への悪口も、上杉さん本人から職員に報告したという。「愛想が悪いとか、すぐに書類を突っ返すとか、いろいろ書いてありましたよ」と当時を振り返る。

 

 最も重点を置いたのは、人材登用の改革だ。これまでの公務員試験の系譜を継ぐ国立大学法人等職員採用試験合格者のみならず、民間企業の就活と変わらない独自採用を始めた。「東大なら単独で採用しても優秀な人材が集まるだろう」と踏み、1期生採用時には上杉さんが自ら説明会に出向いた。「これまでとは違い職務はチャレンジング、ゆったりとした雰囲気の職場ではないと強調しました」

 

 効果はてきめんで、採用者には優秀な学生が並び、自ら課題を発見、企画を提案する能力を職場で遺憾なく発揮していった。他の国立大学も独自採用を始めて効果を出し、従来「公務員Ⅱ種試験」というイメージだった「大学職員」という職種が、就活生内で隠れた人気を誇るまでになった。

 

 

 優秀な新人を採用し職場の雰囲気を変えるという目標への道のりは、実はまだ道半ばだ。「改革された選抜方式をくぐり抜けた若手たちは優秀でも、その上司が以前のまま変わっていないというケースがあります。若手部下がやりにくかったり、下手すると悪影響を受けたりする」と言い、今度はベテラン職員の啓発が求められている。

 

 今後特に職員の力が必要になるのは「教職協働」の推進だ。事務仕事に教員が忙殺され、本業の学術研究に打ち込めない現状がある。「以前のように『職員は会議の末席でメモだけ取る』のではダメ。職員側主導で業務を処理できるようにしないと」と、教員・職員の「フラット化」が必要だと唱える。

 

 東大で4年間改革に携わった上杉さんはその後慶應義塾大学に入職、現在は大正大学の運営を手掛ける。「自立した運営をせざるを得ない私大の職員の方が、大学にとっての学生の重要性を実感している気がしますね」。職員の姿勢をとっても大学ごとに特色はあると上杉さん。例えば立命館大学では職員間の議論が活発な傾向があるという。

 

 「今後も職員の方には、情熱と愛着をもって職務に当たってもらえれば。常に改革することを頭に入れておいてほしい」と上杉さん。大学職員という仕事は、学生と教員を相手にする特殊性がある。3者で手を取り合い、大学改革を進める必要があるだろう。

 

新規の取り組みに挑戦

 

小野里 拓(おのざと・たく)さん (本部経営戦略課)

 

 大学経営に携わる現役の東大職員はどのような思いを抱いているのか。独自採用試験合格者1期生の小野里拓さんに話を聞いた。

 

 小野里さんは東大出身で、2006年に入職。国際・研究支援・役員秘書など幅広い分野の業務を手掛けてきた。職員研修の充実化など新規の取り組みにも深く関わり「やれるものならやってみろと言われつつ、挑戦を後押ししてくれる上司に恵まれた」と振り返る。

 

 海外留学研修の制度もあり、小野里さんは米国に1年渡ったが「1年で修士号を取ってくるのは仕事以上に大変だった」。その分、高等教育論や組織論など「大学経営に生かせるさまざまな学びがあった」と収穫は大きかったという。

 

 ただ入職後は「想像以上に学生との関わりがなかった」と小野里さん。本部所属だと特に、学生担当でなければ学生と接する機会はほとんどない。「とはいえ学生に関わるだけが大学の仕事ではありません。支援業務を通じてもさまざまな面白い経験をしています」

 

 業務をこなす中、東大が想像以上に大きい組織で、各部局の独立性が強いという印象も生まれた。部署によって繁忙期や求められる能力のばらつきも大きく「業務の効率化や人員配置の適正化が重要」と語る。

 

 一方で「教職協働」の推進は小野里さんも重要視する。「教員が教育研究以外の業務で忙し過ぎるので、教員の理解を得ながら職員ももっと積極的に仕事を担っていくべき」と語気を強める。「組織論で言えば、大学では教員は専門職権威に、職員は管理的権威に立脚すると整理できます。両者が共存する複雑な組織で、その摩擦をうまく組織全体の力に変えられる優秀な人材が必要です」

 

 今後ますます高度で多様な業務の遂行が求められる大学職員。五神真総長も職員がこれまで以上に活躍できるような制度改革を進めており、職員もその期待に応えることが求められる。

 

(取材・田辺達也)

 

【関連記事】

【蹴られる東大⑥】東大を勝たせた教授が語る、東大に足りない「危機感」と改革

五神総長、私たちは希望を持って大学の研究者を目指せるのでしょうか?


この記事は、2018年10月16日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

ニュース:利権争いが改革を阻害 日本版NCAA実現への障壁(変わる?大学スポーツ上)
ニュース:硬式野球明大戦 引き分けで連敗阻止 有坂投手は1失点完投
ニュース:後半に得点重ね大勝 アメフト専修大戦 3戦連続の40点台
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ニュース:情報理工 行動パターンで個人認証目指す
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企画:娯楽と科学の二人三脚 打ち上げ花火に見る研究の多様性
企画:人材登用改革の成果は 職員の高度化・多様化を目指す
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日本というキャンパスで:劉妍(農学生命科学・博士2年)⑤
火ようミュージアム:イグ・ノーベル賞の世界展
キャンパスガール:緒方優紀乃さん(理Ⅱ・2年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

元ミスター東大ファイナリスト 逮捕起訴される

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 2014年に開催された「ミスター東大コンテスト2014」のファイナリストに選ばれていた稲井大輝被告が、逮捕・起訴されていたことが分かった。

 

 一部報道によると稲井被告は、9月15日、自宅のタワーマンションの一室に30代の女性を連れ込んで乱暴した疑いで逮捕されたという。稲井被告は同日逮捕され、10月5日に強制性交等罪で起訴された。現在は保釈されているという。

 

 稲井被告は事件当時、経済学部に所属していた。「ミスター東大コンテスト2014」でファイナリスト5人のうちの1人に選出された際には、ミスター候補として本紙の取材を受けていた。

 

2014年当時、ミスターコンテストに際して東大新聞の取材を受けた稲井被告

ラテンフルートの巨匠オマール・アコスタがトーク&ミニライブを開催

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ベネズエラ人フルート奏者、オマール・アコスタが駒場キャンパスにてトーク&ミニライブを催します。スペイン在住のアコスタはプラシド・ドミンゴ、ヨーヨマほか数多の巨匠たちと共演し、クラシック、フラメンコ、ラテン音楽の境界を超えて国際的に活躍しています。

 

 

  • みどころ

ラテンアメリカからスペインにかけての音楽の広がりと深みを、オマール・アコスタの超絶技巧のフルートと緻密なアレンジによって体感できます。

 

  • コンサート情報

オマール・アコスタ デュオ トーク&ミニライブ ラテン・フルートの大洋(うなばら)

 

日時:2018年11月3日(土) 16:00開演 (15:30開場、18:00終演)

場所:東京大学駒場Iキャンパス 18号館ホール (京王井の頭線駒場東大駅より徒歩5分)

料金:入場無料、資料代1000円

出演者:オマール・アコスタ(フルート)、セルヒオ・メネン(ギター)

 

・先着順自由席 定員200名 要事前申し込み

・申し込み方法:「ご予約される方全員のご氏名(漢字・ふりがな)」「席数」「このイベントを知られたきっかけ(Facebook、Twitter、◯◯のホームページ、〇〇で手に取ったチラシ、等)」をご記入の上、 omaracosta.japan2018@gmail.com に、ご連絡ください。受付のお返事を差し上げます。

 

・使用言語:スペイン語(日本語通訳あり)

・司会、通訳:石橋純(東京大学教養学部教授)

・主催:東京大学教養学部地域文化研究科ラテンアメリカコース

・協力:東京大学駒場友の会

 

連絡先: omaracosta.japan2018@gmail.com (担当者:韓)

 

  • アーティスト情報

オマール・アコスタ (フルート)

オマール・アコスタは、1964年ベネズエラ生まれ。17歳の若さでベネズエラ国立シモン・ボリバル交響楽団の首席フルート奏者に就任。以来ベネズエラならびにラテンアメリカ各地の交響楽団で活躍する傍ら、ソロ奏者として数々のリサイタルを開く。2000年以降スペインに移住。2012年から16年にかけて、世界最高峰のフラメンコバレエ団であるスペイン国立バレエ団の音楽監督に就任。2017年より、「オマール・アコスタ・トリオ」を結成し、ラテンアメリカ各地の音楽を新アレンジで全世界の聴衆に訴求するワールド・ミュージック・プロジェクトを始動している。

これまで、世界三大テノールとして知られるプラシド・ドミンゴや日本でもなじみの深い世界的チェロ奏者ヨー・ヨー・マのほかジャン=ピエール・ランパル、クラウディオ・アラウ、モンセラート・カバリエなどクラシック音楽界の名だたる巨匠とも共演を重ねている。

 

セルヒオ・メネン (ギター)

セルヒオ・メネンは、1975年アルゼンチン生まれ。コルドバ音楽院(アルゼンチン)でギターを学び、後に国立コルドバ大学で作曲を、米国カーネギー・メロン大学でチェロを習得。現在、スペインに在住し、スペイン国立バレエ団のチェロ奏者として活動するほか、伴奏とソロのギタリストとしてヨーロッパを拠点に活動中。2017年より、オマール・アコスタ・トリオの一員としても活動している。

 

  • 主な演奏曲目

ナタリア(ワルツ/アントニオ・ラウロ)

https://youtu.be/VK4NfGloaOw

 

娼家1900(タンゴ/アストル・ピアソラ)

https://youtu.be/BZiAMqkHcWA

 

リリー(メレンゲ/オマール・アコスタ)

https://youtu.be/uxoKQn-jPj8

 

ショレット(ショーロ/オマール・アコスタ )

https://youtu.be/ZYfapTsFNmQ

 

パハリージョ(ホローポ/ベネズエラ伝統曲)

https://youtu.be/pdSpuhgsbT4

 

ラコンパルサ(ダンソン/エルネスト・レクオーナ)

 

首の差で(タンゴ/カルロス・ガルデル)

 

(寄稿)


ラクロス男子 成蹊大に逆転勝ちで決勝へ 終了間際に同点、延長戦で勝負決める

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 ラクロス部男子(関東学生1部リーグ)は10月28日、決勝トーナメント1回戦を成蹊大学と戦い、4─3で勝利した。思うように得点できなかった東大は2─3で迎えた試合終了間際、矢野皓大選手(法・4年)のゴールで同点に追い付く。先に1点を取ったチームが勝つサドンデス方式の延長戦で、矢野選手が今度は決勝点を挙げた。次は11月10日、決勝戦を早稲田大学と戦う。

 

決勝進出を決める4点目を挙げ、歓喜にわくチーム一同(撮影・小田泰成)

 

東 大|1002|001|4

成蹊大|0120|000|3

得点者:間野弘暉選手(第1Q)、成田悠馬選手(第4Q)、矢野皓大選手(第4Q、延長戦第3ピリオド)

 

 東大は開始3分、間野選手(文Ⅱ・2年)が快足を飛ばしてまだ足が温まらない相手守備陣の間を切り裂き、ジャンピングシュートで先制点を挙げる。しかしこの後が全く続かない。守備陣のチェックやゴーリー大嶋省吾選手(育・4年)の好セーブなどでボールを奪っても、パスミスや反則ですぐにボールを手放し、第2クオーター(Q)のシュートはわずか2本。初めて決勝トーナメントに進んだ成蹊大相手に防戦一方となり、第2Q18分に同点ゴールを許す。さらに第3Q終了間際にも立て続けに2点を失い、突き放される。

 

第3Q、勝ち越しとなる2点目を許す(撮影・小田泰成)

 

 しかし「しっかり準備してきたので必ず勝てるという自負があった」と佐藤隼主将(育・4年)。第4Q7分、反則で相手守備陣が1人少ない中で成田選手(農・3年)がようやくゴールをこじ開け、1点差とする。徐々に時間が少なくなる中相手はボールをゆっくり保持するが、ディフェンスの佐藤主将は「反撃のリスクを背負ってまであわててボールを取りに行くのではなく、失点だけはしないようにして攻撃にボールをつなぐことを意識した」。残り1分で怒涛の攻撃に転じ、2本のシュートを外すも、最後は矢野選手が得意の左サイドからゴールを決め、同点。土壇場で追い付き、勝負はサドンデス方式の延長戦にもつれ込む。

 

 ここで勝負を決めたのは、今季を通じて大事な場面で得点を挙げてきた矢野選手だった。いつもとは逆の右サイドでボールを受けると、フィジカルで相手守備陣を押しのけながらゴール前へ前進。混戦の中放ったシュートはネットを揺らし、東大を決勝へと導く劇的なゴールとなった。

 

矢野選手は強引にシュートに持ち込み、値千金の決勝点を決めた(撮影・小田泰成)

 

(児玉祐基)

 

◇佐藤主将の話

──今の気持ちは

 正直かなりヒヤヒヤした展開だったが、ほっとした。自分の中では「いつも通りの力を出せば必ず勝てる」と自負していた。勝つべくして勝てたと思う。

 

──自負はどこから来るのか

 普段の練習、練習試合で見せるラクロスの質から。ただいつも通りの力がなかなか出せずに苦労した。

 

──なかなか点が取れなかった攻撃陣をどう見ていたのか

 かなり苦しくて明治大学戦(3─3で引き分け)と似たような展開になったが、先ほどの通り、どこか安心感はあり、オフェンスを信じていた。

 

──大嶋選手が今日もビッグセーブを連発した

 普段からあれを見ているので感覚がおかしくなっている部分もある(笑)。でもあいつがいるから自信持ってディフェンスをやれるので、助けられている。

 

──決勝戦へ意気込みを

 ようやくスタートラインに立てたという思いが強い。楽しんで勝ちに行く。

 

◇矢野選手の話

──今の気持ちは

 ほっとしている。ただ、想定より苦戦した。前半、ポジショニングが少しずつずれてオフェンスがどんどん悪い方向に向かっていたが、後半は少しは修正できてよかった。

 

──終盤、どういう思いで攻撃していた

 自分が決めようという思いだった。打てる場面なら打つ。明治大学戦では自分で決められなくて引き分け、後悔していた。それ以降、自分で決めるという姿勢を意識している。

 

──決勝戦へ意気込みを

 昨年はプレーオフに行けなくて、その前は決勝で負けて。1年生のときは決勝トーナメント1回戦で負けて。日本一になれていないので、しっかり勝って、今年の東大はやっぱり強かったということを周りに見せたい。

 

◇大嶋選手の話

──ビッグセーブを連発した

 日頃の練習の成果だと思う。偶然の産物ではなく、今までの積み重ねを出せた。

 

──日頃の練習では何を意識しているか

 とにかく1球1球集中している。1回1回のシュートに本気で取り組むことを意識してやっている。

 

──苦戦する攻撃陣をゴールポストからどのように見ていたか

 オフェンスは俺にはどうにもできないから、とにかく自分の仕事をするだけ。「何やってんだよ」って思ってイライラして自分のリズムが崩れるのは意味がないから、自分のプレーをしよう、とだけ考えていた。

 

──決勝戦へ意気込みを

 今日出た課題をつぶして、いい勝負をして勝てるようにしっかり準備をする。

東大ガールズハッカソン2018 「プログラミング以上のものを学べた」

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 プログラミングをゼロから学べる、東大女子を対象としたアプリケーション開発コンテスト「東大ガールズハッカソン2018」の本番が、10月6、7日に日本ビジネスシステムズ本社で開催された。ハッカソン(hackathon)とは、一定の短期間でプログラムの開発などを行い、アイデアや成果を競うもの。プログラムの作成を意味するハック(hack)と、マラソン(marathon)に語源を有する。

 

 

 本イベントは東大の女子学生に楽しみながらハッカソンに参加してもらい、プログラミングを身近に感じてもらうことを目的として東京大学新聞社が主催。参加したのは学部生15人と院生6人の計21人(うち文系9人、理系12人)で、ほとんどがプログラミング初心者だった。学生は2、3人で構成されるチームを組み、開発に取り組んだ。

 

 参加者は6~7月に、ハッカソンに先立って、日本ビジネスシステムズのトレーニングセンターで行われたプログラミング講習を受講。チーム内で顔合わせを行い、プログラミングの基礎や、プログラミングのコードの共有法などを学んだ。夏休みにはProgate提供のプログラミング学習サービスで自習するなどして、アプリ制作に必要な基礎的な事項を習得した。

 

 9月22日にサイボウズのオフィスで開かれたアイデアソンでは、各チーム2~4人のメンターも合流。メンターとは技術やアイデアについて助言する役割を担う人たちのことで、協賛企業の社員から成る。アプリの開発に当たっては「動詞」というテーマが設定された。日常には、朝「起きる」、電車に「乗る」など、さまざまな動詞が潜んでいる。各チームは動詞を一つ選んで自由に解釈し、それに沿ったアプリを考案。具体的なインターフェースのアイデアを出すなどした。

 

 

 アイデアソンから2週間後、ハッカソン本番のために日本ビジネスシステムズ本社のある虎ノ門ヒルズに集まった各チーム。計13時間という限られた時間の中で、アプリの製作と発表の準備をしなくてはならない。各チーム、学生とメンターの垣根を越えて綿密にコミュニケーションをとりながら作業を進めていた。

 

 

 開発を終えて、2日目の夕方に迎えた発表会。アプリの中身だけでなく、発表も評価の対象となるため、実際にアプリを操作する場面を見せたり、自分たちで声を当てた動画を流したりするなど発表も工夫されていた。3分間の発表の後は3分間の質疑応答。協賛企業の社員である審査員からだけでなく、他チームの学生やメンターからも質問が飛び出した。中には新しい機能のアイデアを引き出すような質問もあり、充実した発表会となった。

 

 全チームの発表が終わると、審査を経て、まずは10社の各協賛企業による企業賞が授与される。

 

 企業賞を二つ受賞するなど高評価を得たアプリの一つが、テーマに「サボる」を選んだチーム「梅酒のカルピス割り」の「Morning Mama」だ。このチームは朝起きられず、バタバタして忘れ物をしてしまう女子大学生をペルソナ(仮想の利用者)として設定。登録した時刻までに起きないと母親に電話がかかるようにした。翌日の持ち物や予定などを設定できる機能も搭載。「自分が大学生の時に使いたかった」と話す審査員もいた。

 

 

 10人の審査員がそれぞれ、発表の中から1~3位を決定、投票する。合計票数の一番多かった、「ダッフィーを愛でる会」が最優秀賞となった。チームには東京大学新聞社から香水と、定期購読2年分か入学した年の入学アルバムが贈呈された。

 

 発表会終了後の懇親会では、アイデアソン、ハッカソンの計3日間を共に過ごした学生とメンターが満足げに語り合う場面も見られた。協賛企業の審査員もそろって「どこに賞を与えるか悩んだ」と話すほど、充実した大会になった。

 

最優秀賞受賞チーム「ダッフィーを愛でる会」の感想

 

 「ダッフィーを愛でる会」は笹倉まおさん(理Ⅰ・2年)、佐野翔子さん(工・3年)、渡邉春香さん(文・4年)とメンター2人から成るチーム。「夢見る」をテーマとして開発した「Dreamee」は将来の夢が決まっていない大学生に、登録されたデータベースの中からランダムで社会人の誰かのキャリアパスを見せてくれるアプリ。アプリの機能、こだわりやハッカソンの感想を3人に聞いた。

 

 

 「就活が近く、進路を考える際にあったら便利だな、というアプリを作れました。ランダムで情報が提示されるため、自分の興味がなかった分野について知れるのが特徴です。既存の就活情報サービスで検索するにも、最低限の知識が必要ですが、存在すら知らなかったような業界に偶然出会って、自分の新たな可能性を発見できるのも強みです。既存の就活情報サービスとは違い、直接企業を知るのではなく、人を通じて企業を知ることができるのも大きな特徴だと考えています。

 

 チームで協力して何かを作ることは日常生活ではあまりないので、貴重な経験になりました。プログラミングだけでなく、役割分担ややるべきことを視覚化して共有するなど、チームで作業する上で大事なことを学べたのも大きかったです。」

 

(取材・中井健太)

19歳が見た中国③ 石橋を「叩く前に」渡る

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待って、私を乗せてくださぁーい!

 

 国内では「ムーンライトながら」や「サンライズ出雲・瀬戸」を除いてほとんど廃止された夜行列車が、中国では今でもびゅんびゅんと走り回っている。上海、深圳など沿海部の大都市と内陸地帯を結ぶ路線が多い。広州とウルムチを2泊3日で結ぶような超長距離列車には驚かされる。

 

 出稼ぎ労働者や学生が数億人単位で帰省する春節(旧正月)には、春运(チュンユン;春運)と呼ばれる特別増便ダイヤが組まれるが、「2ヶ月前くらいに予約しなければ、切符をとるのは至難の技」と武漢大学の友人は嘆いていた。輸送力強化のために、高铁(ガオティエ;高速鉄道)が猛烈なスピードで中国全土に張り巡らされつつある。

 

▲高铁の利用者は、ビジネスマンなど中・高所得層が多い(写真は南京駅で)

 

 中国旅行では、長距離夜行列車と高铁に乗ることを楽しみにしていた。期待通り、夜行列車は3段ベッドが狭いものの寝転ぶと快適だし、高铁も日本の新幹線と同じくらい清潔で快適だった。

 

 中国の鉄道の特徴は、圧倒的な「標準化」だ。日本列島は、北は「宗谷」から南は「指宿のたまて箱」まで、名前も構造も個性豊かな列車が走り回っているのに対し、中国は全土で同じ構造の深緑色の車両が使われ、列車名も「Z47」「T204」「K1033」などと素っ気ない(停車駅の少なさや運行速度に応じてコード化されている)。高铁もまた標準化の権化であり、中国のどこに行っても「和諧号」か「復興号」が走っている。高度な標準化が、輸送キャパシティの急速な拡大と複雑な運行を可能にしているのだ。

 

 私のような鉄道オタクが喜ぶ話はこれくらいにして、今回の本題に入りたい。

 

 長沙駅で広州行きの夜行列車を待っていたときのことである。ちょうど夏休みの終盤で、広州行きの第6待合室は、椅子はおろか、座る床を見つけるのさえ難しい混雑ぶりだ。一方、隣の第5待合室はスッカスカ、椅子を5人分使って寝られる。迷うことなく第5待合室に入った。中国の鉄道駅の構造は空港に似ている。列車が着くと搭乗口が開き、第6待合室の乗客が列をなしてホームへ降りていった。列がなくなるまで私は待った。

 

 ひとりでホームへ降りたとき、出発予定時刻まではあと10分。時間に余裕があるから第5待合室で待ち続けたのである。しかし、何かがおかしかった。乗務員がタラップを引き上げ、笛が高らかに響き、列車は今にも出発しようとしている!駅員は、まとまった乗客の列が途切れた時点で「皆乗った」と判断し、予定時刻にお構いなく合図を出したのだ。

 

 「等一下!(ダンイーシァ!;待って!)」と叫び、目の前の車両に飛び乗るやいなや、ガタンという振動を感じ、駅員の姿が後方に流れていった。間一髪で、空っぽの長沙駅で一晩明かさずに済んだ。

 

▲旅客の多い中国では、列車は20両編成になることもある。全席指定なので、自分の車両まで、ホーム上を数百m歩くこともある。山手線のような駆け込み乗車は本来ありえない(写真は上海南駅で)

 

 中国旅行で得た大事な知恵の一つは、集団と共に行動するということ。中国では、時と場合によっては、集団の秩序に沿って行動しなければ、思わぬ不利益を被ることがあるようだ。

 

▲乗り遅れなくて良かった…おじさんとおばさんの四方山話を聞きながら、夜行列車の長い夜を明かす。

 

「短い列より長い列に並ぶ」機械の故障と人々の知恵

 

 こうやって夜行列車に乗って到着したターミナル駅で、前回注目した食文化や学校の制度よりももっと面白い(と同時に骨の折れる)中国の当たり前を体感した。「機械が頻繁に故障する」という当たり前だ。武漢駅の地下鉄の切符売り場での事件を語りたい。

 

▲旅客の多い中国のターミナル駅は、いつでも混んでいる(写真は広州駅で)

 

 あくびをしながら早朝の武漢駅に降り立つと、中国全土から私と同じように夜行列車で到着した人々が通路を埋め尽くしていた。市内へ出る地下鉄の切符売り場にも長蛇の列ができる。20台もの券売機がぎっしりと一列に並んでいるが、数百人が一斉に押し寄せ我先にと並び、銀行の取り付け騒ぎかと見紛うほど。自らも切符を求め混乱に飛び入ろうと決心したとき、私は変なことに気付いた。

 

 新しく来た人たちが、短い列よりむしろ長い列を選んで並ぶのだ。当然、長い列ほどますます長くなる。長い列に並んだ挙句、前の人に「早くどけ!早く!」と叫ぶ人もいる。「そんなら短めの列に並べばええやん」とツッコみたくなる。列によって券売機のタイプが違うようにも見えない。少数派より多数派に帰属したい、という群集心理でも働いているのだろうか?私は、しめたとばかりに5人くらいの短い列に行った。

 

 自分の番になった。罠は券売機にあった。紙幣挿入口のロールが動かない。券売機の画面には「正在使用(正常に使用できます)」の文字。これを信じて何回も試すが、ダメだ!すぐに後ろの方から叫び声が響いてきた。紙幣がダメなら硬貨で払えるが、たまたま硬貨の持ち合わせがなく、ゲームオーバー。がっかりして、20人くらいの長めの列に並び直した。

 

 冷静に観察すると、短い列の先の券売機には、タッチパネルが反応しないとか、紙幣や硬貨を受け付けないとか、何かしら故障があるようだった。面白いことに、不具合がある券売機にも列はできる。人が密集しており、自分の番まであと2、3人にならなければ前の人が困っているのが分からないからだ。もっとも、異変を察知した人は他の列に移動するので、短い列は短いまま。中国では、券売機に限らず、ドアやトイレやエレベーターも頻繁に故障するのを見た。人々は経験的に、敢えて長い列に並ぶほうがうまくいくことを知っているのだろう。

 

速やかに故障するが、復旧も速やか

 

 ここで終わってしまえば、中国の機械はよく故障するというだけの話だ。だが「機械が頻繁に故障するのに、人々の生活にそこまで支障がなさそうなのはなぜか」と考え続けると、表面に見えるものの一段奥にある「中国流の発想」が見えてくる。

 

 実は武漢の別の地下鉄駅でも、券売機の不具合を見かけたが、作業員が来て修理していた。ショッピングモールではエスカレーターが止まっていたが、ここでも作業員が数人がかりでその内部をこじあけて修復していた。私はこう考えた。機械が速やかに故障する代わりに、作業員が来るのも速やかであれば、人々にとってそこまで不便ではないだろう。

 

 帰国後に参加した日中関係学会の青年勉強会で、中国での豊富な事業展開経験をもつ化学メーカーの元会長がこう話されたので、私は自分の仮説に多少自信をもった。

 

 「我々が中国にプラントを建てるときにね、これも一つの実験だと思って、信頼性の高い日本製部品を敢えて使わないで、ほとんど中国製部品を使ったのね。案の定、バルブは止まらないし、パッキンは漏れる。私が見たかったのは、そういうときに中国の従業員がどう対応するのか、と」

 

 「彼らは壊れたらすぐ取り替えたらいいじゃないか、と考えるんだね。高すぎる部品を使うより、安い部品を何回も取り替えていったほうがいい、とね。いつの間にか、工場の中でうまく使い回していく」

 

 「日本人はあらゆるリスクを考えてプラントを設計するんだけど、中国の人はとりあえず動かしてみて、壊れたらすぐにラインを止めて修理すればいい、という発想なんだね。それだから、運転中に予期せぬ故障が起きた時の対応力は、中国の従業員のほうが強いかもしれないよ」

 

 「石橋を叩いて渡る」の日本流に対し、すぐさま一歩踏み出し、橋が落ちても這い上がる中国流。この鮮やかな対比に、旅の至る所で気づくことになる。

 

▲石橋を「叩く前に」渡る…?(写真は広州市内の水路に架かる橋で)

本郷キャンパス建築めぐり 内田ゴシックの特徴を見る

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 今回は内田ゴシックの特徴について紹介します。

 

 米国の大学建築を中心に19世紀後半より広まったカレッジ・ゴシック様式を基調とする内田ゴシックですが、本郷キャンパスにおける内田ゴシックの代表作を挙げるのであれば、正門から安田講堂につながる銀杏並木の左右に展開する、工学部列品館、法学部3号館、法文1,2号館、工学部1号館、総合図書館の十字エリアでしょう。

 

 建築学科教授と営繕課長を兼ねていた内田祥三は、「よい建築は必ず施工しやすい」と考えていました。合理主義者である内田のこの考えは、震災復興で早急な対応が求められていた当時の大学側の要求に、見事に合致したともいえます。この内田の思想は、スクラッチタイルを多用したことにも顕著に表れています。

 

 一般的なタイル貼建築はレンガ積建築を模したものであることから、レンガ積建築に従い縦目地が通らない破れ目地を採用しますが、内田は工事がより容易である芋目地(縦目地が直線で通る)を採用しています。また、タイルの色ムラや施工の不揃いも、スクラッチタイル表面の凹凸による陰影で気にならず、かえって面白いと内田は評します。つまり内田がスクラッチタイルを採用したのは、施工のしやすさはもちろんのこと、精度の低さを感じさせないという合理的な考えのもとでした。

 

 

 他にも、内田ゴシックの特徴の一つに通称「犬小屋」と呼ばれるポーチ(入口)部分が挙げられます。頭頂部(フィニアル)には松かさ(松ぼっくり)様、その下には拳葉飾(クロケット)を配したこのデザインは、関東大震災により使用不能となったジョサイア・コンドル設計にかかる旧法文校舎に用いられていた意匠でした。かつてのキャンパスの姿を継承し、建築家コンドルへのオマージュとしての意味も含まれているのでしょう。

 

 ゴシック建築の尖塔のような急勾配の屋根を持つこの「犬小屋」ポーチは、内田祥三の好みであったらしく、設計担当者は内田の好みに合わせ各所に配してゆきます。法文1,2号館はもちろんのこと、工学部船舶試験水槽など本郷キャンパス各所に見られます。実は工学部1号館にも北側の背面入口に「犬小屋」がありましたが、1996年の改修の際に取り壊し、現在はフィニアルが工学部1号館正面玄関に飾られています。

 

 

 さらに「犬小屋」ポーチは弥生キャンパス(農学部)や駒場Ⅰキャンパス(教養学部)、医科学研究所など、東大の各キャンパスにもアレンジした物がみられます。各キャンパスめぐりの際には、「犬小屋」探しをしてみてはいかがでしょうか。

 

文・角田真弓(つのだ・まゆみ) 工学系研究科技術専門職員

(寄稿)

 

【本郷キャンパス建築めぐり】

東京大学コミュニケーションセンター編

東京大学広報センター編

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